国立新美術館にて『遠距離現在 Universal / Remote』を鑑賞する

先日、国立新美術館で開催されていた、企画展『遠距離現在 Universal / Remote』を観に行った。とんでもなく心にグッとくる展示だった。

後述する鑑賞ミニガイド「◯才のためのミニガイド」に記載された『遠距離現在 Universal / Remote』のコンセプトが非常に明確なので、それを引用する。

「遠距離現在 Universal / Remote」は、現代美術のアーティストたちの表現を通して、わたしたちがいる世界の個人と社会のきょり感について考えていく展覧会です。

距離感。

このメッセージがものすごく胸に響いた。あらゆるものの「遠さ」を感じさせる作品が並べられていて、今、この世界を動かす事象に対する違和感を思い起こさせてくれるというか、つながることの難しさを思い知らされるというか。

作品1つ1つは決して過激すぎないので、大きなショックを受けてしまう、ということは少ない気がするが、それでもやっぱり、それなりに心揺さぶられる。

 

ずっと観ていられると純粋に好感を抱いた作品は、ガスバーナーの上をフワフワと飛び続ける紙飛行機の映像が流れる、井田大介《誰が為に鐘は鳴る》(2021年、ヴィデオ(ループ再生)|作家蔵)だが、このとき抱いた好感は、紙飛行機にだけ意識を向けたからだと思う。

この作家さんのコンセプトや他の作品を鑑賞すると、「火」や「炎上」の意味の強さを思い知らされる。

心がきゅっと締め付けられたのは、ティナ・エングホフの《心当たりのあるご親族へ》シリーズである。

ずらりと並んだ写真作品は、一見すると、誰かの部屋を写しただけのものに見える。けれど、これは「孤独死」に関連する作品であり、誰かがいた痕跡、死、すなわち生の痕跡が写し出されたものからひしひしと伝わってきて、見ていて心がしんとする。

 

配布されているリーフレットがよい

本展示に対する鑑賞ミニガイド「◯才のためのミニガイド」が非常によいので、ぜひ鑑賞後に持って帰ってもう一度作品に思いを馳せたり(何なら会期中もう一度観に行ったり)、鑑賞前に展示室の端の方で(他の鑑賞者の邪魔にならないところで)読み込んでから作品に向かうのもよい。

私は多分会期中にもう1度行く。

しっかり心に刻みたいから。

 

遠距離現在 Universal / Remote

2024年3月6日(水) ~ 2024年6月3日(月)
毎週火曜日休館 ※ただし4月30日(火)は開館

開館時間 10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※4月28日(日)・5月5日(日)は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで

会場 国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

 

www.nact.jp