こんにちは、齋藤吐夢です。
突然ですが、不倫、許せますか?
私は、多分、許せます。
なぜなら、私自身が旦那さんへ負い目を背負って生きているからです。彼にも伝えていますし、数度ブログでも書いていますが、私の心が揺れ動く男性は他にいます。
『夏を喪くす』
実に都合のいい話だとは思いますが、私のこの負い目をどうにかして肯定できるような、そんなストーリーはないものかと本屋さんで探していた時に出会ったのがこの本です。
原田マハさんの描いたこの作品に登場する女性は皆したたかでたくましく、悲しいのです。
父の強さと男の情けなさについて
「天国の蠅」という物語には、男のもつ情けなさ、しかもそれは第三者から見ればことごとくどうしようもない情けなさなのに、悔しくもそれを少しでも信じてしまう女性の存在がある情けなさがあります。
主人公の父親は借金を背負いますが、ニヤニヤとするばかりで全く頼りがいがない印象です。そんな父とそれに憔悴しきりながらも、その存在がないと張り合いがないような様子を見せる母の姿を見る娘の話がメインになってきます。
どうしようもない情けない、しょうもない、男である父親ですが、それでも、
それでも最後の方に短い文章で、
君のお父さんのようになりたい。
そんな台詞が現れます。もしかしたら、ニヤニヤする以外に表情の作り方を知らなかったただの不器用な男だったんじゃないか、って思わせてしまうような、全く腹立たしいほどの父の強さ、男の魅力。
イライラしながらも、魅力を感じてしまうのです。この父親に。
ごめん、いいの、の対話に覚悟がある
私が特に悲しいしたたかさに惹かれたのがこの「ごめん」というお話しです。主人公の女性は、妊娠できない身体であることが分かってから、別に嫌いになったわけでもない夫と過ごしながらも、不倫を繰り返してきました。
ある日、不倫をしている最中に夫が不慮の事故に遭います。そんな夫の、真面目に主人公を想いやってくれた夫の通帳から見知らぬ相手「オリヨウ様」への入金記録を見つけるところから話は緩やかに加速していきます。
今まで妻を思いやっていた夫の秘密を知った時、それでも主人公は自分の行いのこともあるからこそ、ごめん、いいの、と返事を返すのでしょう。その「ごめん」は夫の言葉ではなく、もしかしたら許されたいと思っている主人公の心が発した言葉なのかもしれませんが。
でもこの、ごめん、いいの、の流れが決して都合のいい話で終えたようには思えないのです。むしろ実は深く思い合っていた夫婦なんじゃないか、これから深く思い合える夫婦なんじゃないか、と思います。
したたかに生きられるなら
私は自分の性別が本当に奇っ怪に思えて、素直に旦那さんと性を介しての付き合いができなくなってしまいました。ただしたたかに生きられるなら、それなら女性という性も全然ありかな、って思うのです。
この本の解説にもありましたが、女性からの反発も生みそうなほど、貪欲な女性ばかりが登場してきますが、自分の感情に素直に従うことのできるこの登場人物たちが正直羨ましい。
素直に生きることのできる人は本当に素敵で。
他表題作である「夏を喪くす」も「最後の晩餐」も、主人公の女性が直面する問題はなかなかに酷です。ですが、彼女らは決してめげないし、あらゆる方向から自分の素直な感情をそのまま活かして進もうとする。
それが本当にしたたかで美しいと思う。
恋心を抱くことは肯定できる
この4編の物語の中で、二人の女性は不倫を、一人は友人への裏切りを慣行しているし、結局のところその相手を失うような結末があるけれども、それでも恋心を抱くこと自体には肯定できると思いました。
その先は本当に自己責任の世界だけれども。
それでも。
では。
◆本日の一冊◆