こんにちは、齋藤吐夢です。
つい先日、ずっと気になっていた映画『湯を沸かすほどの熱い愛』を観て参りました。人前で号泣するのが本当に恥ずかしいのですが、涙を止められませんでした。
湯を沸かすほどの熱い愛
結論から言うと、とりあえず観てほしい。何も言わず、とりあえず席へ座り(或いはDVD化されてから自宅のソファでも構わない)観てほしい。
”湯を沸かすほどの”の意味は映画を観れば分かる。だけど、そんなこと関係なしに、最初から最後まで熱い愛に溢れた物語である。
笑けてくるほど泣けてきて、嗚咽をこらえていたけれど、私が鑑賞しに行った映画館では、同じタイミングで鑑賞している他のお客様が涙するのを感じた。
一体となって、涙する瞬間を味わえたことにも、この映画に感謝したい点である。
邦画アレルギー解消
なぜこの作品を知ったのか、全く分からない。とりあえず突然私と趣味が全く一緒な夫が「僕はこれが観てみたい」と言ったことしか覚えていない。
夫も私も実は少し邦画にアレルギーがある。起承転結のゆるい淡々としたストーリー展開や、笑いどころにうまく気づけない特性があったために、邦画を避けてきた。
そんな夫が突然観たいと言った映画だ。
観終えた後、邦画アレルギーが少しずつ解消されていくことを感じた。良作を鑑賞できた喜びがあって、映画を観終えた後心が晴れやかなのはすごく嬉しかった。
もちろん邦画アレルギーも人によって様々だから、余計悪化する人も世の中に少なくとも1人はいるだろうが。
あらすじ
銭湯「 幸 の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔 し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。
そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。
スーパーお母ちゃん映画
この映画は完全に母の愛の映画である。ある種どぎついほどの愛だ。主演が宮沢りえだから観れたのでは?と言われてしまっては元も子もないかもしれない笑。
そのくらいスーパーお母ちゃん映画だ。
無償の愛とはこのことか
例えば、私は信仰している宗教がないから、別に宗教を信仰していなくとも、無償の愛を理解することができない。実感したことがないからだ。
誰かが私に、それこそ母が私に、父が私に、夫が私に愛を向けていたとしても、「無償の」の部分をしっかりと理解できる自信はない。
ただ、この映画に出てくるお母ちゃん、双葉という女性は、本当に無償の愛で人を抱きしめるし、人に寄り添うし、人に笑顔を見せる。
なぜ彼女が無償の愛をもって人と接することができるのか、分かる過去があまりにもつらすぎるが、彼女の過去が彼女を存在させてこそ、周りの人は救われるし、彼女自身も救われている。
笑う口元、母強し
そしてとにかく母という生き物は強い。家族の前にいる双葉の口元は大抵微笑んでいる。嘘をつかない女性だから、悲しい時は悲しい顔になるし、つらい時はつらい顔になる。
けれど、とにかく笑う口元の印象が強い映画であった。母は強い。映画にせずとも理解できる話だが、映画にして、なお説得力のある「母強し」はものすごいインパクトだ。
役者陣の本気
この映画はキャスティングも素晴らしかったと思う。非の打ち所がない。出演されている役者一人一人が本気だ。とんでもない映画だなあ、と思った。
宮沢りえの本気
とかく双葉を演じた宮沢りえさんは本当にとてつもない女優さんだと身に染みて感じた。凄まじかった。
最初の方では、宮沢りえさんが綺麗な「りえさんがママだったらいいのにな」的なイメージビデオかとも思ってしまったが、病魔に侵されていく姿は演技だと分かっていても、つらい。
病気の怖いところだけれど、少しでも気が、生気が緩むと一気に襲ってくるのが病魔だ。とあるシーン以降、急激にやつれていく姿が、演技とメイクのせいだとは言え、怖かった。
でも本気すぎる演技の中でも、きちんと「お母ちゃん」だった。だからこそ役者としての狂気を感じた。ストーリーとしては爆泣きものだった。鑑賞している私の心はもうぼろぼろだ。
女優魂の本気に圧倒され、ストーリーでは泣かされ、ぼろぼろになってしまった。
役者の本気
もちろん主演の宮沢りえさんだけではない。娘役の2人もとんでもない演技派だった。ネタバレになるので伏せるが、彼女達の複雑な笑顔や涙をこらえる表情は生々しかった。
途中で出会うチャラい青年も、今まではただのイケメン俳優だと思っていたけれど、また彼自身の複雑な心情をさらりと演じぬいていたからすごかった。
ちゃらんぽらんなお父さんも全然憎めない。いや、現実にいたらはったおしたくなるほどダメな男だと思うけれど、それでも愛されてしまう何かがある。
良作です、絶対に
こればっかりは本当に良作です、絶対に。
私が涙もろいってのもあるけど、ノベライズ版を購入し、読み直しただけでまた目が潤むほどの作品。私は爆泣必至のシーンのたんびに頭の中で「爆撃だ、これは」と嘆いていた。
1つの戦争のようです、これは。
とてつもない量の爆撃が待っています。
気をつけてね。
では。
◆本日の一冊◆
ノベライズ本の著者は監督自身。
映画では語られなかった行間でまた泣く。