一度ハマると抜け出せないのがバンド「女王蜂」の魅力。
新曲が出る度に女王蜂の楽曲は進化していて、1回目の視聴はその全く新しい曲調に戸惑ったりもするんだけど、2回目以降はもう中毒。「聴きたくてたまらない周期」が絶対に来るようになってる。
魅力、底知れない。
これはもう劇薬。
聞けば聞くほどハマり、虜になればなるほど苦しくなる。でも手放してもつらい。そんな、とてつもないバンド「女王蜂」の世界へようこそ。
女王蜂とは
2009年に結成、2011年にデビュー。現メンバーはボーカル・アヴちゃん、ベース・やしちゃん、ドラム・ルリちゃん、ギター・ひばりくんで構成。
映画『モテキ』への提供曲「デスコ」があまりにも有名。
一度活動を休止するも、2013年に活動再開(彼女達曰く「完全体へと変貌を遂げた」)。
女王蜂の活動休止〜再開までの軌跡は、以下のインタビューが最高にクールなので読んでいただきたい。バンドの力強さの秘密がよ〜く分かるよ。
女王蜂おすすめ曲10選
今回私がおすすめする女王蜂10選は、女王蜂の楽曲が好きすぎてたまらない“わたし”がおすすめ10曲のため、アルバムに偏りがあるのでご了承いただきたい(『LINKIN PARKおすすめ曲10選』で読者様からご指摘いただいた、「偏りすぎだ」と)。
1.Introduction
はじめて聴いたときから痺れ続けているのが「Introduction」。
映画『東京喰種S』の主題歌。『東京喰種S』で描かれる物語の世界観に見事にマッチした楽曲だったので、さぞ原作をしっかり読み込んだのだろうと思い込んでいたのだが、なんと楽曲が出来上がったのが先!!!
映画への見事なシンクロ率と作り込まれた世界観に感動、というか泣いた。
この楽曲の歌詞は、何かに挑戦しようとする人の背中を確かに押すものだと思う。
はじまらないからはじめた それだけ
何も怖くもないのに怯えてはいられないでしょう?
ここまで来たら帰れない 心は誰も計れない
はじまらないなら いつしかくたばるその前に
Introduction
死ぬじゃなくて“くたばる”という言葉を使う強さも魅力的。そう、“いつしかくたばるその前に”一歩踏み出したいものである。
途中の歌詞もたまらなく愛おしい
好きな人とキス
いつかRIP(Rest In Peace)
だからLIP(Love In Peace)
いつか死ぬのだから、今はLIPって愛おしすぎない?!というか、そんな風にして大切な人を大事にしていきたい。
アヴちゃんがあの魅力的な表情で「だって・・・そうでしょう?」と語りかけてくれるような、人に勇気を与える楽曲。
2.失楽園
失楽園と聞くと、役所広司さんと黒木瞳さんが主演を務めた映画『失楽園』が思い浮かぶ。原作は渡辺淳一さんの恋愛小説『失楽園』。不倫が主題となった物語で、エロティックな表現が話題を呼んだ作品でもある。
アヴちゃんが描いた「失楽園」は、映画や小説の「失楽園」ほど露骨ではないけれど、やっぱり「禁断の」というか、「許されない関係」というか、そういう雰囲気が醸し出されていて、とてつもなく切ない。
「禁断の」「許されない」はその言葉の通り、第三者から見れば決して許されることのない関係や行為なのだけれど、当事者の2人にとっては「思い合っているのになぜ」という感覚になるのかもしれない。
天国なんて行きたくない
きみがいないと始まらない
禁断の恋は報われない?
