きっかけは、4月から始めた通信教育課程の課題。「比較鑑賞」についての課題を調べるため、まずは一般書から読みはじめようと思い立ち、手に取ったのが『ゼロから始める西洋絵画入門』だった。
私は学生時代、「歴史」が何よりも苦手だった。
でも、ルネサンス、印象派、近代、の流れに添いながら有名な作品の解説を一つ一つ読んでいくうちに、時代の流れを感じながら作品を鑑賞する楽しみを知ることができた。
『ゼロから始める西洋絵画入門』
概要
この本では「西洋絵画」の定義を「広大なヨーロッパで13世紀から20世紀にかけて描かれた作品」に絞っている。
芸術の大きな変革期となったルネサンス前夜からルネサンス期、マニエリスム、バロック、ロマン主義、そして、その後に生まれた印象派や新古典主義といった画派、最後に近代作品という内容になっています。
時間的な制約がもうけられ、「近代」は5人の巨匠の解説しかないため、メインはルネサンス〜新古典主義までといっても過言ではない。が、この部分はもう巨匠中の巨匠が勢揃いで、有名な作品がバンバン出てくるので、「へー」とか「ほー」とか言いながら楽しめること請け合い。
「美術史における位置付け」が面白い
歴史順に並んだ作品を見ていくうちに、なんとなく名前は聞いたことがあったけど、何を示しているのかよくわからなかった「美術史における位置付け」、すなわち、先の引用文にあった
等々がめちゃくちゃ面白いことに気づいた。
辞書的な定義とはだいぶかけ離れているかもしれないけど、これって「その時代の流行」みたいな感じなのだ。しかも時代背景が作風に大きく影響していたりして、とても面白い。
例えば、「バロック(17世紀)に入る前の絵画って宗教画がやたら多いな〜」と思っていたのだけれど、どうやら17世紀あたりから芸術文化が一般市民(もちろん商業でお金を稼いでいる人には限られるっぽいけど)にも触れられるようになったらしい。
それまで芸術文化は王侯貴族だけのものだったから、立派な宗教画とか肖像画とかがウケていたみたい。だから「THE・宗教画」って感じだったのか。
『真珠の耳飾りの少女』で有名なフェルメールの作品のテーマが日常生活っぽいのも、彼に絵を注文する人たちが貴族じゃなくて財のある「市民」だったから。へー。
「印象派」の反骨精神を知る
この本を読んで、一番見方が変わったのは「印象派」の作品。
私の家族は比較的美術鑑賞好きが揃っていたので、小さな頃から美術館に出かける機会が多かったのだけれど、私は「印象派」の絵が感覚的に苦手だった。点っぽいし、ぼやぼやしてて、はっきりしない感じが苦手だった。
でも「印象派」が生まれた背景を読んだら、「この人たち、めっちゃパンクじゃん!」と思った。当時の保守的な考えに反発して、当時タブーだったモチーフを描いて当時の公募展に挑戦し続けるという…絵に抱いていた印象と真逆の精神に惚れてしまった。
で、別の本なのだけれど、『もっと知りたいルノワール 生涯と作品』に当時入選した作品と印象派の始祖であるマネの作品が掲載されているのだが、これがもう、全ッ然違うのだ。当時受け入れられていた風潮に真っ向から歯向かうマネ。凄かった…。
「もっと知りたい」を揺さぶる1冊
もちろん、これまでほとんど絵画に触れてこなかった人がいきなりこの本を読んで心揺さぶられるかと問われると、ちょっと回答が難しい。私が絵画に関心があるから楽しめたのかも…とも思っている。
でも、一つでも「あ、これ好きかも」って作品があれば、それで、その作品の解説を読めば、「もっと知りたい」が揺さぶられるのは事実だ。
だって私はもう、この本を読んだせいで、巨匠一人一人の解説本を読み始めるほどには知りたくなっちゃったからね!
ただ作品を鑑賞するだけじゃ物足りなくなってきた人はぜひ。
では。
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