『メリー・ポピンズ リターンズ』を観てきた。いい意味でも悪い意味でも、めっちゃくちゃ『メリー・ポピンズ(1964年版)』な映画だった。
※一部ネタバレあり。ネタバレ完全NGな人は、鑑賞後に本記事を読みに来ていただけると嬉しい。
メリー・ポピンズ リターンズ
あらすじ
舞台はロンドン─ミステリアスで美しい魔法使いのメリー・ポピンズが、母を亡くし、ピンチに陥った家族のために突然空から舞い降りた。ちょっと“上から目線”でエレガントな彼女の魔法によって、家族が再び希望を取り戻し、更なる困難に立ち向かって行く様子を描く。
舞台は大恐慌時代のロンドン。かつて魔法使いメリー・ポピンズに世話されたバンクス家の長女と長男も立派な大人になっている。そんな彼らの前に再びメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)が風に乗って舞い降りる。20年前と同様にバンクス家の子どもたちの世話をしに来た彼女。魔法を使い、バンクス家の子どもたちの “しつけ”をはじめる。
メリー・ポピンズ(1964年版)そのままだった
1964年版で描かれた時代から20年経っている設定ではあるものの、物語の流れも登場人物のキャラクター設定も、ほぼ1964年版そのままだと感じた。
家族がピンチになる→不思議な教育係がやってくる→子供の心を掴む→街へ繰り出して不思議な登場人物と出会う→子供と大人の間に衝突が起こる→魔法で切り抜ける→家族の心が一つになる→メリー・ポピンズが去る・・・
大雑把な流れ(↑)ではあるが『メリー・ポピンズ(1964年版)』も『メリー・ポピンズ リターンズ』も流れがほぼ一緒である。
(↑)1964年版のメリー・ポピンズ。
家族構成や登場人物に変化があれど、キャラクターの癖の強さは旧作もリブート版もあまり変わらない。
過去に上映された作品のリブート版は、ガラリと内容を変えすぎても、まんま過ぎても叩かれる印象があるが、今作は本当に”いい意味でも悪い意味でも”そのまんまだった印象だ。
観やすい映画ではあったが、心揺さぶられるほどの感動はなかった(個人の感想ですよ)。
耳に残る楽曲はない
誤解してほしくないが、わたしは『メリー・ポピンズ リターンズ』が”嫌い”なわけではない。1964年版そのまんまだと感じつつも、それ相応に楽しく鑑賞した。
しかし「メリー・ポピンズといえばこれ!」という有名な楽曲「チム・チム・チェリー」や「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」のような、1発で耳に残る楽曲はないと感じた。
ただ「耳に1発で残らない」と思っただけで、曲が素敵じゃなかったわけでは決してない! こぶしのきいた「ロイヤルドルトン・ミュージックホール」はかっこいいし、「愛しのロンドンの空」は予告編でも多用され、印象には残っている。
・・・が、「何度聞いても耳に残らんな〜」というのがわたしの感想である。
今作で登場する楽曲は、気軽に口ずさむことができない。なので、ミュージック映画としては力が弱いのではないかと考える。
エミリー・ブラント演じるメリーがダークすぎる気がする
また『メリー・ポピンズ リターンズ』鑑賞前から思っていたことなのだが、エミリー・ブランド演じるメリー・ポピンズは少々雰囲気がダークすぎるのではないだろうか。
ジュリー・アンドリュース演じるメリー・ポピンズは、確かに今作同様ちょっぴり”上から目線”な発言もあるし、教育係らしく子供たちを叱るシーンだってある。が、彼女が演じると柔らかい優しさが感じられる。
出典元:Julie Andrews - MARY POPPINS / メリー・ポピンズ 1964 - YouTube
一方エミリー・ブラントが演じると、教育係としての側面より魔法使いの雰囲気が強まり、「魔法の力で物を言わす、目元がセクシーなお姉さん」という印象になってしまうのだ。
これはわたしがエミリー・ブラントの三白眼気味な目を「セクシーで強い」と感じているからかもしれないが・・・にしたって魔法使いのダークな一面が前面に出てしまっている。
ちょっとキャラクターとして「こ、怖い」または「つ、強い」と感じさせる雰囲気があり過ぎて、映画鑑賞中ほんわかしにくかったな〜という印象だ。
街灯点灯夫ジャック大活躍
出典元:ジャック|メリー・ポピンズ リターンズ|ディズニー公式
しかし旧ver.でも新ver.でも大好きなキャラクターとして浮上するのが街灯点灯夫のジャックである。『メリー・ポピンズ』を観るたび、一番歌を歌い、一番活躍しているのはジャックなんじゃないかと思っている。
ジャックが歌うオープニングとエンディングはとても清々しく、聴いていてとても気持ちがいい。街灯点灯夫の仲間たちと踊るシーンは、1964年版の映像とダブったものの、とても楽しそうで気分が盛り上がる。
彼が登場するシーンはどのシーンも雰囲気が朗らかになるので、かなり魅力的なキャラクターなのではないだろうか。
彼がメリー・ポピンズや子供たちを自転車の荷台に乗せて走るシーンでは、いち観客でしかないはずのわたしもつられて笑顔になってしまった。直後我に返ったわたしは「ジャックのほんわかパワー、すげえ」と思った。
映画の世界に感情を引っ張りこめるジャックというキャラクターはすごい。メリー・ポピンズご本人より、ジャックファンの方が実は多いのでは・・・?
いい意味でも悪い意味でも
いい意味で、とても観やすい映画だった。悪い意味で、1964年版『メリー・ポピンズ』まんまやんけと思った。そんな『メリー・ポピンズ リターンズ』。
すごく評価が難しい映画だ。
テレビ放映はしやすいと思うし、老若男女にも受け入れやすい映画だろう。純粋に楽しめる。しかし”普通に”面白い映画だとは思うが、「うおお、鳥肌・・・!」みたいな感動作だとは思わない。
わたし個人は「好きでも嫌いでもない」という感想を抱いたが、それって映画的にどうなんだろうか。
最後におまけの話。
一緒に鑑賞してくれた夫はメリー・ポピンズを「チートな魔法使い」と呼んでいた。ピンチに必ず助けてくれる、なんでもできる魔法使いという設定が微妙に合わなかったらしく、彼女に対して少し苛立っていたのが面白かった。
では。
◆本日のおすすめ◆
個人的にはジュリー・アンドリュース版の方がキャッチーという印象。