化学自体は好きである。しかし好きであっても得意ではない。苦手意識が強く、なかなか理解を深められないまま、受験シーズンが到来し、残念ながら受験科目から切り離した教科である。
あまりにも理解できていないことが長年コンプレックスだった。どうにかして学び直したいと思ったので、とことん基礎的な本を探した。そこで出会ったのがこの本だ。
この本は、自分の身近に化学が存在していることを教えてくれる。
周期表を「水平リーベぼくの船……」と暗唱できても、それがどんな形で、どんな性質で、何に使われているのか、化学に踏み込んでいない人には見えづらい世界かと思う。
この本は、かの有名な周期表の元素が、実際にどんなものに利用されているかを写真付きで解説するものだ。だから、これまで身近に感じられなかった元素が一度は見たり聞いたりしたことがあるものに使われていると知った時、感動がすごかった。
もちろん、かなり入門編な内容の本なので、特徴的な現象やしくみに対する「それはなぜか」という深掘りは不足している。だから、「へ〜」で終わってしまう可能性もあるし、内容に物足りなさを覚える人もいるだろう。
でも、考えてみれば、思わず「え、それはなんでそうなるんだ?」と深掘りしたくなるほど、化学への関心を引き出せる本、ともいえる。
読んだ中で、一番身近なのにそれが何でできているのか分かってなかったものとして「ナトリウム」があげられる。ナトリウムは炎色反応で特有の黄色を示す。その性質を利用した照明器具がナトリウムランプで、これはトンネルなどで見られる。
トンネルによくあるオレンジ色っぽい光をなんとなしに「目が落ち着くから好きだな〜」なんて思っていたのだが、それがナトリウムの性質を利用したものであることを、恥ずかしながら私は知らなかった。
あと、この本で化学に触れる中で、持続可能な取組へ疑問を抱くことになった。
「クロム」は鉄、ニッケルとの合金でステンレスとしても広く使われているのだが、クロムはレアメタルと呼ばれる希少な金属の一種といわれているではないか。
時々プラスチックフリーの取り組みとして、ステンレス製のマイストローやマイボトルを使うといった文言を見かけることがあるが……希少な金属を使って作る、という行為自体をやめたほうがよっぽどエコなんじゃないか?!と思った。「ストローを使わずに飲む」でよくない?
多分、実際にはもう少し複雑な事情があるとは思うが、こういうことをふと思わせてくれる本でもある。
自分は熱心な環境活動家ではないものの、原子力エネルギーには興味がある。だから、原子力エネルギーを得る際、その反応を抑えるために利用される元素、というのにも心惹かれた。もっと知りたいし、そのためにはもっと自分は化学を復習すべきだ!と思った。
化学のことが「苦手だけど好き」だから、ここまで前のめりになって読めたのかもしれないが、とにもかくにも、化学をもっと学びたくなる本ではあった。