今こそ国語力を見直したい。齋藤孝『頭のよさは国語力で決まる』(大和書房・2021年)

頭のよさは国語力で決まる (だいわ文庫)

はじめにパラっと立ち読みした際、小・中・高の国語の教科書に掲載されたなじみのある名著の解説に心惹かれ、読むことを決めた。

 

“国語力”とは、現代文・古文・漢文を読み解く力のことだと思っていたが、本著が扱うのは日本語の読解力や文章力、表現力ばかりではない。日常的な会話や生きる心構えにも話が及ぶ。

だが、いわれてみれば、“国語”とは私たちが日頃使っているコミュニケーションの一つであり、学問としての言葉に限る話ではない。そして、いずれも著者の造語である「積極的受動性」が物を言うのだと気づかされる。

書かれたことを理解するためには、「なぜ?」といった言葉の意味を捉えようとする積極性をもって読むことが重要だし、対話の場面では、まず聞くことこそが相手への理解を深めるために重要だ。

 

上記を鍛えるために、ぜひとも取り組みたいと思ったのは32ページから紹介されている「翻訳書を読む」という行為。翻訳書は、英語という異なる言語、更には異なる文化をも日本語に訳したものといえる。

そもそも話し言葉とも違うから読み慣れず、読むのに苦労するのは事実だが、“言っていることが難しそうでもきちんと筋が通っている海外の知的な文章”はていねいに読んでいけば理解できるはずで、この行為に向き合うことは「意味をとらえる力」を鍛えることにつながる。

自身にはこの能力が足りていないと痛感させられたし(翻訳書の読みにくさに困惑して積読になってしまった本があるから)、自分の仕事(文筆業)をブラッシュアップしていくためにも重要な訓練だと思えた。

 

純粋に、紹介されている名著が読みたくなる本でもある。国語の基礎固めに改めて取り組もうと思えた。