こんにちは、齋藤吐夢です。
私はゲイ映画が大好きです※。なかでも『シングルマン』はダントツで好き。
ただこの映画は、ゲイ映画かどうかは重要ではなく、”生きる”を知ることができる、美しくも儚い物語に注目していただきたい。
人生で一度でも「死にたい」と思ったことがある人は必見。
※「ゲイ映画」という表記自体が差別かもしれない、とも思っています。でも、同性だろうが異性だろうが「愛すること」への嫌悪感は抱いてない、ということをお伝えしておきたい。
『シングルマン』で”生きる”を知る
『シングルマン』を観たきっかけは、俳優コリン・ファースだ。映画『キングスマン』で認知している人も少なくないだろう。コリン・ファースが好きなので、もちろん『キングスマン2』も観に行った。
観終えた後「コリン・ファースなしでは撮れない」と思った。
その一方で、彼のことを知らない人にも観てほしいと思った。この映画が初監督作品だったデザイナーのトム・フォードのことを知らなくても構わない。いっそ「映画」という娯楽に詳しくなくてもいい。
冒頭で述べたように、人生で一度でも「死にたい」と思った人は観るべきだ、と思った。
孤独になった男の最後の一日
コリン・ファース演じる主人公は同性愛者で、8ヶ月前に最愛の恋人を亡くしている。虚無感が彼を襲い、その日、彼はピストル自殺することを決心する。自殺を決意した男の最後の一日を描いた作品である。
最後の一日を送るはずだった彼の目に映る世界は、ものすごく明るく美しい。
教え子の熱い視線や、隣に住む少女の柔らかな肌とワンピース、かつて恋人関係にあり、今は親友の女性と過ごすディナー・・・そのどれもが、死ぬ前とは思えないほどに鮮やかに映るのだ。
男性も女性も美しく映される
この映画は、何もかも”美しく”演出されている。本当に何もかも。監督トム・フォードは”美しいもの”が好きなのだろう。
彼にはリチャード・バックリーという配偶者がいる※。今考えると偏見だが、私は「男性を美しく撮る人だろう」と思っていた。しかしそれは間違いだ。彼は男性・女性といった性差に関係なく、何もかも美しく演出する。
教え子の隣にいた魅力的な女子生徒も、隣の家の少女も、親友の女性チャーリーも美しい。亡くなった恋人も美しいし、最後の一日に出会う男性も、教え子も美しい。
※
死と生で違う色の演出
私が好きな演出は、自殺を考えている男の目に”生きる”気力が浮かび上がる時の演出だ。
この映画は、オープニングから薄暗い色合いが続く。主人公の目に映るものも、主人公の周りもくすんで見える。しかしそんな彼が”生きる”を感じると、途端に色鮮やかな世界が広がる。
美しい事務の女性の目元、肌、教え子たちの目、煙草を吸う口元、隣の少女の鮮やかな靴、魅力的な男性の手元・・・
目に入った”生きる”を表すものは全て色鮮やかだ。その色が彼の目に広がるたび、彼が死なない未来を願ってしまう。
色の演出に色気がある
主人公の世界が明るく見えた時、とめどない色気が溢れる。
『シングルマン』は驚くほど色気のある映画なのだ。
もちろん色気とは「相手の心を惹きつける性的魅力」なので、人それぞれ感じ方は違うのだろう。ただ私の場合、上品な色気がとめどなく溢れていると感じているため、映画を観終えると、あまりの美しさにため息が出てしまう。
美しすぎるゲイ映画で、こんなにも”エロス”※を知ることになるとは。
※心理学者のフロイトが定義づけた言葉。生の衝動を「エロス」、死への衝動を「タナトス」と定義。『シングルマン』を鑑賞すれば、エロスとタナトスの両方を知ることになる。
”生きる”を体感させられる
何度も言うが、人生で一度でも「死にたい」と思ったことがあるなら観てほしい。
私はこの映画で救われた。”生きること”も”死ぬこと”も儚いものだと思い知らされる。
「ただただ美しいものを観たい」という人にももちろんオススメする。観終えた後、あなたにもため息をついてほしい。美しすぎるものを観ると、人ってため息が出るんだね。
”生きる”を知ってほしい。
では。
◆本日の一本◆
ちなみにここのところ、夜はずーっと映画鑑賞をしている。
色々な動画配信サイトを利用してみたが(いつか記事にする)、映画好きには『U-NEXT』をオススメしたい。使ってみた限り、いわゆる「映画」の数はこれが多いと思う。