峰なゆかさんの新作『オシャレな人って思われたい!』で笑った。
可愛らしい見栄で笑い、合理的な発想で笑い、「そういうつもりでオシャレしてんじゃねえよ」という峰節で笑い、とにかくめちゃくちゃ笑顔になれるエッセイである。
なおわたしは自分に自信をもった。
自分らしく楽しむオシャレを取り戻したい人(男女問わず)必見である!
オシャレな人って思われたい!
峰なゆかさんは、アラサー女子の本音満載の4コマ漫画『アラサーちゃん』でおなじみの漫画家である。
単行本『アラサーちゃん』内のノンフィクション4コマ(峰さん自身の話を描いた4コマ)が面白いのだが、『オシャレな人って思われたい!』はそんな峰さんの生々しすぎるオシャレ感がダダ漏れの1冊なので、『アラサーちゃん』ファンにおすすめというよりは峰なゆかファンにおすすめの1冊と言える。
峰なゆかさんが愛おしい1冊
峰なゆかさんの自虐(?)はきちんと自虐なのだが痛快で、自信があったりなかったりと行ったり来たりする姿が愛おしいと感じる。冒頭の1文を以下に引用する。
この連載の中で私はオシャレな人だと思われるために、高くてオシャレなファブリックコンディショナーのボトルにスーパーで買った安い柔軟剤を詰め替えて使う術を書いたり、〜デリケートゾーンの黒ずみとの攻防戦を書いたり、それって全然オシャレな人のやることじゃなくない!?今こうしてオシャレについて右往左往している自分を書いていること自体がまずオシャレじゃない!!という矛盾!
今作で書かれている内容は上記に書かれている内容の通りである。オシャレかどうかで言えば、多分オシャレな部類ではない。タイトルの通り「オシャレな人って思われたい!」人のためのオシャレ術であり、生粋のオシャレではないのだ。
「オシャレなハンドソープをプッシュすると中から出てきたのが薬用石鹸ミューズで驚愕する女性」の挿絵を見つけたとき、わたしは笑った。
可愛らしい見栄が連発する。
勝手な印象を話すが、峰なゆかさんの宣材写真をはじめて見たとき、その佇まいに「かっこいい女性なんだろうな・・・」と思っていたのだが、可愛らしい見栄を連発する今作を読んで愛おしくなってしまった。
世の「オシャレな人って思われたい!」人たちが、こんな風にして努力しているのであればそれはものすごく愛おしい。
大して努力もしない人に比べたら、彼女たちのほうが絶対に魅力的だ。この本は、陰ながら努力を続ける魅力的な人々を描いた本なのだ・・・!
センスが一致するとは限らないが、自分らしさは取り戻せると思った
ただAmazonのカスタマーレビューに「確かになあ・・・」と思うレビューもあった。例えば、ある人は
筆者のセンスが独特で、バブル、海外セレブ、アバンギャルドといった感じのファッションがお好きなようで、それらを礼賛する内容が多いです。
と書いていた。確かにそうだ。わたしは峰さんが振り返る過去のファッションとは正反対の格好をしてきた女だ。かつてギャル系ファッション・メイクが流行した頃、わたしはTHE・隠キャだったのでメイクなんててんでしたことがなかった。
峰さんの書く「マスカラを重ねれば重ねるほど強くなれる気がした」のような描写にはピンとこない。彼女のセンスにピンとこない人はまあまあいると思う。
共感できるできないはあると思います。
しかし、しかしだよ。
彼女のセンスに合致しなかったとしても、自分の中に確固たるこだわりがあるのだとすれば、自分らしさを取り戻す1冊としては魅力的なのではないかと考えた。
「俺はスニーカー”で”いいんだよ」というページは秀逸だ。
『アラサーちゃん』に登場するキャラクターのような男性が登場し、ヒールを履いた女性に対して「(俺とのデートにわざわざ)ハイヒールなんて履かなくていいんだよ?」というニュアンスの発言が描かれている。
その言葉に対して峰さんが描いた女性キャラクターは「なぜあなたのために履いたと思っている?」と彼を怪訝な目で見つめている。このページはとにかく痛快なので、ぜひ読んでいただきたい。
オシャレは自分のためである。
確かに・・・オシャレや美醜は、他者から認識されて成り立つものなのかもしれない。しかし結局は、自分のためのものである。
例え峰さんとセンスが違ったとしても、自分らしさを取り戻すにはもってこいの1冊だと考える。
自分らしく楽しむオシャレを取り戻す
なおわたしは峰さんほどオシャレに興味はない(興味ないと言いたくないが、お洋服購入の優先順位はすごーく低いので「オシャレに興味がある人」ではないと思う)。
峰さんのような可愛らしい見栄も、貪欲なファッションへの姿勢もないが、わたしにはわたしなりに、自分らしく楽しむオシャレが存在する。例えば「すべすべ素肌の維持」や「1つのお洋服を大事に着る」などだ。
「オシャレな人って思われたい!」という表題と一字一句同じ理念はないが「魅力的って思われたい!」ぐらいは思っている。
そして今作で炸裂する峰節で笑いながらも、「魅力的って思われたい!」という思いに自信をもった。自分の気分が上がるなら、多少の見栄は張ってやる〜とも思った。わたしの場合は例えば・・・シャンプー・コンディショナーだけはロクシタンにするとかかな。
とにもかくにも元気になる1冊である。
昨今、合理的で楽チンなTHE・無難ファッションがよく目に入る。その合理的なファッションや価値観で自信を持てるならいいが、それにワクワクしないようなら「ダッセ」と言われてもいいから好きなものを着たほうが気分がいいんじゃなかろうか・・・そんなことを読了後に思うほど、自分の「好き」で満ち満ちた1冊で元気が出た。
自分らしく楽しむオシャレを大事にしたい人は、ぜひ読んでみてね。
では。
◆本日のおすすめ◆
峰さんのコミックエッセイ、これも好き。
いろんな価値観を知ることができるよ!