小野雅裕著『宇宙に命はあるのか』が、ロマンに満ちていて面白い!!!

宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 (SB新書)

 高校生の時、担任から「齋藤(旧姓)さんは文系に進んだほうがいい」と言われた。でもわたしは「好きなものが理系にしかないので」と理系に進んだ。担任が予測した通り、わたしの頭はどちらかと言うと文系だったけれど、理科がとにかく好きだった。

 理科・数学センスはないけれど、理科が好きだ。

 中でも特に宇宙の話題は胸がときめく理解しきれないながらも、憧れの領域だ。そんな領域に関して、ロマン溢れる本を見つけた。

 小野雅裕著『宇宙に命はあるのか』である。

 

 

宇宙に命はあるのか

概要

本書は、NASAの中核研究機関・JPLジェット推進研究所で火星探査ロボット開発をリードしている著者による、宇宙探査の最前線。「悪魔」に魂を売った天才技術者。アポロ計画を陰から支えた無名の女性プログラマー。太陽系探査の驚くべき発見。そして、永遠の問い「我々はどこからきたのか」への答えー。宇宙開発最善園で活躍する著者だからこそ書けたイマジネーションあふれる渾身の書き下ろし!

背表紙より

 この本の前半戦は、宇宙全体の物語というより「宇宙に携わる人々の話」である。人の飽くなき探究心がバシバシと伝わってくる。一方後半戦は、誰しもが一度は考えたであろう「地球外生命体」等に関する内容で、これまたロマン溢れて面白い。

 

ロマンに満ちていて面白い

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宇宙開発で活躍した人々の秘話

 第1章で描かれる「ロケット開発に携わる人々」の姿は実に人間的だ。宇宙への執念に満ちている。特に印象的なのはフォン・ブラウンという人物についての記述だ。

 ”人類を宇宙に導いた最大の立役者”であるフォン・ブラウン

彼がいなければ、人類の宇宙への旅はもしかしたら五十年、百年遅れていたかもしれない。

 そう評されるほどの偉大な立役者だが、当時、ロケットに並々ならぬ興味を抱いていたのは宇宙にときめく青年たちだけではなかった。軍もロケットに興味を抱いていた。宇宙ではなく、爆薬を積んで敵国に放てば、それはミサイルとなる。

 ナチスドイツはミサイル開発のためにフォン・ブラウンを買った。フォン・ブラウンのロケット開発という夢とともに彼を買ったのだ。フォン・ブラウンも「夢を叶えるためには金が必要だ」と考え、軍に雇われることに迷いはなかったという。

ヒトラーフォン・ブラウン。二人の男は全く違う夢をもっていた。だが、夢を実現する手段がロケットであることは同じだった。そして夢の実現のためには手段を選ばないのも同じだった。ヒトラーは戦争に勝つためにフォン・ブラウンの技術が必要だった。フォン・ブラウンは宇宙へ行くロケットを作るためにナチスの金が必要だった。利害関係は一致した。

引用元:第一章 幼年期の終わり p.38『宇宙に命はあるのか』

 この「夢の成功のために手段を選ばない」というフォン・ブラウンの選択にゾクゾクする。科学者の発明や発見には、常に負の面が存在するように思える。それがいかにも人間らしくて、ゾクゾクする。

 フォン・ブラウンは、ロケット開発が成功したことを喜んだようだが、ミサイルとして発射されたそのロケットが、ロンドンの街中へ突っ込み、3歳の女の子を含む3人を殺したとき

「ロケットは完璧に作動した……間違った惑星に着陸してしまったことを除いては」

と漏らしたという。

 フォン・ブラウンは戦争が終わったあとも、したたかにロケット開発を続ける。アメリカ初の人工衛星に携わるなど、宇宙開発の最前線にい続けるのだ。しかし彼が開発したミサイルを思うと、複雑な気持ちになる。

 彼の執念は宇宙開発を進めたが、彼の選択は戦争と深く関わっている。

 

 フォン・ブラウン以外にも、第1章に登場する人物は人間味があって面白い。歴史的背景が理解できている人、また学ぶ意欲がある人であれば、宇宙開発によりいっそう興味が湧くはずだ。

 

地球外生命体に関する考察

 第5章の話題は「宇宙人」だ。

 科学は面白くて、「いない」と答えるためには”いない”ことを証明しなければならない。本書で著者の小野さんも、こう答えている。

宇宙人はいるのだろうか?

