アン・ウーキョン著、花塚恵訳『思考の穴』(ダイヤモンド社・2023年)

イェール大学集中講義 思考の穴――わかっていても間違える全人類のための思考法

アン・ウーキョン著、花塚恵訳『イェール大学集中講義 思考の穴 ーわかっていても間違える全人類のための思考法』(ダイヤモンド社・2023年)

 

この本について

この本は、本文に登場する表現を借りれば、「わかっていても避けられない思考の不具合」を探求する本である。

過去に読んだ書籍から関連書籍を挙げるなら、『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』や『失敗の科学』を挙げる。

思い込みだったりそれぞれに違う捉え方によって生じるさまざまな不具合については、上記書籍にも記されている内容ではあるが、本記事で紹介する『思考の穴』はその内容がより網羅的に記されている印象なうえ、事例が非常に面白い。

 

なぜ、この本を選んだのか

私はこの本を、よく足を運ぶ本屋で度々目にしていたのだが、そこでは一度も手に取ったことがなかった。

だが、その後マシュー・サイド著、有枝春訳『失敗の科学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016年)を読み終え、その本で紹介されていたような思い込みやバイアスに興味があることに気づくことができた。

だから別の本屋で『思考の穴』を目にした時、手に取る決心がついたのだと思う。

 

心に響いた箇所について

1番好きな章から紹介する。

それは<Chapter 07「知識」は呪う|「自分が知っていること」はみんなの常識?>である。

この章のベースにある著者夫婦のコミュニケーションの事例はコミカルだ。だが、他者の立場に立って考えることがいかに難しいかをあらためて示されると、「自分の両親の不和は圧倒的なコミュニケーション不足によるものだったのだ」と思い知らされることになり、切ない気持ちになった。

そして、自分が夫や父、友人、知人、見知らぬ人と話すとき、他者が考えることを知るために「ただ尋ねる」を大事にしようと思った。

他人の感情を推測したり、深読みしたりしなくてよいのだ。相手の考えを知りたければ、私はただ、直接聞けばよいだけなのだ。

 

自分自身が陥りやすく、「これは怖いことだぞ……」と慄いた章は<Chapter 02「確証バイアス」で思い込む|賢い人が自信満々にずれていく>である。『失敗の科学』にも似たような話題が登場したように思う。

なお、小項目の見出しだけでも、自省心を促す効果がある気がしているので、緊張感のある見出しを以下に引用する。

  • 「自分が正しい」と思える証拠ばかり集めてしまう
  • 「最初の考え」に固執しているから間違える
  • 「思い込み」で人生が歪んでしまう
  • 簡単に「擬似うつ状態」になってしまう
  • 信じたとたん、信じたように行動し始める

これだけでもChapter 02の恐ろしさ、というか、思い込みが招く罠が垣間見えたのではないだろうか。

もちろん章の後半には、これらの思い込みを打破するヒントについて記されているし、助け舟は出されるのだが、残念ながらこのバイアスを全くもってなくすことはできないようなので、この本を繰り返し読んで、過度な不安に陥ることがないよう訓練していきたいところである。

 

この本を読んで何を感じたか

この本を読み、思考の深みの面白さと怖さを同時に楽しむことができた。

事例は比較的日常生活に近しいものが多いので、「ああ、確かにそういう選択しちゃうことあるかも!!」と思える。もし、そのようなことについて一度でも「……そういう選択をしちゃうのって何でだろう」と疑問を抱いたことがあるのであれば、この本が面白く感じられるはずだ。

 

この本をどんな人におすすめしたいか

この本は、自分の思考にやや難がある・癖があるという自覚がある人には役立つ本だと思う。私自身がそうだ。私はこの本を定期的に読み返して、思考の不具合に陥っていないか確認する必要があると感じている。

あと、純粋に、「大学で人気の講義に触れてみたい!」という人も楽しめるはずだ。