だーいぶ前の作品だが、「隣人13号」がU-NEXT で配信されていたのでもう一度観た。小栗旬の若さにも驚いたが、中村獅童がヤバすぎる。13号がヤバすぎる。
13号「サーモンピンク?サーモンピンク?サーモンピンク?サーモンピンク?」
サーモンピンクという言葉が恐ろしく感じる隣人13号の世界。
隣人13号
あらすじ
建設作業員村崎十三(じゅうぞう)は、小学生時代にいじめられ、同級生赤井トールに硫酸で顔を焼かれた。顔を焼かれた瞬間、臆病な十三の心の中に13号という凶暴な別人格が宿る事となった。
13号は、硫酸をかけた赤井に復讐すべく、赤井の住むアパートに引っ越し、十三を恫喝しつつ今は平穏な家庭 を築いている赤井に接近していく。建設現場のリーダーになっていた赤井は相変わらずの性格で、十三が同級生であったこともすでに忘れ去っており、新入りの彼をいじめる。
かつてのいじめっ子に対する、十三と13号の壮絶な復讐劇である。
中村獅童がヤバすぎる
いじめられっこだった十三から生まれた13号。
小栗旬の弱々しく純粋そうな十三とは対称的に、十三が負った痛々しい傷を受け入れ、感情のない目でこちらをじっと見やる彼のなんと不気味なこと!!!
精神世界を表現したような小部屋で、全裸でしゃがみこむ十三に近づく13号の威圧感がものすごい。語彙力がないが…明らかにヤバい人である。
それから不気味さも凄まじい。現実世界の十三の前に現れた時には、目の前の女性の顔をベロでひとなめする(もちろん他の人には13号の様子は見えていないので十三の様子の方が不気味さMAX)。この時の顔…。
13号の声、どっから出してる?
中村獅童の印象から、ひっくい声で演技するんだろうな、と思いきや、想像もつかないような声で13号は話す。
「え…これ中村獅童の声なの…?」ぐらいギャップのある、めちゃくちゃ不気味な高音・高速台詞(というか呪文)が聞こえてくるから怖い。
13号が人に手を出す時、うわごとのようにその声を発するのだが、映画を観ているこちら側がうわごとを言ってうなされそうなレベルで怖い。
こればっかりは、実際に観てもらわんと伝わらない。
13号のバイオレンス描写
13号のバイオレンス描写が怖い理由は、元は十三の身体だということが想像できるところにある。
殺し方がエグくないのがまた怖い。
否、メッタ刺しにするなど、エグくないわけではないのだが、力の強さを感じる演出ではないのが逆に怖い。
何度も何度も執拗に襲いかかる感じが、13号の狂気だ。
なお、個人的にジワジワと怖い描写は13号が手を下すシーンではなく、台所で血の付いた包丁を執拗に洗う13号が、徐々に十三に戻るシーンだ。
台所という日常的な場所と血のコントラストは本当に怖い。
13号に変化するCGが怖すぎる
十三の顔が徐々に13号に変わっていく瞬間の不気味さも良い。
彼の顔を映すカメラが、被害者の位置から撮影していることが、恐怖心を倍増させる。
気の弱そうな十三の顔に、かつてのいじめの跡が浮かび、そのうち無感情な13号の顔が現れる。十三と13号の目が合わさる瞬間はゾワゾワする。
殺される、と思ってしまう。
13号のアニメーションの狂気
記事冒頭で述べた
13号「サーモンピンク?サーモンピンク?サーモンピンク?サーモンピンク?」
は、映画に挿入されるアニメーション至上、もっとも狂気じみている。
力任せの怒りは、親しげに話しかけてくれた人物を「こいつはやばい」と遠ざけるだけの力がある。
確かに、会話の途中でやられたら怖くて泣く。
中村獅童がこのアニメーションを担当しているわけではないが、このポップなのに狂気に満ちたアニメが入ることで、中村獅童演じる13号の凄みが増す。
末恐ろしい映画である。
ラストシーンは考えさせられる
ラストシーンは人によって捉え方がバラバラになるので、観た人同士でも話しづらいと思う。
しかし、このラストシーンがあるからこそ絶望も希望も感じることができるし、いじめや復讐がなにも生まないことを理解できる。
人によっては、この映画を「スカッとする復讐劇」と呼ぶかもしれない。
でもわたしはそう呼べなかった。
十三の闇も13号の闇も、共感できそうで近づけない狂気だ。
ひっそりと襲い来る恐怖を味わいながら、最後に虚しさや悲しさを感じる邦画スリラーは、後にも先にもこれぐらいなのではないだろうか。
ぜひに。