いないはずはない、と僕は思う。仮に惑星が知的生命を宿している確率を、日本人が東大に入る確率(0.1%)としてみよう。すると、我々の銀河系には数千億の惑星があるから、その中の数億に文明がある計算になる。では仮に、それを人がノーベル賞を取る確率(0.00001%)としてみよう。それでも我々の銀河には数万の文明がある計算になる。

引用元:第五章 ホモ・アストロム p.208『宇宙に命はあるのか』

 加えて面白いのが、その「あるかもしれない」地球外文明が、地球人の文明より圧倒的に進んでいるということ。

もし仮に、ある文明の誕生が、一三八億年の宇宙年齢に対してたった百万分の一、0.0001%だけ、地球文明より早かったとしよう。するとその文明は一万年強も人類より進んでいる。

引用元:第五章 ホモ・アストロム p.209『宇宙に命はあるのか』

 宇宙の時間スケールは独特で、わかりやすい例でいうと、わたしたちの見ている星の光は昔の光だという話がある。昨日見た星の光は、昨日の光ではなく、何千年、何万年も前の光なのだ。この時間スケールで考えると、「あるかもしれない」地球外文明は地球よりはるかに発達している。

 映画等で想像されるような「地球侵略」は、文明の発達した彼らからすれば何の利点もないのでは?とまで書かれていて面白い。もちろん記述されている内容は仮説でしかないが、考えてみれば、宇宙人の存在はロマンだが、現実的ではないのだ

もしかしたら、地球が危険だからかもしれない。血なまぐさい殺し合いを数千年にわたって繰り広げてきた銀河史上最も野蛮な種族が、その征服欲を一向に抑えられぬまま急速に技術を発展させるのを、宇宙人たちは戦々恐々としながら見ているのかもしれない。

もしかしたら、地球文明があまりにも原始的なため保護の対象になっているのかもしれない。(中略)地球は銀河ユネスコの「保護文明リスト」に登録され、接触が厳しく制限されているのかもしれない。地球人に見られてしまったUFOのパイロットには、帰還後に重い罰金が待っているのかもしれない。

引用元:第五章 ホモ・アストロム p.241~242『宇宙に命はあるのか』

 上記のような仮説は他にもあって、そのどれもユニークで納得できるものばかりだ。もしかしたら本当に「地球にしか生命体はいないのかもしれない」という仮説もある。いずれにせよ、地球外生命体・地球外文明を追い求めることのロマンは伝わってくる

 

遠い遠い世界の話

 宇宙に携わる人々の物語と、まだまだわかっていない領域の多い宇宙に対するロマンを、『宇宙に命はあるのか』を通じて知ってほしい。

 この本を読むと、以下のニュースがよりいっそう身近に感じられる

 「ファーアウト」という愛称が名付けられた準惑星は、太陽から最も遠く離れた太陽系の天体だ。太陽からの距離は、地球と太陽の距離の100倍以上。そもそも地球と太陽の距離が1億4960万kmという途方もない距離なのに、その100倍以上て・・・である。

 太陽の周りを1000年以上もかけて公転する「ファーアウト」。内容のスケールがでかすぎて、もはや素人目にはそれがすごいのか何なのかすらわからなくなりかけるニュースだが、「遠い遠い世界の姿を捉えた」と考えると胸が熱くなるのは確かだ

 

www.cnn.co.jp

 

宇宙はワクワクする

 『宇宙に命はあるのか』はときめく。心が童心にかえったかのようにワクワクする。

  • 宇宙について詳しく知らない
  • 宇宙の話題に興味はあるけど難しそう

という人ほど読んでほしい

 著者・小野雅裕さんの書き方は、どんな世代にもわかりやすく、宇宙について説いてくれる。小難しい話は一切抜きにして、宇宙のときめく部分だけを紹介してくれる。

 小難しい話も宇宙を知るためには必要かもしれない。でもまずは、宇宙に対する興味・関心を引き出す方が大事だ。必要な知識に対する抵抗は、興味・関心が補ってくれるものだ

 小野雅裕さんはフォン・ブラウンや宇宙人の話の中で、宇宙に対するロマンを存分に引き出してくれる。足りない知識は自ずと学びたくなってくるはずだ。

 少しでも宇宙に興味を抱いたら、導入として今作を読むことをオススメする

 そのぐらいオススメ。

 ときめきましょう、宇宙に。

 では。

 

◆本日のおすすめ◆

見てほしい写真集がある。

遠い遠い星と、小さな小さな物質の写真。宇宙と原子がどこか似ているだなんて、ロマンじゃない?