2024年の大河ドラマ「光る君へ」を鑑賞する中で、主人公・紫式部と本作についてもっと知りたいと思い、源氏物語に触れることにした。
源氏物語をマンガ化した作品は多々あるが、今回選んだ富井健二監修他『マンガで味わう源氏物語』(Gakken・2023年)は、平安時代特有の用語に関する注釈が物語の中に織り込まれている。
そのため、当時の政治や貴族の生活が理解しやすい。それをふまえて読み進めていくと、源氏物語の主人公・光源氏の苦悩が分かりやすい。
源氏物語と聞いて思い出すのは、あらゆる女性と関係をもつ光源氏の節操のなさ(現代の価値観で)。小学生の頃、通っていた公文式に置いてあった源氏物語のマンガを読んでいた時には、光源氏に全く共感できず、「とんでもない野郎だ!」という気持ちで読んでいたものだ。
だが、改めて読んでみたところ、光源氏は左遷されたり、目上の者をたてたのに不義理にあったり、想いを募らせる相手とはうまくいかないわ、ようやく通じ合えた人がすぐに亡くなってしまうわと結構報われない展開が続く。
光源氏が抱える心の問題や課題のようなものが見えてきて、同情の余地が生まれた。
埋まらない心を埋めるためにあらゆる女性と関係を持ってしまうのはやはりいただけないが、どこか心が切なくなるのだ。
なお、創作ではあるが、2024年の大河ドラマ「光る君へ」をあらためて見返すと、結構源氏物語からの引用がある。もしかするとドラマで描かれる藤原道長も、かの有名な和歌※とは裏腹に、どこか満たされない人物として描かれるのかもしれない。
そう思うと、大河ドラマの描き方にもワクワクするし、源氏物語の原文や当時の和歌にもっと触れてみたいと思えた。平安時代の文化・歴史を知る導入本として適していると思う。
※この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば
(この世はすべて私のためにあるのだと思う。満月が欠けることなく完全なものであるように、この世のすべてが我が意に満ち足りていると思うので)
大河ドラマ「光る君へ」もいいですよ……心苦しくて