大人になった今だからこそ読みたい。児玉幸多監修『少年少女 日本の歴史』(小学館・1982年)

小学校〜高校を卒業するまで、社会科が一番の苦手科目だった。というか、社会科の授業にあまりにも興味がなさすぎた。当時を振り返ると、他者の過去や経験を学ぶ社会科より、目の前でワクワクとした変化が起こる理科の方がよっぽど楽しかったのだ。 そんな私…

悪用禁止な「人たらし」の手口。佐藤優『悪の処世術』(宝島社・2023年)

恥を忍んで言うと、歴史の教科書や近代史で度々目にする各国の権力者、独裁者のことを、私はよく知らない。覚えているのは名前ばかりで、どこの誰か、何をしたのか、なぜ「悪」とされるのか、それを知らなかった。だから、それを知るために読んだ。 加えて、…

ノウハウ本ではないことに注意。森博嗣『小説家という職業』(集英社・2010年)

まず読書前にすべきだった反省点を述べる。 私は実は、森博嗣作品をまだ読んだことがない。 代表作として名高い『すべてがFになる』のタイトルやドラマ化したことなどは知っていたが、未読である。『スカイ・クロラ』が押井守監督によってアニメ映画化された…

私の反論は反論ではなかった。紀藤正樹『議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則』(SBクリエイティブ・2023年)

この本を購入したきっかけは、夫の存在である。 夫は人と議論するのが好きだ。時折、議論というより火種を生むのを楽しんでいる時もあるが、基本的に夫は理性的に話す。一方の私は、彼と話している時にどうしても感情的になってしまうことがある。だから私は…

人類学、地政学好きに勧めたい小説。上橋菜穂子『鹿の王 1』(KADOKAWA・2017年)

友人がおすすめしてくれた小説で、私が読み終えたのは文庫版全5巻のうちの1巻のみだが、物語序盤でもう面白い。 人類学や文化人類学、地政学といった学問への興味関心が高い人、あるいは知識がある人ならば確実に楽しめる小説だと考える。 私はこの本を読む…

森美術館にて『私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために』を鑑賞する

先日、森美術館で開催されていた、森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を観に行った。2度訪れている。1度目は1人で、2度目は友人と夫とともに観た。 1度目に行った時、私が自分自身にメモを残しているので、それ…

見る・見られるの面白さ。『美術手帖 2024年1月号 目[mé]「ただの世界をつくる」』(美術出版社・2023年)

目[mé]の存在は、友人が教えてくれた。目[mé]の作品を実際に見たことがなかったので、目[mé]が何者であるかを知るために『美術手帖』を購入した。 <美術手帖について> 美術手帖を読んで思ったことは、今回の特集である目[mé]を例にすると、目[mé…

書評というよりライター心得。印南敦史『書評の仕事』(ワニブックス・2020年)

この本は1日で読み終えることができる。なぜなら、著者が本の中で語っていることが文字通り表現されているからである。 書きたいことを書いているからこそ、著者の人柄が内容から伝わってくる。伝わるように書いているからこそ、書評を書くうえで真に大切な…

スマホと少しのお別れ。カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』(早川書房・2021年)

冒頭から衝撃的だった。 かつてエンジニアとしてグーグルに勤務していたトリスタン・ハリス氏の言葉だ。 「(テクノロジーは)中立ではありません。ユーザーに一定の方法で長時間使わせることを目的としています。企業はそこから利益を得ているわけですから…

現代にも続く闇。NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班『闇に魅入られた科学者たち』(宝島社・2023年)

「フランケンシュタインの誘惑」(NHK総合)で、“積極的安楽死”の回を見た事がある。ジャック・キボキアン、通称「ドクター・デス」は生涯に130人余の患者の自殺ほう助を行った人物だ。 読んでいる最中だが宮下洋一『安楽死を遂げた日本人』(小学館、2019年…