蜷川実花監督の彩り鮮やかな映像美とマッチしそうな物語だな〜と思って注目してた。
ちゃんと映画は楽しんだんだけど、『ザ・レイド』みたいな映画ばっかり観てるから「生温いよ、殺し方が!!!」みたいなコメントが頭に浮かんじゃったのはよくなかった笑。
あと「蜷川実花監督の悪いとこがいっぱい出た」と思った。
※ネタバレあり。あと、“楽しんだけど”という割には文句多めなので、『Diner ダイナー』を楽しく鑑賞した人には不愉快な内容かもしれません。ご了承ください。
Diner ダイナー
あらすじ
「日給30万」の怪しいアルバイトに手を出した主人公・オオバカナコ(玉城ティナ)。怪しい男たちに囚われた彼女は必死に命乞いをする。「料理ができます!」「損はさせません!」カナコの命乞いを面白がった男により、ウエイトレスとして売られたカナコ。
働くことになったのは、殺し屋専用のダイナー。
元・殺し屋のシェフ・ボンベロ(藤原竜也)のもとに、次から次へと殺し屋がやってくる。極上の料理を味わえるが、一歩間違えれば殺し合いが始まるダイナーで、ウエイトレスとして働く日々が始まる。
映画のテンポではない
キャラクター1人1人が魅力的に描かれていたため、映画鑑賞後は「まあ、楽しめたかな」と思った(偉そう)。ただ、映画鑑賞中から「映画のテンポではないな」と感じていた。
蜷川実花監督の撮りたい画に対する執着心は感じられた。こういうボンベロが撮りたい、こういうカナコが撮りたい、この役者にはこれが一番魅力的な姿だと思う、彼女にはこんな表情をさせたい・・・などなど。
だが、その執着が映画という娯楽にあるべき「テンポの良さ」を妨げていたように思う。
1つ1つの画は綺麗なのだが、いかんせんその1つ1つが映し出される時間が長いのだ。素人のわたしが偉そうに言うのもなんだが「もう少し編集でカットしてもいいんじゃない?」と思った。
まあ、ただのわたしの好き嫌いなんだけど・・・蜷川実花作品は写真のほうが好きだな。
露骨な演出にちょっと引いちゃった
あと、藤原竜也演じるボンベロが信頼するボス・デルモニコ(井手らっきょ)がめちゃくちゃ蜷川幸雄に似せて描かれていたのだが、それがあまりにも露骨すぎてわたしは引いてしまった。
わかる、わかるよ。藤原竜也の役者としての才能を見出したのは蜷川幸雄だ。舞台『身毒丸』だよね、わかる、わかるよ。偉大な演出家である父の姿を描きたかった蜷川実花監督の意図もなんとなくわかる。
でも・・・でも、これも、ただのわたしの嗜好の話なんだけどさ、わたしは『Diner』が観たかった。『Diner』を通じて描く蜷川家の物語ではなく、『Diner』が観たかった。
今は亡き蜷川幸雄への思いに乗れなかった。だって内輪だもん。内輪ネタだもん。内輪ネタすぎるもん。
同じ演出を2回使った意味はなんだろう
あと、これまたわたしが気になったってだけの話なんだけどさ、土屋アンナと真琴つばさの死ぬときの演出がほぼほぼ同じだったんですよ。
キャラクター的には全然別個な人なわけですよ。土屋アンナは西の組織トップで、真琴つばさは北の組織の右腕でさあ、敵対する関係なんですよ。
でもまっっっったく同じように、死んだ瞬間バラの花びらが飛び散って、その中で息絶えるんだよね。
いや、多分、「その死に方がもっとも2人を魅力的に見せる死に方だから」みたいな理由があるんだと思うの。「わたしこういう演出で死にたーい」「わたしもわたしもー」みたいなことはないと思うんだけど・・・それにしたって自分がやりたいことしすぎじゃない?!
同じ組織の一員で、2人が思い合っているような描写があって、それで同じ演出で死ぬならなんかわかる。でも、あまりにも意味なく同じ演出を2回使ったように見えたの。
土屋アンナと真琴つばさには罪はないけど、わたしが観たかったのは「西の組織トップ・マリアが死ぬシーン」と「チーム無礼図の一員が死ぬシーン」なわけで。「土屋アンナと真琴つばさが魅力的に死ぬシーン」ではないわけで・・・わかってもらえる?!
ラスト藤原竜也すぎる
ラストなんだけど、逃げ延びて1人店を開くカナコのもとにボンベロと菊千代が現れるの。というかね・・・藤原竜也が現れるの。ボンベロ感皆無な藤原竜也がカナコの前に現れてしまったもんだから、わたしは映画館で普通に「へはっ」と笑ってしまった。
あとね、ラストの演出もくどいなーって。
原作だと、逃げ延びたカナコのもとにボンベロが戻ってくるかわからない状態で物語は終わるわけですよ。だから映画もさ、ボンベロとその相棒・菊千代がカナコの店を訪れた「かもしれない」ぐらいの終わり方でよかったんじゃないかって思うわけ。
悪いとこ出たなって
映画、楽しんだっちゃあ楽しんだんだけどさ、どう思い返しても藤原竜也と蜷川幸雄と蜷川実花の物語なわけ。『Diner』じゃなくて3人の物語。
だから、心の底から「よかった!」って言えないんだよなあ・・・。
あと「蜷川実花、窪田正孝のことえこひいき的に好きすぎんか?」とも思ったね。なんだろう、窪田正孝演じるスキンの撮り方が異様なまでに1人だけ丁寧に感じたんだよね。
怪我したスキンを介抱するボンベロのシーンなんて、血まみれ汗だく上裸の綺麗な男性が撮りたかったんかな・・・と思ってしまった。自分の欲求だけで描かれたBL同人誌みたいで、正直な話「キモいな」とも思ってしまったんだ。なんかごめんよ。
・・・わたし、蜷川実花監督作品嫌いなのかな笑。
いや、でも、『ヘルタースケルター』とかめちゃくちゃハマった映画だと思ったんだけどなあ、なんでなんだろう。うーん。まあ、『ヘルタースケルター』より全然内輪ネタすぎたな、それに尽きるな。
多分、9月公開予定の『人間失格』は観れないな笑。
では。
◆本日のおすすめ◆
小説の魅力は、自分が自分だけのために、好き勝手演出できるところかな。