でも、本作が宣伝を一切せずに上映したことを重視して「一切の事前情報なしに鑑賞したい」という人は引き返してくださいね。
物語のネタバレはしないけれど、素直な感想は書くから。そこから、物語というか映画というか、あの大ベテランの映画監督が描きたかったことが推測されてしまうかもしれないし、なんせ私は決してこの映画に肯定的ではないから。
では、感想をば。
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私はこの作品を「宮崎駿総集編」だと思った。
ジブリ作品のファンではないけれど、ジブリ作品を観ることは一種の教養な気がしていて、そういう理由で、新作が発表されるたびに観てきた。
だからこそ、総集編に感じられた。
観たことのある画が続くのだ。
観客にほとんど説明することなく、突然非現実的な展開に引き摺り込まれる感じ、それ自体は好感をもっているのだけれど、観る画、観る画が既出のものばかりに感じられた。あの映画のあの描写が監督のお気に入りなのかなあ……なんて思いながら観ていた。
彼なりの遺書みたいなもんなんだろうか、この映画は。自分の死が近い、近いっつっても余命の話ではなく、現役引退の話というか、もう終わりなんだよ、これで、みたいな。終わりなんだよ、というか終わりにしたいのかな、のような。言語化がとても難しいが、色々な意味で終わりを感じた映画だった。次に進むための区切り。
映画館で夫と話したが、庵野秀明の映画に少し似ていた。構成もだけど(夫はエンドロールで米津玄師が流れた時、一瞬「あれ?この映画、庵野作品だっけ?」と戸惑ったという)、なんかこう、自身が解放される話を描いてるなーと思った。庵野さんはシン・エヴァで、宮﨑さんは本作で。
別にいいのだけれど。
映画としては面白い。
やっぱり見入ってしまう描写だったり、訴えたいことだったりはしっかりと伝わってくるから、面白い映画ではある。けれど、果たして本当にこの作品のタイトルは『君たちはどう生きるか』なのだろうか、とも思ったり。もう一度観ますか?と問われたら、いや、観ないかなって映画、私にとっては。
観てない人に配慮したら、消化の悪い文章になってしまった。
しかし、映画としては決してつまらなくないのに、人に勧めるかと問われると別に……と感じてしまう、そんな映画だったというのは、すごく、なんだか、難しい話ですね。面白いってなんだろう。
映画館で鑑賞して面白かった出来事は、ある程度の時間が過ぎた頃、観客の何人かの集中力が徐々に切れていくのが感じられたこと。集中力が切れてしまった理由が、先で述べた既出感が原因かどうかはわからない。
映画館の好きなところ(舞台が好きなところでもあるけど。空間を共有する体験の醍醐味)は、映画を楽しみつつ、映画を観ている観客の空気にも触れられるところだと思っている。
そんで、本作では、一部の観客の心が少しずつ集中できなくなっていったのを感じていた。物語が後半戦に入る頃にものを落とす音やゴソゴソと座り直す音が増えた印象があった。これは「その人のみぞ知る」ことなので、偶然だったのかもしれないけど、私はそう推測した。
おしまい。
(とかいいつつ、映画の余韻は残っているから、そこはやっぱり天下のジブリなんだろうな。漫画版『風の谷のナウシカ』は読みたいと思っている。)