今作をまだ観ていない人に向けて、「あ、やっぱ観てみようかな」と思えるようなレビューを目指している。が、観た映画の魅力を伝えるためにネタバレもする。
今回はネタバレ多めである。「事前情報なしに映画を楽しみたい」「映画鑑賞前のネタバレ絶対NG」な人は、映画鑑賞後にぜひお越しを。
あとまあ・・・エロいよ(R-18映画だから、18歳未満は観ちゃダメよ)。
『娼年』
あらすじ
主人公の森中領は東京の名門大学生。日々の生活や女性との関係に退屈し、バーでのバイトに明け暮れる無気力な生活を送っている。ある日、美しい女性がバーに現れた。女性の名前は御堂静香。「女なんてつまんないよ」という領に静香は"情熱の試験"を受けさせる。それは、静香が手がける会員制ボーイズクラブ、「Le Club Passion」に入るための試験であった。 入店を決意した領は、翌日から娼夫・リョウとして仕事を始める。最初こそ戸惑ったが、娼夫として仕事をしていくなかで、女性ひとりひとりの中に隠されている欲望の不思議さや奥深さに気づき、心惹かれ、やりがいを見つけていく
引用元:映画『娼年』公式サイト
小説原作の映画らしい「現実では絶対に言いそうもない」台詞回しも登場する。でもそれが不自然に感じられないのは、それら台詞が浮かないぐらい、役者陣が登場人物たちの欲望を丁寧に表現しているからだと思う。
エロい映画だと思ってナメてました
出典元:https://twitter.com/shonen_movie/status/1019956404285681664
女子高校生時代には、原作小説『娼年』の存在は知っていた。多感な時期だったので、めちゃくちゃ興味津々だったのだが、多感な時期だったので、めちゃくちゃ恥ずかしくて読めなかった小説だ。うん、青春だね。
その後、舞台化と映画化の話が耳に入るも、松坂桃李さんのファンという訳ではなかったので華麗にスルー。しかしSNS上で
「ほぼ濡れ場だった」
「松坂さんのお尻がやばい」
「お尻が拝める」
「お尻のほくろが」
という話題で埋め尽くされ、興味を抱く。
かつ、どこかの映画館では「応援上映」が行われたというではないか!濡れ場シーンでドンドンパフパフできる映画ってどんな映画だよ!!!と思いつつ興味は膨らむばかり。
んで先日、とうとう手を出してしまったのだ。
WELCOME、下心!
「どんだけエロいんだよ、どんだけ尻を拝めんだよ」とめちゃくちゃ期待して鑑賞した。確かにほぼ濡れ場だし、一緒に観る相手を間違えればめちゃくちゃ気まずい映画である。それは事実。
しかし、しかしだよ。
エロいだけだと思ったら大間違いだ!!!
