まずはわたしの話をさせてね。
1年くらい前、突然運動にハマった。
といっても、「GOLD GYMに通う人々」のようなメキメキマッチョなトレーニングに励んでいるわけではなく、「続けることが大事」をモットーにしたゆるーい運動だ。
しかし続けていくうちに、体の変化が面白くなり、今ではスクワットかプランクか、ラジオ体操かみんなの体操をやらないと、疲れやすくなったり、体がたるんだり、といった変化に気づけるぐらいになった(変化できたからこそ、変化に気づけるのだ)。
で、これまた1年くらい前、ゆるーい運動による体の変化に味をしめたわたしは、急に「5km走りたい!」と思い立った。そして2〜3ヶ月ほどウォーキングとジョギングに励み(夫がコーチを担当)、3月には5kmのマラソンに参加。途中歩いたりもしたし、40分かかったが5kmを走りきった。
この結果、ランナーとしてはへっぽこ中のへっぽこだろうが、わたしとしては、幼稚園から大学院生になるまで「運動なんて嫌い!」「運動は苦手だからやりたくない!」の一点張りだったわたしが「5km走ろう」と思い立ち、やりきったのだから、素晴らしい成果である。
ただ、その後は引っ越しだったり、ありがたいことに仕事が増えたりで運動欲、走る欲から遠ざかっていた。しかし先日、夫の付き添いで山岳ショップに行ったら、本のコーナーで『走る奴なんて馬鹿だと思ってた』と目が合った。
大好きな大泉洋さんの対談本『男のミカタ』『夢の中まで語りたい』で、洋ちゃんに負けず劣らず軽快な語り口でわたしをめちゃくちゃ笑かした松久淳さんが「走る奴なんて馬鹿だと思ってた」と言いながらフルマラソンを走っている…!
ページをめくると、“最後に運動らしい運動をしたのは、小学校4年生”とある。松久さんがかつてへっぽこ(失礼)だったと知ってワクワクした。
だって、へっぽこ(失礼)だったのにフル走ってんだぜ?!
というわけで興味が湧いて読んだわけだが、これがもう、文章が軽快だからスルスル読めて、面白いから手が止められないわ、「足が痛い」つってんのに走らずにはいられない松久さんにツッコミを入れたくなるわ、時々飛び出るしょうもない発言に「しょうもね〜」と声をあげてしまうわ…
とにかく笑っちゃうんですわ!
わたしは思う。
「ランニングに憧れてるけど運動が嫌いな人」は、初心者向けの優しい教本を読むより、本作(松久淳さんの実体験)を読んだ方が一歩踏み出しやすいのではないかと…。
もちろん『はじめよう!ランニング』みたいな本がまったく効果がないとは思わない。でも、ほら、情けないことを言うけどさ、「まずはウォーキングから始めましょう」のページのモデルさんがシュッとしてたりすると、ちょっと自信なくしたりするじゃないすか。
一方、松久さんは「はじめに」で自分のことをこう説明してる。
本文で詳しく語っていますが、私は10代から30年以上、運動と名づくものはいっさい拒否、169センチ・52キロというガリガリ虚弱体質で、完全文化系夜型生活を送ってきました。
こんな一文から始まって「走る奴なんて〜」とか言ってるのに、42.195kmを走る物語なんだよ、信じられる?!
分かっちゃいると思うが42.195kmまでの道のりは長い。松久さんはスーパーマンではない。そこまでの道のりは、ちゃんと、長い。でも、続ければ続けた分だけ走れるようになっちゃう…を証明するのが松久さん。
ていうか、読めば分かるけど、全力投球しすぎないってだけでめっちゃ努力の人。でもその努力も無理やり鼓舞してつくったわけじゃなくて、「いけるかも」と思って続けたら結果、努力が実を結んだって感じ。
こう聞くと、「じゃあ自分もできるんじゃ…」って思わん?!
で、また、彼の魅力は「走っちゃう」人なんだけど、文章のメインが「走ること」ではないところなんだよね。
景色が寂しいことにブツクサ言ったり、目の前を走るチャンネー(別にこういう記述があるわけじゃないけど、こういう雰囲気だと悟って)の姿を追っかけたくなっちゃうだあ、ランナーが給水所にある塩やらバナナに手を突っ込むもんだから塩もバナナも汗でぬるぬるしてて…
みたいな、そういうくだらない部分を書いてくれるから楽しく読める。
なので、「読んだところで走りたかねえよ」って人が読んでも楽しめる本である。
「読んだところで走りたかねえよ」って人でも、何人かは「来週?マラソン大会行ってくる」みたいになるんじゃないかなって予想してるけど。
ああ、馬鹿になりたい。
走る奴になりたい。
しかしなんでこんないい本に巡り合った直後に「外出自粛」になるかね。
…はーあ。
では。
◆本日のおすすめ◆