『菜食主義者』という小説。過剰な思想は狂気に変わるし、美しいことを知った。

こんにちは、齋藤吐夢です。

 

 

最近本を読みました。

その本のタイトルは菜食主義者ベジタリアンについて書かれた野菜食の生活についてつづった本かと思いきや、狂気と美しさを兼ね備えた外国の上質な文学でした。

 

菜食主義者

韓国の小説家であるハン・ガンという方が描いた作品で、もともとはベランダで植物になっていく妻を夫の目線で書いた短編小説を構想しなおした作品とのこと。ここだけ聞いてもなんだか静かな狂気を感じることでしょう。

 

あらすじ

ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―

3人の目を通して語られる連作小説集

出典:Amazon CAPTCHA

 

過剰な考え

決して直接的に菜食主義を否定するお話しではないのですが、やはり何事も過剰な考え方、過剰な行動は狂気を生み出すのだということを知りました。あまりにもゾクゾクするシーンの連続なので、結構疲れます笑。

 

でも読む手が止まらないんです。

 

ヨンヘという主人公、というかこの連作小説の要になる女性は、突然見た夢をきっかけに肉を一切とらなくなるのですが、その時に思い立った行動が確かに奇妙で。多分小説の中から現実へ飛び出したヨンヘを見つけたら恐怖で足がすくむと思う

 

生々しい描写

そしてハン・ガンが描く描写の凄まじさがすごい。直接的なバイオレンス小説や官能小説ではないのですが、血なまぐささや艶めかしさが文章から這い出てくるような、そんな描写が何度も出てきます。

途中ぞわぞわしてしまって、自分の頸動脈を無意識に守ったりするレベルです笑。でもそのくらいほとばしる情熱と狂気と恐怖ともろもろがわーっと襲ってくる文章は本当に圧巻です。

 

狂気だと思った

とにかくひたすらにヨンヘの行動は狂気と言えるでしょう。徹底した菜食主義に加え何を考えているか分からない目をする彼女からは狂気がにじみ出ています。

でも、読み終わってしばらくすると、本当に狂っているのはヨンヘを取り巻く周りの人なんじゃないか、と思わせるような余韻が待っています。現実的な思考と冷静さを取り戻せば、「いやいや、そんなわけ・・・」と思うんですが。

ただただ頭の中で繰り返される衝撃的な描写のせいで、何度も狂気がどちらから出ているのかを疑ってしまいます。

 

美しいと思った

ただこんなに狂気だ、狂気だと言っておきながら、ハン・ガンの描くヨンヘ達の行動は一周回って美しいんです。綺麗なんです。想像すればするほどヨンヘの姿は弱り切った乾ききった病人のようなイメージになるのに、その分美しく感じる

この感覚の描き方が本当にすごくて。

 

純文学好きなら

純文学の定義を詳しく知らないのですがw、でも私が思う純文学に、この小説は当てはまると思う。

 

純文学が好きなら

狂気と美しさの狭間を覗きたければ

では。

 

◆本日の一冊◆