歴史分野の編集・執筆に携わってきた著者の「どうして、日本史に登場する女性は少ないのだろう?」という疑問から生まれた1冊。職業、結婚、出産、教育、同性愛、宗教、戦争、ファッション、政治参画、性売買、文学、芸術といったチャプターで構成され、幅広い分野における女性の歴史がまとめられている。
私がこの本を手に取ったきっかけは、本屋に行った時、たまたまこの本が目に入り、パラパラと立ち読みした際に「歴史のはじめっから、女性の生き様は世知辛かったんだろうか」という疑問が生じたからである。
私はこの本を読みながら、度々顔をしかめた。
歴史のはじめっから女性の生き様が世知辛かったわけではない。私が読んで感じた限り、江戸時代あたりから徐々に世知辛くなっていく。もちろん、女性といえども、人それぞれ価値観は違うから「全然この生き方でいいじゃない!」と思う人もいると思うが、私はやはり女性の公的な立場が弱まっていく様は見てられない。女性の公的な立場が、女性ではない人によって弱められていく様は見ていられないのだ。
江戸時代より前の歴史でも、女性の公的な立場が男性よりも弱い場面は記されているが、それでも、武士の一族の代表が女性だったり、夫の死後、夫の家長としての権限を引き継ぐ女性だったりという事例が紹介されている。
ただ、社会の中で支配する者・される者みたいな構図が出来上がった時、統制のしやすさからだろうか、どんどんどんどん女性の立場が弱まっていったことが感じられて、口惜しかった。
「性売買」のチャプターでは、本を読む前にたまたまNHKで放送されていた『グランパの戦争〜従軍写真家が遺した1千枚〜』という番組を見ていたこともあり、より悔しかった。
NHKの番組では、写真家・マリアンが、祖父ブルース・エルカスが残した1000枚もの太平洋戦争の写真を通じて、“祖父の戦争”を辿る。前半は激戦地・硫黄島を主軸に進むが、後半に登場する、占領下にあった進駐兵向け「慰安施設」の内部を写し出す写真に関する場面には心底腹が立った。
それと同じような、腹立たしい内容がp.192〜p.196に記載されている。政府が、女性が性を売ることを公認するおぞましさ(しかも性を売るのは「自由意志」という建前だったが、実際には性売買を管理する者の下に置かれ自由がない状態)。「慰安所」が設置される目的は兵士の性的欲求を満たすため、というおぞましさ(軍人による民間人への性的な暴行を防ぐためだというだろうが、どんな背景であれ、暴力を抑えられない時点で論外だと私は思う)。
立場の不平等さを際立たせる構図に不快感を覚える。
と、まあ、こんな風に、歴史を紐解かれ、読んでいる最中、何度も何度も顔をしかめることになったが、本書の注意点を一つ挙げる。それは、さまざまな観点から日本の女性に関する歴史が紹介されている分、「そ、それはなぜ?」とその内容を深掘りをする前にチャプターが完結してしまうことだ。
歴史にとても興味がある人には、少し物足りないかもしれない。
ただ、この本は、女性に関する歴史についてより深く知りたくなるきっかけにはなると思う。
それから、先で紹介した『グランパの戦争』(NHK総合)もなかなか心抉られるので、NHKオンデマンド等視聴手段のある方はぜひご視聴ください。毎年8月になると、戦争関連の番組が放送されますが、どれも見て損はないです。ショックは受けるけど。