一部ネタバレあり。
今作をまだ観ていない人に向けて、「あ、やっぱ観てみようかな」と思えるようなレビューを目指しているが、鑑賞後感じた魅力を伝えるために一部ネタバレがある。
「映画鑑賞前のネタバレ絶対NG」な人は、映画鑑賞後にぜひお越しを。
『ジェイソンX』感想
なんで『ジェイソンX』について書くに至ったかというと、先日夫と『ザ・プレデター』を観に行ったとき、「なんなら『ジェイソンX』のほうが映画としては観やすいよね」という会話になったからだ。
夫はTHE・エンターテイメントな映画が好きだ。全力で人を楽しませてくれる映画が好きなのだ。そんな彼が選んでくれた娯楽映画が『ジェイソンX』である。
ちなみに他の『13日の金曜日』シリーズはかっ飛ばして紹介してくれた。
夫いわく「前作とか関係ないから!!!」
あらすじ
近未来、200人以上を殺害したジェイソンは捕獲され研究所に収容されていた。いかなる方法を用いても処刑できない不死身のジェイソンに対し、最後の手段として冷凍刑が実行されようとするが、拘束から脱出したジェイソンは研究所で殺戮を始めてしまう。生き残った女性科学者ローワンはジェイソンを冷凍保存容器に閉じ込めることに成功するが、ジェイソンの抵抗により自身も冷凍状態となってしまう。
それから455年後、荒廃した地球にやってきた調査隊は、冷凍状態のローワンとジェイソンを発見し宇宙船に連れて行く。蘇生技術によって息を吹き返したローワンはジェイソンも船内に連れてこられたことを知り警告を与えるが、時すでに遅く蘇生したジェイソンは船の中で殺戮を開始するのであった。
不憫すぎるスプラッターの連続に笑う
カッチカチに凍ったジェイソンが、455年後に宇宙へ連れて行かれ、解凍後に「わ〜い!宇宙だあ!!!」と大暴れする映画である。
ほのぼのとしたタイトルをつけたくなるスプラッター映画だ。
「ジェイソン、宇宙へ行く」
今作、”無駄な”スプラッターシーンがたんまりある。
物語に関係ないところで腕やら首やらバンバンもげる。文字面だけ見ると、グロテスクさに辟易する人もいるだろうが、あまりにホイホイスプラッターシーンが導入されると、人は笑う。
特にジェイソン解凍前に、ジェイソンを発見した未来の人類が、カッチカチに凍ったジェイソン保管室を漁るシーンでは、悲しきかな、何も悪いことしてないのに、1人のメンバーの腕が1本切り落とされる。
不憫である。
しかし、笑う。
セクシーなお姉さんも、真面目にジェイソンを研究していただけなのに、解凍されたジェイソンに頭をむんずと掴まれ、なんのためらいもなく頭をかち割られる。
不憫だ、不憫すぎる。
だけどあの潔い理不尽さ、お決まりのお調子者キャラ、セクシーキャラの存在は、映画自体をワクワクさせる。人はなんだかんだ言って、王道に安心感を覚えるものだ。
そしてそれを丁寧になぞられると、笑う。
宇宙で大暴れするジェイソンが可愛く見える
なお『ジェイソンX』で登場するジェイソン・ボーヒーズは、圧倒的なパワーとためらいもない暴力によって怖い存在ではあるのだが、すでにキャラクター化している。
登場当初の「正体不明の殺人鬼」「大人の身体に閉じ込められた子供」のような”不気味な”存在感はあまりなく、気づいたら屈強な身体が全面推しの”モンスター”になってしまった。
しかし、それはそれで良い。
『ジェイソンX』をおすすめする上では、とても良いことである。
そもそも8作目のタイトル『ジェイソンN.Y.へ』の時点で、『13日の金曜日』がおちゃらけ路線まっしぐらなのは、ジェイソンファンでなくても伝わるはずだ。
『ベイブ/都会へ行く』と同じ匂いがするぞ!いいのか、それで、ジェイソン!!!
そんな彼に抱く感情は「可愛い」。
「なんでもかんでも『可愛い』とか『イイネ!』って言いやがって!!!」と憤怒する人もいるかもしれないが、ぜひ鑑賞してほしい。だって見せ場のシーンで、わざわざ1回攻撃の手を止めてくれたりするんだよ?!
・・・これってお茶目な部類じゃない?!
そもそも本気で人を襲うなら、油断しきってる人の前で突っ立ったりしないで、そのまま殺っちゃうはずなのだ。
しかしジェイソンはそんなことしない。
絶対に、油断しきってる人の前に”立ちはだかって”くれる。
ジェイソンを目の前にして「え、これ誰?」と状況が把握できない人のために、隣にいる人をサクッと殺し、「あ・・・これ、やばい」とその人が理解したところでその人も殺す。
ジェイソンは、ホラー映画一連の流れに対して丁寧な男なのだ。
本来モンスターとして傍若無人に振舞ってもいいはずなのだが、画を気にしてくれる。殺戮シーンの直前に「来ちゃった❤︎」と可愛い文字で字幕を入れる余裕を生んでくれるくらい、まず自身の姿が映ってから殺す。
その健気さ、可愛いんじゃないかい?
バージョンアップするジェイソンに笑う
ジェイソンそのものがバージョンアップすることにも笑う。
見どころシーンのひとつに、ジェイソンVS美人アンドロイドがある。
その1回戦で美人アンドロイドに敗戦したジェイソンが、蘇生装置によってめちゃくちゃメタリックなジェイソンになるシーンは爆笑ものである。
そして絶望的に強い。
ホラー・スプラッタージャンルにしてはギャグ線の高い映画だったはずなのに、べらぼうに強くなったジェイソンによって、映画は急に絶望感が際立つ。絶体絶命の大ピンチを思わせる追い上げを見せるジェイソン。
だが『ジェイソンX』の語り草となるであろうラストシーンが、結局この映画を爆笑の渦に巻き込む。勇気ある軍曹によるジェイソン討伐方法に笑ってしまう。そんなコメディ的な終わり方にしていいの?!と驚く。
わたしはこの終わり方が大好きだ。
13日の金曜日シリーズ史上、一番おすすめ
『13日の金曜日』シリーズの中では逸脱しているようにも思えるが、ホラー・スプラッター映画の王道演出や過去作品を丁寧になぞった作品でもある。その点、全10シリーズの最後を飾るにはふさわしい映画と言える。
が、個人的にはシリーズ1作目〜9作目を観なくても全然面白いので、1〜9を観ることなく『ジェイソンX』を楽しんでほしいのが本音である。
肩の力を抜きながら、適度なホラー&スプラッター描写を楽しむことができる不思議な映画だ。見れば見るほど「ジェイソンってキャラクター・・・可愛くないか?」と錯覚できるはずだ。
なお一番ツッコミたいのは映画の内容ではなく、DVDのジャケット(↑)である。
こんなスタイリッシュな見た目の映画ではない。
では。
◆本日のおすすめ◆
ぜひジェイソンてんこ盛りなDVD-BOXを・・・。