【忘備録】日垣隆『すぐに稼げる文章術』/「楽しい」本ではないのがまたいい

すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)

図書館でこの本を見つけたとき、わたしはちょうど「文章力」について思い悩んでいるときだった。

思い悩んでいる…というより、「思い悩まなければ!」「もっともっと文章について考えなければ!」「今までもこれからも、真剣にライター仕事に取り組まなければ!」が頭を渦巻いていた。

ライター始めたての人が読みたくなるようなタイトルに思えるかもしれないが、裏表紙にはこんなことが書いてある。

 あらゆる場面でかつてないほど文章力が求められる現代は、プロとアマの壁を越え、誰でも文章で稼げる時代。文章力を磨くことは、最もローリスクでハイリターンな自己投資だ。

誰でも文章で稼げる時代だからこそ、文章力を磨きたかった

ライターとして働くわたしがプロなのかアマなのかは「そんなんよう知らん」が、仕事を辞めない限り、文章力を磨く行為に終わりはない…と思ったんで借りた

まあ、決して…「楽しい」本ではない!

でも著者にボッコボコにされる感じが妙に心地がいい。

心地がいいというと語弊を生みそうだが、きちんとボッコボコにしてくれるのだ。「お前の文章なんて駄文だ!」と言われるけど、「何くそ!」とやる気をみなぎらせてくれる感じ

 

まず第一章から痺れる。

第一章に痺れない人は、ライターに向いてないと思う

ライターって「書く」印象が強いかもしれないが、「書く」にとことん向き合うならブロガーかエッセイストなどが向いている気がする。ライターは以下のことを考えなければならない。

 本来最優先して考えなければならないことは、「どう書くか」より、文章が「どう読まれるか」ということのほうです。

引用元:日垣隆, 『すぐに稼げる文章術』10ページ, 2006年11月30日, 株式会社幻冬舎 

読み手のことを考えない、は絶対にNGなのだ。

「んなこたぁ知っとるわ!」な書き手も多いかもしれないが、わたしはこの一文を目にしたとき、改めてそれを強く感じた。わたしはこれまで何本もの、いやもう何十、何百もの文章を書いてきたが、それはきちんと読み手を考えた文章だったか?と改めて思い返される。

この本は、じっくり読みでもパラパラ読みでも、何かしら引っかかる一文があるはずだ。

もちろんそれは、著者が伝えたいことが太字で書かれているという視覚情報的な要因なのかもしれないけど、自分の文章力について考え直したい、熟考したい人、技術におごらず、常に初心に返りたい人にとっては刺さる一文が絶対ある

 

なお冒頭で、“この本は「楽しい」本ではない”と紹介した。

とはいえその理由は、著者の悪文批評が人をこきおろすかのごとく痛烈で、読んでいて苦しくなっちゃったからってだけ。とまあ、これは完全に、わたしが「こきおろされ慣れしてない」ってだけの話なんだけど。

著者の悪文批評が、悪文の書き手を小馬鹿にしているように感じられ、悪文批評の章を読んでいるうちに「う〜ん、この人性格悪いなあ」「この人に直に物書きを習いたくはないなあ」と思ってしまったのだが、「楽しくない」理由。本当それだけ。

でも、同じように感じてしまう人も、全く感じない人も、「お前の文章なんて駄文だ!」と言われているようなボッコボコにされる感覚は「良質なもの」に感じられるはずだ。

だって文章書きの人なら誰もが考える「読み手をうならせたい」気持ちをバシバシついてくるのだから。

 

最後に。

ライターとして働いている人、ライターとして働いていきたい人、ライターではないけれど「書く」に触れる機会が多い人(アーティストさん仲間で情報発信のためにブログやSNSを活用していて、思いを強く訴えたい!!!という人など)におすすめなのは

  • 第5章 発想の訓練法
  • 第6章 こうすれば稼げるQ&A

である。

「どんな職業であっても、稼ぐために大切なことはおんなじなんだなあ…」と感じさせてくれるアドバイス多数。以下、一部抜粋。

 Q フリーで食っていくために一番大切なことは
 A 自分と同じ考えではない人がヨソには大勢いることを、まずしっかり意識することです。自分と同じような人しかまわりにいなければ、交渉におけるマネジメント力など必要ありません。しかし、自分とはまったく異質な人たちをどう動かすか、どう説得するかという意味において、マネジメント力は必要不可欠なのです。

引用元:日垣隆, 『すぐに稼げる文章術』160ページ, 2006年11月30日, 株式会社幻冬舎

 

 Q 仕事がないときは何をやっていたか
 A 暇なときにしかやっておけないこともあります。暇なときには、何か得意なことを身につけることが良いでしょう。プロとしてお金を取れるようになるためには、何につけても1万時間は1つのことに取り組まなければなりません

引用元:日垣隆, 『すぐに稼げる文章術』174〜175ページ, 2006年11月30日, 株式会社幻冬舎

 

ちょうど今、新型肺炎の感染防止のために、あらゆる店、あらゆる業種が活動自粛に追い込まれていて、SNSではそのことで滅入っている人の声が目に入ってくる。

でも引用した2つのアドバイスは、「外出自粛」な今だからこそ考えるべき、やるべきことなんじゃないかって思うんだ。

決して仕事がないわけではない(むしろありがたいことに書き仕事に関してはいつも通りやらせていただけてるんだけど)し、3年近くフリーで食ってけてるんだけど、不安だらけな今だからこそ「ピンチはチャンス!」って貪欲に生きていけるかどうかが今後のカギになる気がする

そんなとき、第5章と第6章は「しっかりやれよ!」と背中を押してくれる。

決して「楽しい」本ではないけど、厳しい現実をしっかり見据えさせてくれるから読んで損はないよ。

…つってね、著者が読んだらこの文章もこきおろされんのかなー、怖いなー。ははは。

では。

 

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