やってみないと判らない
“天国なんて行きたくない”、“やってみないと判らない”という歌詞には決意を感じる。「禁断の」「許されない」関係だなんてことはわかってるんだと言わんばかりの強さだ。
許されなくても思い合い、愛し合い・・・そんな強い意思が感じられるような歌詞に、心惹かれてしまう。
3.売旬feat.志摩遼平
(↑)『スリラ』に収録。
インパクト大なタイトル。売春・買春行為は犯罪なのだけれど、アヴちゃんが綴る歌詞によって、売春に関わった人の“情”を垣間見るような気分になる。そしてそれはとてつもなく切ない。
アヴちゃんが1人、男声と女声を使い分けて歌うバージョンも好きなのだけれど、わたしが好きなのはドレスコーズの志磨遼平さんが参加するバージョン。アヴちゃんは女性の心に注力する。
2人の歌声はものすごい色気に溢れている。
それでいて歌詞に登場する2人の思いを憑依させるかのようにして歌っているからものすごく切ない。色っぽいのに、心苦しい。
あたしが売る春 僕が奪う春
思い出なんかにしたりしないで せめて
共犯者でいよう二人が散る春
“共犯者でいよう”の言葉に含まれる思いが、当事者にしか分からない関係性や心の距離間を表しているような気がして。繰り返し聴くたびに、2人がそれぞれ幸せな人生を歩むことを望んでしまう。こうやって生きている人もいるのだろう、と思わせる1曲。
4.金星
あまりにも衝撃的だった「デスコ」。でもわたしは「デスコ」以降、女王蜂の楽曲から離れていた時期があった。たまたま「久しぶりに女王蜂が聴きたい」と思ったとき、YouTubeで見つけたのが「金星」のPVだった。
ピアノと手拍子から始まる特徴的なイントロ、リズミカルな導入。思わず体が動いてしまうようなキャッチーな音。でもアヴちゃんの歌声は変わることなく心に刺さり続ける。
男声、女声を入れ替えて歌うアヴちゃんの声が、この曲のリズムの一つになっていてものすごく楽しい。
歌詞には切なく感じる部分がいくつかあるけど、曲調やPVの女王蜂のメンバーが手を叩いて踊る姿には明るさや楽しさが感じられる。女王蜂の楽曲の中ではポップな曲調だと思う。
人を笑顔にすることもできる、そんな女王蜂の楽曲もぜひとも聴いてほしい。
5.ヴィーナス
ゴリゴリのギターサウンドが最高にクールな1曲。高らかに歌い上げるアヴちゃんの歌声が耳に響くと、決断力を迫られるような気分になる。
ヴィーナス お願い 数多の夜を越え
ヴィーナス 待てない気持ちを抱えて
疑心暗着な気持ちじゃ 募るばかりさ尚更
ヴィーナス お願い 恐れを乗り越え
ヴィーナス 持てない荷物は捨て置いて
子供騙しな誓いも 無いよりはましと思いませんか?
“子供騙しな誓いも 無いよりはましと思いませんか?”に到るまでの歌詞で、「苦しい思いを抱え続けていても苦しいだけだから」「心に留めておけない気持ちは捨て置いたっていいのだから」と説得されているような気分になる。
苦しい気持ちも愛おしいと思う気持ちも、心に留め置いたっていいことはないな、と思った。
曲終盤でアヴちゃんが歌う
ヴィーナス そう 総てはあなた次第だ
がその思いを決定づけた。
何を思おうとも、決めるのは“あなた次第”なのだと。
力強い楽曲だと思う。
6.もう一度欲しがって
タイトルも、曲冒頭に聞こえる電子音も、歌詞も、アヴちゃんの歌声も、切ない。
まだ判らない 触れていない気持ち
認めていたら 答えは違っていたかももう一度欲しがって 「さよなら」まだ言わないで
うやむやに従っちゃ なんにも出来ないふりして
もう一度欲しがって 待てないよと急かして
聞き分けがないのなら どうせなら ほら悪に成って負けてよ
「歌」詞とあるように、歌にのせて詞を伝えるからこそ響くものがある。歌詞をのせたけど、この楽曲の切なさは、アヴちゃんの歌声にのせて聴かないと届かない。歌詞だけで届いていたとしても、魅力は半分にも届いていない。
曲終盤の“答えは違っていたかも”の「タメ」と“ほら悪に成って負けてよ”と歌うときのアヴちゃんの切なげな声を聴いてほしい。アヴちゃんの歌声を聴くと、相手に「悪に成って」ほしいわけじゃないことが分かる。
強がって、でも甘えたくて、でもそれを素直に伝えられなくて。そんな1人の女性の切ない情景が浮かび上がるようで、わたしは本当に好き。
7.く・ち・づ・け
ゴリゴリのギターサウンドから入る曲は、後半突如として切ないメロディへと変わる。歌詞と曲調が変わると、今まで見えていた景色が変わる。
サビに当たる部分の歌詞はポップ。
キス キス キス 判り合えたつもり?
