『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観てきた。ストーリー展開や魅力あるキャラクターは「さすがディズニー!!!」と叫びたくなる面白さだった。
でもそれと同時に、時代の流れに切なくなった。
※一部ネタバレあり。ネタバレNGな方は、鑑賞後に読んでいただけると幸いです。
シュガーラッシュ:オンライン
あらすじ
人間たちが知らないゲームの裏側の世界を舞台に、アーケードゲームのキャラクターである悪役ラルフと少女ヴァネロペの冒険と友情を描いたディズニーアニメ「シュガー・ラッシュ」の続編。好奇心旺盛なレーサーでプリンセスのヴァネロペと、心優しい悪役キャラクターのラルフは大親友。ある日、ヴァネロペが暮らすアーケードゲーム「シュガー・ラッシュ」が故障し、廃棄処分の危機に陥ってしまう。シュガー・ラッシュを救うべくゲームの世界から飛び出した2人は、刺激的だけど恐ろしい危険も潜むインターネットの世界に足を踏み入れるが……。
「変化を望まないラルフ」と「変化がほしいヴァネロペ」。親友2人の間に生じる考え方の違いが物語のキモなのだが、絶妙に切なくなる。
時代の流れに切なくなる
出典元:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1074966292262600704
インターネット描写が面白い
まず、切なさを感じたいくつかの描写について語る前に、今作でもっとも魅力的だと感じた「インターネットの世界」の描写について語りたい。
前作同様、ゲームキャラクターたちの世界が面白い。ゲームセンターに並ぶゲームの主電源がターミナルのように描かれていて、キャラクターたちはゲームセンターが閉店するとターミナルに集まり「おつかれ〜」と互いを労わる。
そんな彼らのターミナル(すなわちコンセント)に新たなゲームがつながる。ヴァネロペ達は新しいゲームキャラクターとの出会いをワクワクして待つのだが、そこにつながれたのはゲームではなく「Wi-fi」だった。
Wi-fiの接続によって、ゲーム機ではない世界へ飛び出すことができたヴェネロペとラルフが見るのは、めまぐるしいスピードで変化を続けるインターネットの世界だ。
パソコンやスマホを通じてインターネットを利用する”人間”の顔を模したアバターがインターネットの世界をちょこまかと駆け巡る。クリック型広告を押せば、乗り物に乗せられ、その広告エリアへと連れて行かれる。
前作『シュガーラッシュ』で登場するキャラクターの比にならないほど大量のキャラクターが登場し、猛スピードでさまざまなエリア、場面へ切り替わる。
この情報量の多さにワクワクした。
「変化を望まないラルフ」のような人物においては、インターネットの凄まじい情報量には辟易とするのだろうが、わたしはインターネットが発展するのを見ながら成長してきた世代なので「この凄まじさこそインターネット!!!」と感動してしまう。
インターネットの闇も映し出すディズニー
だが、インターネットの世界に広がるのは楽しいことばかりではない。
近年、ディズニーは社会的な問題や課題をしっかり直視した作品をつくっている。「多様性社会」というテーマを掲げた『ズートピア』もそうだけど、インターネットの闇も隠さず見せるのが良かった。
変化を求めるヴェネロペとどうしても離れたくないラルフを助けてくれるキャラクターが登場する。しかし彼は、人間サイドから見れば厄介者扱いされるキャラクターだ。
物語上はいいヤツなのだが、彼は「クリック型広告」だ。人間サイドはそれに辟易とするからか「ポップアップブロック」を駆使して彼らをはねのけたりもする。そんな様子がキャラクターを通じて真正面から映し出される。
また劇中登場する”ダークネット”。ダークネットは簡単に説明すると「特定のソフトウェア、構成、承認でのみアクセス可能なネットワーク」のことを指す。通常の検索エンジンではひっかからないWEBコンテンツ等は通称ダークウェブ。
ダークウェブ上にあるサイト等は、一般人でもアクセス可能らしいが、危険なサイト、不気味なコンテンツが多い。劇中ではオンラインゲーム等を壊すウイルスが手渡される。
動画コンテンツに投稿される心ないコメントも劇中取り上げられていた。
