こんにちは、齋藤吐夢です。
ようやっと観れました。先日『ビガイルド』に出演するコリン・ファレルの記事を書きましたが、書いた通り、かっこいいのかよくわかんないのにエロい。そしてコリンが超”小者”だった。
厭〜な気分になる良い映画でしたよ。
終始緊張感の漂う、抑圧と解放の映画
抑圧と解放って言っても、それは決して政治的な意味合いじゃない。
どちらかと言えば男性と女性による生物学的な本能と理性のせめぎ合いって感じで。それも解放感あふるる解放ではなく、抑えきれない本能が漏れ出してくるかのような・・・。
ざっくりとあらすじ
舞台は南北戦争真っ只中のアメリカ。帰る家のない女生徒と先生2人がひっそりと過ごす女性寄宿学校。
生徒の一人がきのこを摘んでいる途中で、敵の負傷兵を見つけ、彼を助け出します。敵とはいえ、敬虔なクリスチャンである彼女達は、キリストの教えに従い、彼を匿い手当をします。
女性しかいない寄宿学校へやってきた男性に少女達は好奇心を抱き、色めき立ちアプローチする女子もいます。回復した男性は、庭師としてこの学校に留まろうとしますが・・・
女性陣の緊張感が半端ない
この映画、美しい女性陣が織り成す”ただならぬ緊張感”がたまらない。
一時期マウンティング女子、互いを牽制し合う女のドラマが流行っていたようだが、『ビガイルド』で行われる牽制は、緊張感を伴うため、笑えない(もちろん私達は観客でしかないから、「笑えない(笑)」と笑うことはできる)。
しかし彼女達の牽制はエンターテイメント的なものではない。緊張感を伴う、耐えられない人には絶対に耐えられない、胃のキリキリする牽制だ。
「本気かよ・・・」的な牽制を味わえるので、女同士のヒヤヒヤを味わいたいなら絶対『ビガイルド』である笑。
好奇が生み出す嫉妬が生々しい
女性寄宿学校には女性しかいない。男性経験のない女性陣(先生2人は多少ありそうだが、そのうち1人はまだなのでは?)のところにやってくる男性。好奇心がそそられるのは当たり前とも言える。
ただ女性陣全員が1人の男性に好奇心を抱いたことによって、女性陣同士が互いに互いを牽制し、男性があろうことか「君が1番」的なことをほざきまくるため笑、学校全体に嫉妬心が充満していく。
この、生々しい厭さよ笑。
エドウィナVSアリシアに注目
特に注目してほしいのが、キルスティン・ダンスト(↑)演じるエドウィナと、エル・ファニング(↓)演じるアリシアの静かなるバトルである。
つったって2人が直接的に男を取り合うというよりは、コリン・ファレル演じるマクバニー伍長が色々2人にアプローチするのも原因の一つなのだが、
- 瞬き
- 目を伏せる
- ちらりと相手を流し見る
の3点だけで、2人がマクバニーを取り合っているように感じられるのだから恐ろしい。
特にエル・ファニング演じるアリシアは女生徒の中でも一番お姉さんで、男くらい知りたい年代だろう。そうなったら年の近いアリシアVSエドウィナの生々しさも増すってもんである。
コリン・ファレルがマジ小者
で、『ビガイルド』で注目すべきは実はコリン・ファレルなのであって。
ムカつくけど私、多分、この俳優さん好きだ笑。顔が全然タイプじゃないけど、見惚れたのを認めるよ。ああ、ムカつく笑。
序盤から「こいつ・・・」感が出る
コリン・ファレル演じるジョン・マクバニー伍長。怪我をしているところを女生徒に発見され、連れてこられてから早い段階で、彼なりの生き残り作戦を実行する。
ま、敵地に匿われたわけだから、見つかれば死ぬわな。だから生き残り作戦を実行する。
それが要するに、女性陣全員に好かれよう作戦である。
ただこの作戦と彼の本性が、映画の観客にしか分からないように表現されるから、絶妙にムカつく笑。甲斐甲斐しく世話をしてくれた先生が立ち去った瞬間に「・・・ふっ」と成功を確信したのか鼻で笑ったり、寝転んだまま頭の上で手を組んだり・・・
絶妙にムカつくのだ笑。
漂う男性のエロスと怖さ
それでいて「コリン・ファレルってすごい」と思ったのは、作中ボサボサだった髪の毛を整えたり、ヒゲを剃るだけで「ん・・・ちょっとかっこいい?」となるのだ。やめてくれ〜、苦手なタイプのままでいてくれ〜、エロスを見せつけないで〜笑!
突如として漂うエロスに、登場人物の女性陣でなくとも、ちょっと色めき立つ笑。あの男性”らしさ”全開のダダ漏れエロスはやばい。
だがそれと同時に、エロスと共に漏れ出してくる”暴力性”が怖い。
庭師として働くことで、この学校に匿われ続けようとするマクバニー。そんな彼の庭師としての働きっぷりが不穏さを感じさせる。
力強く土をすき込み、木の枝をバッサバッサと切っていくマクバニー。ただその動作から感じられるのは、頼り甲斐のある男性像ではなく、人を屈することのできる暴力性なのだ。
ただ根っからの”悪”ではない
ただまあ、先に言っておくが、時は南北戦争真っ只中のアメリカである。戦争真っ只中である。彼は決して根っからの悪ではない。
生き残るためには何でもする、何でもしてやるってだけの男だ。
映画を見終え、ゾクゾクし、思い返すたび、「私も同じ立場で、性別が違えば、ああいうことをして生き残ろうとする可能性は否めない」と思ってしまう。
自業自得的なラストが待ってる
とはいえ彼の場合、状況と場所が悪かった。
所詮「好かれよう作戦」は「心の底から好かれたい」訳ではなく、うわべだけの作戦だったから、彼はどんどん自分の首を締めていくことになる。物語のネタバレはしないが、男の力、いわば暴力は、女性の結託、信念の曲げなさには勝てないのだろう。
ひっそりと厭な気分になる
男性陣がこの映画を観て、女性嫌悪に陥るのか、それまた「いや、これは伍長が悪いっしょ」となるのかは、一緒に鑑賞し意見交換をしない限りは分からない。
今回付き合ってくれた夫の場合。
映画鑑賞中、ものすごくソワソワしていた。女性同士の嫉妬がなかなかゾワゾワしたそうで、横目で私のことをチラチラ確認しながら鑑賞していた模様(私、怖くないよ笑!)。そんな夫が発した言葉が「コリン・ファレルの役が”小者”」です笑。
最高に面白い映画だと思うが、ひっそりと厭な気分になる映画であることは否めない。本能と理性の抗い合う姿、男女間における恐怖を味わいたい、味わねば、と思った時にしか観れない。万人ウケはしない。ホラーよりホラーかもしれない。
それでも私はあなたに勧めたい。
では。
◆本日の一本◆
これ(↓)のリメイク作品なんですってね。