リョウの変化に見惚れる
出典元:https://twitter.com/eiga_natalie/status/999938951350636544
まず映画開始直後から、わたしたちは松坂桃李さんのお尻を拝むことになる。
そう、冒頭からいきなりNU☆RE☆BAだ。
出だしから気まずい。そしてまあまあ激しい。
が、主人公・リョウのセックスが徐々に変わっていくのを見ていると、なんとまあ信じられないことに感動してしまうのだ。
彼のセックスは、どこか1人よがりなものから、女性を満たすものへと変わっていく。
描かれているものはセックスだけなのに、リョウの女性に対する心の変化までもが感じられるのだ。女性の欲望を解放するという仕事にやりがいを感じはじめたリョウの目はイキイキとしていく。
この変化がもっとも分かりやすいシーンは、会員制ボーイズクラブに入るための試験だ。訳あって、映画序盤と後半の2回、リョウは試験を受ける。リョウは試験のために同じ相手とセックスするのだが、相手への接し方がガラリと変わっていて感動する。
あらゆる欲望を受け入れるリョウに感動する
リョウのお客として登場する女性陣の欲望が、1人1人異なるのも良かった。少しイレギュラーな性癖の持ち主も登場する。イレギュラーな彼女たちは、欲望が満たされにくいという悩みを抱えている。
リョウは仕事にやりがいを感じているから、抵抗なく彼女たちを受け入れる。
リョウの包容力がすごかった。
彼に全てを委ね、欲望を解放していく女性の姿は本当に美しかった。
もちろんこれは映画で、少し前は舞台で、原作は小説で、どれも現実ではないけれど、きっとこんな風にして解放されたい人は男女問わずいるのだろうと感じさせるほどだ。
途中から、リョウの姿が神々しくも見えてきて驚いた。
劇中で、大学の同級生の恵が「体を売るなんて汚い」と発言するのだが、少なくともリョウと体を重ねた女性はリョウによって欲望が解放され、汚れるどころか美しくなっている。
売春は法律上許されるものではないが、あらゆる欲望を受け入れ、女性たちを解放するリョウの姿に感動してしまった。
恵とのシーン、ツラい人はツラい
映画終盤、彼を秘かに想い、「体を売るなんて汚い」と言っていた同級生の恵がリョウを買い、セックスすることを望む。今までの女性とは違い、欲望のぶつけ方が違う。しかも彼女の根底にある欲望を、リョウは叶えることができない。
純粋にリョウのことが好きで、でも体を売っていることを認められなくて、でも彼がほしくて。欲望でめちゃくちゃの恵のことを、リョウは完全に解放することができない。2人は娼夫と客として体を重ねるが、このシーンは少しも満たされる要素がない。
恵の泣き声がツラい。
多分、このシーン、ツラい人はツラい。
今作では「セックス」が描かれているけれど、自分の欲望が望み通りとは違う形で解放されたときの虚しさを知っている人ならば、このシーンで心がキューっと苦しくなるに違いない。
涙を流すのは恵だけではない。リョウもまた、行為が終わったあと静かに涙を流す。それがまたツラい。
「落ち着いたらさ、またバーに来てよ」
この台詞と、このあと俯瞰で映し出される抱き合った2人が泣いている姿にもらい泣きしてしまった。
というか2人のセックスシーンが虚しすぎてすでに泣いてた。この台詞で第2波である。エロいだけの映画だと思ってたら、めちゃくちゃ泣いてしまった。どうしてくれる!
おすすめシーンをざっくり紹介
個人的に好きなシーンを抜粋した。
わたしの性癖を晒しただけなような気もするが、観たことある人が「それな!」となれば嬉しいし、観たことない人が鑑賞後に「それな!」となれば嬉しい。
- はじめてのお客さんによって、余裕がなくなる松坂桃李さん
- 2番目のお客さんが満たされるシーン
- アズマ君×リョウ君がエロい
- 無邪気に怖いこと言うアズマ君がエロい
- リョウを買った恵が泣いているシーン
なおセックスシーンが滑稽に見える演出も度々あって、それが非常に興味深かった。不思議だよね。真面目なのに笑っちゃうんだよね。裸だからかな。
エロいだけの映画だと思ったら大間違いだ!!!
いや、もちろんエロいよ。
NU☆RE☆BAってふざけないとものすごく恥ずかしくなるぐらいエロかったよ。
でも、満たされることで得られる美しさとか悲しさとか、人間の深い部分が浮かび上がってくるような映画でもあった。ただエロ目的で観るのはもったいないと思った。ものすごくしっかりした、1人1人の欲望に向き合った濃厚な人間ドラマだ。
ちゃんとエロい(?)のも事実だから、エロ目的で観始めるのもいいと思うのだが、リョウと恵のセックスのように、人の心を抉ってくるような描写もそっと添えられているので、人間ドラマが垣間見えてくることを理解したうえで観てね。
アダルトビデオとは全然違うのよ。
では。
◆本日の1冊+α◆
石田衣良さんの原作と、わたしが昔愛読していた『IWGP』シリーズを紹介。懐かしいなあ