【ネタバレあり】映画『狼たちの午後』/前半の盛り上がりから一転、心にぽっかり穴が開く

狼たちの午後 (字幕版)

 ネタバレあり。

 今作をまだ観ていない人に向けて、「あ、やっぱ観てみようかな」と思えるようなレビューを目指しているが、鑑賞後感じた魅力を伝えるためにネタバレする。

 「映画鑑賞前のネタバレ絶対NG」な人は、映画鑑賞後にぜひお越しを。 

 

 

狼たちの午後

(↑)個人的には『狼たちの午後』というフォントがかっこよさ半減で気に食わない笑。

 

あらすじ


Dog Day Afternoon Trailer

うだるような暑さのブルックリンの午後。楽観的で無計画な二人の男が銀行を襲う。リーダーのソニーとパートナーであり、後に問題を引き起こすサル。取り囲む警官隊、熱狂する群衆、騒ぎ立てるマスコミ、そしてピザの配達人までもが、事態を限りなくエスカレートさせていく。

引用元:Amazon.co.jp:狼たちの午後(字幕版)

 アル・パチーノの顔が大好きすぎるのだが、基本しかめっ面なシーンが多い。が、『狼たちの午後』では表情豊かなのが、もう、最高である。

 

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出典元:http://blog.livedoor.jp/hktsunagetemiru/archives/47914715.html

(↑)この顔見た時、一目惚れ〜!!!

 

前半、陰鬱映画の匂いはしない

 映画冒頭は”楽観的で無計画な二人が”とあるように、まあ、実に計画性のない若者が銀行へ強盗に押し入るシーンから始まる。

 映画前半からは陰鬱な空気を感じない

 むしろ「あ、これコメディかも」と思わせるほどポップな演出だ。

 彼らの無計画すぎる銀行強盗は、本当に間抜けであり、銀行員たちから「お前たちはちゃんと計画したのか」と呆れられるほどである。挙句、銀行強盗開始から10分後には警官に囲まれる始末である。

 が、ここから彼らは、世間から注目される人物へと変貌していく。

 警官に囲まれながら啖呵を切る主人公ソニーの演説シーンは、目を惹かれるものがある

 当時のアル・パチーノから漂っていたであろうカリスマ性と相まって、まるで社会の底辺で生きる人々のヒーローのような存在へと変貌する。

 

 しかし、この前半の描写があるからこそ、心にぽっかり穴が開く

 

後半、徐々に雲行きが怪しくなる

 ソニーが銀行を襲った理由が、同性愛者の恋人の性転換手術費用を手に入れるためだったことが判明する。ソニーには妻と子供がいる。しかし本当に愛していたのは、ある男性だった。

 この時点で、映画公開の時期や今作のモデルとなった事件が起きた時期を考えると、雲行きの怪しさを感じる。

 かつソニーの相棒のサルは神経過敏なきらいがあり、映画が進むにつれて、彼の情緒不安な部分が露見するようになる。これもまた雲行きが怪しい。

 

 人質となった銀行員たちが、彼らを同情してしまうほどに、彼らを取り囲む環境は全然良い方向に進まない。

 彼らを囃し立てるメディアも世間も、そして観客も、どこか彼らを”見世物”のように楽しんでいるような感覚に陥る。彼らを囃し立てる空気が盛り上がれば盛り上がるほど、映画のきな臭さも増していく。

 

ラストシーンが忘れられない

 一切手荒な真似をしないソニーたちに対して、人質である銀行員たちも信頼に似た感情が芽生えている。

 しかし彼らは犯罪者だ

 警察側に要求し、国外への逃亡用ジェット機を用意させたソニーたち。緊張に包まれながら、人質を連れて銀行から空港へと逃げる彼らだが、神経過敏がゆえ猟銃を手放せなくなったサルに照準があたり、バスに降りようとした彼の額を銃弾が撃ち抜く

 

 (↑)白字で伏せさせてもらったのは、今までの空気がガラリと変わり、彼らは犯罪者で、彼らを救うことはできないのだと思わされる決定的なシーンだからだ。

 気になる人はぜひ今作を鑑賞し、ラストシーンをしっかり目に焼き付けていただきたい

 

 わたしは前半の空気から、てっきりスッキリとした終わりを迎える映画なのだと思っていた。しかし実際には違った。

 唖然とするラストだった。

 ラストシーンからエンドロールが終わるまで「そうなってほしくなかった」と、取り返しのつかないことをウジウジと後悔し続けるような気持ちになってしまった

 

心にぽっかり穴を開けよう

 わたしは今作が大好きだ。前半の盛り上がりも、ラストで心に穴を開けられてしまうことも含めて大好きだ。

 しかし、なんども繰り返し観て楽しむには、ラストのえぐみがきつすぎる

 今作は「映画鑑賞後、ず〜っと引きずるタイプの映画」ではなく、唐突に物語を思い出しては「・・・ああ」と小さくくぐもった声でため息をつきたくなる、そんな陰鬱さだ。

 

 「何も好き好んでやらなくても・・・」と思う人も少なくないだろうが、今作を鑑賞して、心にぽっかり穴を開けてみよう。

 面白いぐらい開くよ。

 では。

 

◆本日のおすすめ◆

アル・パチーノ映画といえば、絶対外せません。