出典元:朝日のような夕日をつれて '91 | 演劇・ミュージカル等のクチコミ&チケット予約★CoRich舞台芸術!
劇団あんちょびの現/代名作戯曲(正しくは「現」が上下反転)vo.2『朝日のような夕日をつれて』を観てきた。
もしもあなたが、お芝居だからこそ味わえる「生」感が好きであり、泥臭く力強い芝居が観たいのであれば、劇団あんちょびの芝居はおすすめだ。
正直な話、まだまだ荒削りな部分もある。役者陣の中には「演じよう」という気持ちが強すぎて、体に力が入ってしまい、台詞が聞きとりにくい者もいた。
そのため、良い意味でも悪い意味でも彼らの芝居は疲れるだろう。
だが、彼らの芝居はとにもかくにも熱い。
「人間関係が希薄」と言われる現代だからこそ、生身の人間がその体だけで演じる「演劇」の「生」っぽさ、「熱」っぽさを感じてみてほしい。
劇団あんちょびについて
(↑)劇団あんちょびHPより・・・可愛いっ
農大劇研OBで結成された社会人劇団。自らテックカンパニーに属し進化に触れる中で、置き去りにされる人本来の姿への問いかけのため結成。「役者の肉体が舞台をつくる」泥臭さとエネルギッシュさが魅力。
劇団あんちょびの特徴は“役者の肉体が舞台をつくる”。
とにかくエネルギッシュな劇団だ。難点があるとすれば、「舞台鑑賞慣れ」をしていない人が彼らの芝居を観たとき、ちょっと引くかも…ってことぐらい。
でも、もしもあなたが、映画を鑑賞するのとは違う、演劇特有の、その場でしか味わえない熱さをほんの少しでも心地よく感じるのであれば、多分、割と、好きだぜ。
それから今作『朝日のような夕日をつれて』は、彼らが企画する「現/代名作戯曲」シリーズのひとつ。
「当劇団のメンバーは大体30歳。生まれる前の戯曲なんて、”現代”戯曲ではないのでは」という身勝手な思いから、大体30年前の戯曲を掘り起こして、再評価してみようというプロジェクト。
“身勝手な思い”ってのが、面白いよね。
『朝日のような夕日をつれて』感想
まず戯曲の内容においては、劇団あんちょびのコラムがとても読みやすく、面白かったので紹介する(↓)。
『ゴドーを待ちながら』という作品がベースになっている。『ゴドーを待ちながら』を知らない人にざっくりと、本当にざっくりと説明すると「ゴドーという会ったこともない人をただ待つ」物語である。
で、『朝日のような夕日をつれて』は「ゴドーの世界」と架空のおもちゃ会社「立花トーイの世界」が入り乱れるような物語だ。
鑑賞後の率直な感想は・・・「ものすごく疲れたけど面白かった」。
劇団あんちょびの芝居は、役者陣の全力投球な演技が魅力的だ。聞こえは悪いかもしれないが、若干暑苦しいのがいい。汗びっしょりな役者陣が、唾を撒き散らしながら、世界観をつくりあげる姿は「これは…スポーツかな?」と見まがうほどの力強さ。
もちろん、冒頭でも述べたようにまだまだ荒削りな部分もある劇団だ。全力投球で1時間50分の劇を演じ続けるのは相当体力がいるのだろう。どうしても劇中盤~終盤にかけて、スタミナ切れを感じる瞬間はあった。そこは非常に惜しい。
とはいえ、芝居の緩急は魅力的だった。
若干の暑苦しさを感じさせる演出の中に、時折挿入される「静」の演技はとても印象に残る。「立花トーイ」と「ゴドー」の世界が入り乱れる中、ふっと「ただ待ち続ける」ことへの虚しさを感じる瞬間があった。
その瞬間もすぐに怒涛の会話劇に飲み込まれてしまうのだが、フルスロットルな表現のおかげで、「静」のシーン、そして「ゴドー」「みよこ」「寒さ」という存在が際立ち、作品に深い余韻を残す。
観るのに体力は必要だけど
劇団あんちょびの芝居は純粋に楽しみやすい。
今作は、脚本に記されたパロディギャグや演出によって生み出された独特の間が笑いを生み出し、まるで次から次へと繰り広げられるくだらないコントを観ているようで面白かった。
ただ、まあ、あまりにも毎公演全力投球なので、観る側も体力が必要かもしれないね。演劇ならではだけど、全力投球に演技されると答えないわけいかないから。ポップコーンを食べながらリラックスして観ることができる映画とはやっぱり違うんだな・・・。
とはいえ、演劇ならではの生っぽさ、熱っぽさを全力で味わってみたいなら、外せない劇団になるんじゃないかな。
では。
◆本日のおすすめ◆
「不条理劇の傑作」とな。
公演の度、時代に合わせて脚本が変化しているとな。