キス キス キス 計れない どれほどか したい
かなりシンクオブユーな くちづけ
“かなりシンクオブユー”という表現は、ポップでありながらも「あなただけを思っているの」という強い意思を感じさせる。
だけど後半、途端に曲調が落ち着いて、アヴちゃんの歌声が少しだけ「泣きそうになっている」ように聞こえる不思議。
祈るばかりのミッドナイト どうか神様お願い
花に囲まれ そっと 息を殺して微笑うあの人に
安らかな眠りを どうか、どうか
グッドバイ グッドナイト
この部分だけが、なんだか意味深で、苦しくて、愛おしくて、ああ、やっぱり女王蜂の楽曲は素敵すぎる、と安心する。
この部分の盛り上がりをぜひ聴いてほしい。
8.催眠術
リズミカルでポップな楽曲で、歌詞が心に響きまくる女王蜂の楽曲にしては、言葉遊びがメインな曲に聴こえなくもないんだけど、改めて歌詞を見返すとやっぱりどこか心苦しさを感じるのが女王蜂の魅力。
冒頭の
狂っている?
わかっている
の繰り返しで、もう「催眠術」というか、自分に言い聞かせることで自分をどうにかしようとしている感じがものすごく伝わってきて、凄い。
サビに当たる部分は、女王蜂らしからぬほどJ-POPらしい曲のつくりに思える。
飲み干すアルコール
どこまで歩こう?
駆け引きの向こう
もう一度アンコール
ほんとは吐きそう
でも涙を飲み干そう
どこまでも 楽しいイリュージョン!
でも、それすらも彼女たちが描く「催眠術」の一部なのだと思う。
だって、どんなにこの歌詞をポップに歌っても、多分この歌詞の主人公は、アルコールを飲んで酔うことで、何かから必死に逃れようとしているように見えるから。“楽しい”と書かれていても、きっと笑顔でお酒を飲んでいたとしても、彼女の心の中はボロボロなのかもしれない。
ラストの
これは催眠術
で曲がプッツリ切れてしまうのも、この楽曲の奥に潜む何かを感じさせる。
9.折り鶴
はじめてこの曲を聴いた時、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」くらい衝撃を受けた。女王蜂の衝撃曲といえば「告げ口」も有名だと思うが、わたしは「折り鶴」を選ぶ。とはいえ、いずれも気軽に聴ける曲じゃない。
これはひとつの物語だ。
悲しく、怖いし、どことなく気持ち悪いし、憎らしい。ぜひともまずは聞いてほしい。そしてアヴちゃんの表現力に圧倒されてほしい。ここまで感情込めて歌える人、私は知らない。
「こんなんでよくなるわけないけどな」
10.デスコ
「女王蜂といったら」と聞かれたら、やっぱり頭に浮かんじゃうのが「デスコ」。ビジュアルも曲調も雰囲気も違うかもしれないけど、それでもやっぱり女王蜂だって思わせるくらい力強い楽曲で、とにもかくにもパワフル。誰にも真似できない。
プレイディスコ キラキラ飛び散る夜には
ウェアーディスコ 危ない遊びでキメるの
知らない映画の結末 教えてくれてもつまらないのよ
プレイディスコ キラキラ飛び散る夜には
ウェアーディスコ 危ない遊びでキメるの
新しい世界の始まり 教えて欲しいの今すぐほらすぐ
これを聴いたら、踊り狂うしかない。
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作業用BGMにはできない
女王蜂の楽曲はどの曲も心に突き刺さるから、「作業用BGM」にするのはもったいないし、しちゃいけないし、できない。
だって聴いちゃうから。
耳に届いちゃうから。
女王蜂が込めた魂が、めっちゃくちゃ響いちゃうから。
でも、だからこそ、落ち込んだり苛立ったりしている心を落ち着かせたいとき、鬱憤やモヤモヤを抱えてどうにかしたい!ってときに、女王蜂の楽曲は絶対に寄り添ってくれる。
凄すぎるバンドです。
ぜひご視聴を。
では。
◆本日のおすすめ◆
「Introduction」収録。
女王蜂初の書籍。