この本は、表紙や帯にも記載されている通り、著者が外国語を習得するために行ったこと、習慣術やマインドセット法などを教えてくれる本だ。
ただし、「語学勉強」の響きから感じられるような堅苦しい内容ではないし、その一方で「たった3ヶ月で流暢に話せる!」みたいな謳い文句も一切ない。
その代わり、この本を読み終わる頃には、遊ぶように楽しみながらも、学びたい言語と真摯に向き合う姿勢が大事なのだと思わされる。
この本が販売された当初(2024年5月15日に初版第1刷発行)からこの本の内容は気になっていた。けれど、私はすでにDuolingoという学習アプリを使ってちまちまと多言語学習の習慣づけができていたし、著者・Kazu LanguagesさんのYouTube動画を見てその流暢さに気圧され、「いや〜さすがに地頭がいい人の話なんじゃないの」と、なんなら少しこの本の存在を遠ざけていた。
しかし先日、育休中の夫がこの本を読み始めた。そのきっかけはやはり育児。思いのほか育児に時間を取られる中、彼は絶妙な隙間時間で何かをしようと一念発起し、苦手な言語学習に取り組むことにしたようだ。
本が手元にあるのなら……と私も読み始めた。
この本を読んでいて、やはり「継続は力なり」なんだなと感じつつ、Kazu Languagesさんが、多言語を習得するのに活用した教材やアプリ、学習に費やした時間の話やマインドセットについてかなり事細かに記していることが胸に響いた。
もしかすると、確かに地頭がいいのかもしれない。でも、この本を読むと、地頭がいいか悪いかというより、「なんでだろう」「どうしたらいいんだろう」と考え、その疑問を解消するために行動に起こすという姿勢こそが、何かを習得する上では大事なのだと思わされる。
もちろん、「地頭がいいからそういう姿勢になれるのだ」という「卵が先か、鶏が先か」的な考えが浮かばないわけではないが、とにもかくにも、目の前の学習対象に興味を抱き、興味を抱いた内容を楽しみ尽くす姿勢が必要なのだと感じた。
ちなみに、私はさっそくこの本の中で紹介されていたアプリ「pinsleur」をダウンロードしてみたが、なかなか面白かった。Lesson1は無料で試すことができるので、多言語学習に興味のある方はぜひ試してみてほしい。
興味深かったのは、言語学習はリスニングとスピーキングから始めた方が頭に入りやすいと実感できたことだ。
pinsleurでは30分のレッスン音声を聞くことになる。最初に学びたい言語による会話を聞き、そこから発音や意味についての解説があり、その際、繰り返し発音するよう促される。
pinsleurで久しぶりに中国語を聞いた際、最初は会話の内容が薄らぼんやりとしか分からなかったのに、最後には会話がクリアに聞き取れるようになって感動した。
今は、pinsleurアプリに課金するかどうかで悩んでいるのが正直なところ。でも、調べてみたらオーディブル等で1回買い切りのものもあるんだね。あと、pinsleurじゃなきゃダメなわけでもない。言語学習はリスニングとスピーキングで大枠を掴めば取り組みやすいはずだから、ポッドキャストやNHKの語学講座でもいいっちゃいいと思う。
というわけで、この本を読んだあと、私は響きの美しい中国語をpinsleurやその他音声教材で、スペイン語は文法が気になるからDuolingoで、英語は長らく取り組んでないからTOEICリスニング対策のアプリで学ぶことにした。
なお、本の帯には“語学は絶対「勉強」するな!”とある。
人によって「勉強」の捉え方が違うはずだから、この本を読んで、「結局めちゃくちゃ『勉強』してるじゃん!」と感じる人もいるはずだ。私も、「Kazu Languagesさん、めちゃくちゃ真面目だな〜」とは思った。
でも、まあ、確かに、「勉強」ではないかもしれない。
本の後半でも触れられているが、言語はコミュニケーションツールなのだ。
言語は、勉強して習得するものではなく、コミュニケーションを図るための手段。違う言語を話す相手のことを深く理解したい、楽しく会話したい、そう考える人の味方になるツール。
そう捉えなおせるのであれば、この本を読むことで多言語習得のコツを得ることはできるはずだ。
