私はこの本を一生大切にすると思う。
暇と退屈について、人類史、歴史、経済史的な観点から検討し、後半では哲学的にその問題を扱いながらも生物学的視点からも暇と退屈を紐解く。あらゆる学問とのつながりを感じる多角的な視点に、読んでいてとてもワクワクした。
人生に悩む、生きるのが苦しい、そんな人こそ読んでほしい。決して、そんな人々に優しく寄り添う類の本ではないが、けれど確かに生きるヒントをくれる。
著者が結論で述べているように、この本は、この本を通読することでしか得られないものがある。
結論の一部を引用したところで、やっぱりその人自身が最初から最後まで読み切らないと真意が伝わらないというところにもワクワクさせられた。
私の解釈だけれど、この本は「人間」について投げかけられる著者の言葉を、自分がどう理解するか、受け止めるか、それをどう糧にしていくかに面白さが詰まっている。
私は生物に興味があるので、第6章 暇と退屈の人間学は非常にワクワクした(ワクワクという表現をもう3回も使ってしまった。けれど語彙力を失うぐらい心揺さぶられる本なのです)。
そこで紹介されている理論生物学者ヤーコプ・フォン・ユクスキュルの提唱した「環世界」の概念、“すべての生き物は別々の時間と空間を生きている”というもの、が私は大好きだ。
ヒトから見て、カタツムリはゆっくり動いて見えるが、彼らから見れば、我々が凄まじい速さで動いているのかもしれない(無論これもヒトに夜想像であって実際はどうしたって理解できない)。
このような各々の時間、空間の認知が起こる環世界を人間も動物も移動できるのだが、人間は高い移動能力を持っているから、1つの環世界に浸ることができずに退屈になる、という内容に私は興奮した。実はめちゃくちゃ興奮した。
この章で、私はあらためて「人間」への興味や疑問がわいた。
それもまた、結論で登場する著者が見出した結論の実践だと感じた。