インターネットの楽しさだけでなく”闇”の部分も映し出すディズニー。インターネット世界の描写自体にも時代を感じるが、インターネットの発展によって生じた闇を「隠さず見せる」という姿勢にも時代を感じた。
この映画すら古くなるのだと思ったら
結末のネタバレだが、「変化を望まないラルフ」と「変化がほしいヴァネロペ」は離れて過ごすことになる。ヴァネロペはインターネットの世界に留まるのだ。大好きなレースゲームに興じることを選んだ。
今作で感じた切なさは2種類ある。
1つ目。前作では、ラルフが「悪役」という立場から逃げ出すも、ヴァネロペと出会ったことで自分の役割を再認識し、元の場所へ戻るというストーリーだ。考え方的には「置かれた場所で咲きなさい」に近いだろう。
しかし今作の結末は、言うなれば「置かれた場所で咲く」を選んだラルフと変化を求めたヴァネロペの別れだ。ラルフの置かれる状況、すなわち考え方は、前作が上映された時代のものとも言える。
それが切なかった。
「置かれた場所で咲く」ことも「変化を求める」ことも、人それぞれ考え方は違うのでそれを別に反対するわけではないのだが、前作と今作の間に生じた変化をまざまざと感じることになり、切なくなった。
2つ目。今作のラストは続編を感じさせるラストだった。インターネットの世界にいるヴァネロペと会話を楽しんだ後、ラルフが切ない表情を浮かべながらも自分のゲームへ戻る姿で物語が終わる。
ラルフたちゲームセンターのキャラクターは、ゲームセンターの開店時間と同時に自身のゲームに戻り、子供たちによって遊ばれることを「仕事」と呼ぶ。
ラルフが仕事場に戻る背中が映し出された後、開店前でまだ人のいないゲームセンターの店内が映し出され、その後ゲームセンターの駐車場が映される。駐車場にはゲームセンターのオーナーの車しか来ていない。そのままカメラが引いて、映画は終わり。
続編があるかどうか確定ではないが、子供がおもちゃから離れる姿が描かれた『トイ・ストーリー3』のように、続編が描かれるとしたら、ゲームセンターの閉店が描かれるような気がした。
そして・・・
もし続編が上映されるのだとしたら、『シュガーラッシュ:オンライン』すら古くなる。続編を勝手に想像して、そしてエンディング前の余白多めな引きの映像を思い出して、切なくなった。
時代の流れははやい。
そのスピード感が面白いのだが、ちょっと切ない。
ディズニーの自虐にも注目
出典元:https://twitter.com/shopDisneyjp/status/1076024482886705153
切なさで締めくくるとしんみりしちゃう気がするので、最後にディズニーの自虐について語らせていただく。
予告編だけでも面白かったヴァネロペとディズニープリンセス達のやりとり。
本編はもっと面白かった。
唐突に歌い始めるリトル・マーメイドに引くヴァネロペ。”水面に映る顔を見つめれば自分の歌がおりてくる”というプリンセスのアドバイスは笑う。『メリダとおそろしの森』の主人公・メリダに対して「あの子は出身が違うからよく分からないの※」と少々ブラックすぎる発言が飛び出たりと、トントン拍子で自虐が続く。
※プリンセスが登場するディズニー映画の中で、唯一御伽話をモチーフにしていない。アメリカンアクセントで話すプリンセスの中で唯一スコットランド訛りで話すなど、かなり異端のプリンセスのよう。
白雪姫だけがなぜか魔女サイドのアイテム(毒りんご)をもって活躍するのも謎だったし、全員絶妙に性格が悪そうなのもよかった。
それでもやっぱり最後はディズニーらしく、プリンセスが活躍するシーンが観れる。抜かりねえな、ディズニー。すげえよ、ディズニー。
純粋に『シュガー・ラッシュ』の続編として楽しむもよし。インターネットの世界を観て、時代の流れを感じるもよし。ディズニーの自虐を楽しむも良しである。
ディズニーが買収した『スター・ウォーズ』、『マーベルコミックス』の姿を見つけて世知辛くなるのもよしかもね。
面白かった。
では。
◆本日のおすすめ◆
音楽もよかった!
「ディズニーランドにアトラクションができるんだろうな・・・」と感じさせる音楽。溢れ出るトゥモローランド属性。
映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」の感想 #シュガラお題
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