大人になった今だからこそ読みたい。児玉幸多監修『少年少女 日本の歴史』(小学館・1982年)

学習まんが 少年少女日本の歴史5 貴族のさかえ ―平安時代中期・後期―

小学校〜高校を卒業するまで、社会科が一番の苦手科目だった。というか、社会科の授業にあまりにも興味がなさすぎた。当時を振り返ると、他者の過去や経験を学ぶ社会科より、目の前でワクワクとした変化が起こる理科の方がよっぽど楽しかったのだ。

そんな私なので、恥を承知で言うと、一般教養レベルの歴史の知識も頭にない。だが最近は、大河ドラマに関連する仕事のために復習するようになった。そして今回の大河ドラマでは、学習まんが『少年少女 日本の歴史 第5巻 貴族のさかえ』を使用した。

 

公式サイトを見ると、「まんがだから小学生から読めるのはもちろん」とある。

小学生の頃、私はこのまんがを手に取ったことがあるが、正直なところ、まんがの割に文字が多いことで読むのをためらったし、それでいて肝心の内容があまり関心のない歴史だったので読みにくかった、という思い出がある。

文章が多いな、というのは32歳現在の私でも思う。記憶から想像していたよりも文字がパンパンに詰まっていて面食らった。

とはいえ、勉学から長く離れた大人が復習するにはもってこいだ。

日本史をしっかりと学んできた人にとっては、このまんがはおさえておきたい基礎知識だけが記された「軽め」な1冊なのかもしれない。けれど、公式サイトが「過去のセンター試験では毎年平均以上の獲得が可能です」と銘打っているだけあって、不足している感じはない。

過不足についての比較対象は、以前読んだ『歴史下巻 改訂版(中学入試まんが攻略BON!)』(学研プラス、2013年)である。この本は時系列や歴史上の一大事件をパッと思い出すには便利だった。けれど、出来事ひとつひとつへの深掘りはやや少ない。用途が異なるから、当たり前なのだが。

それに比べると、やっぱり『日本の歴史』は各時代につき1〜2冊なだけある。このまんがはそう簡単に流し読みできない。決して気軽なまんがではないから、まんがの中でも重厚な読み心地である。

 

まんがならではの良さについても触れる。

大河ドラマを鑑賞していて思ったのは、特に『鎌倉殿の13人』で強く感じたことなのだが、「歴史上の事件というのは大抵権力争いなんだなあ」ということ。

このまんがでは、自分の地位を高めるために策を巡らす歴史上の人物の様子が、感情豊かにあらわされている。彼らの豊かな表情が強いインパクトを残してくれるので、なぜ歴史が動いたのかが捉えやすい。

イラストレーションは、知識を頭に蓄えるうえで大いに役立つものなのだと実感した。

 

私はまんが表現のおかげで、大河ドラマに登場する兼家だの道隆だの、道兼だの道長だのといった、まぎらわしい名前をもった人々と演じる役者陣の名前と顔、血縁や政治的な立ち位置などを頭に入れることができた。

これは、放送されている大河ドラマの内容や大河ドラマガイドブックとの相乗効果によるものだとも思うが。

しかし、私がもしこのまんがを読んでいなければ、大河ドラマでは描かれない部分の歴史(平安時代が舞台ならその前後)に触れないことで、誰しもが知っているはずの基礎的な歴史を見過ごしていた可能性が高い。

それに何より、史実と真実は違うし、大河ドラマは歴史を扱うとはいえ、物語のパートはフィクションだ。絶対に、記事を読んでくれる読者に誤った情報を伝えるわけにはいかないし、不勉強だと読者に失礼だ。だから、この本の存在はとてもありがたい。

まんがで得た知識なぞ不十分だとお叱りを受けるかもしれないが、このまんがのおかげで、社会科の授業が苦手だった私が気持ちよく学べるのだ。ありがたいったらない。

 

 

大人になった今は学ぶ元気があるので、いずれ全巻買う。