大学生の時、わたしは演劇研究部に所属していた。演劇研究部にいた頃のわたしは、今考えると少々異常なほどに演劇が好きで、大してお金もないくせに、下北沢にせっせと足を運んでは小劇団の劇を観まくっていた。
卒業後、芝居を観る頻度は激減した。
そんなわたしが久しぶりにお芝居を観てきた。劇団あんちょび第2回公演『ボクサァ』である。
今日は、観てきたお芝居の感想とお芝居の魅力を伝えていく。
劇団あんちょび第2回公演『ボクサァ』
劇団あんちょびとは
東京を中心に活動する社会人劇団です。演劇をライフワークとするため、多くの方に面白い芝居を知っていただくため、活動しています。
劇団あんちょびで活動している演出家、役者陣は、わたしが所属していた演劇研究部の先輩、後輩、同級生で構成されている。大学卒業後も演劇を続けている人たちの劇団だ。
なぜ”あんちょび”なのかは知らない。
知りたい謎のひとつである。
あらすじ
第2回公演は、劇作家・高橋いさを、さんの作品『ボクサァ』だ。
旗揚げ公演のときは、映画化もされた『キサラギ』が演目だった。既存の脚本を劇団あんちょびの爲近敦夫が演出するのが定番化するのかもしれない。
舞台はアパートの一室。アパートの一室には5人の友人たちが集っている。部屋の真下に住んでいる”らしい”ボクサァについて話しているうちに、ボクサァへの妄想が膨らんでいく5人。ボクサァに対抗すべく策を練る5人に待つ結末とは・・・。
高橋いさを、さんの初期作品は、現実と虚構の境目が曖昧になっていく特徴がある。『ボクサァ』もそんな特徴をもった作品のひとつ。コミカルな演出から徐々に狂気じみていく感じが面白い。
鑑賞後の感想
エネルギッシュだった。
決して広くない舞台で声を張り上げイキイキと演じる姿は、今時珍しいほどにまっすぐなんじゃないかと思っている。芝居にのめりこむ役者の熱い姿が観たい人、人が役を演じるというシンプルな芝居の姿に心惹かれる人にはたまらない芝居だった。
ちょっと厳しい意見もある。劇前半のテンポのいい台詞回しの場面で、台詞の受け答えに違和感を感じた部分もある。会話ではなく、台詞、台詞、台詞の羅列に感じられた場面があった。
それから、基本的にはアパートに集う若者5人の仲の良い感じが伝わってきてよかったのだが、ところどころ「これ、もしかしたら台詞を飛ばしてる?」と感じてしまうような噛み合わなさを感じるシーンもあった。そこはちょっと安心して観れなかった。
とはいえ、もしかしたら元々そういう脚本だったのかもしれないし、演出だったのかもしれない。安心して観れない部分があったからといって駄作なわけではないし、芸術には時々、膨大なお金が動いているのに駄作ができてしまうこともある。
しかしTwitterでもつぶやいたが、笑いを起こすシーンで会場を沸かせることのできる劇団だし、役者陣の息の合わさった瞬間は観ていてとても楽しかった。
「人が演じるのを観る」というシンプルな楽しさを求めるなら、抜群によかった。
芝居の魅力は”生”感
お芝居の魅力は”生”なところにある。
舞台上の空気に、観客を巻き込むことができる。役者陣の緊張感や熱量は、直接観客に届く。時に失敗(台詞が飛ぶ・舞台が壊れる等)したときの動揺が観客に伝わってしまうこともあり、そういう類の恐怖もある。が、とにもかくにも魅力は”生”だ。
舞台上で繰り広げられる、日常とは違う空気を観客は存分に浴びることができる。
もちろん人と空気を共有したくない人にとっては、舞台独特の空気はあまりにも異質で、苦手意識も芽生えるのだろう。お芝居から離れて、そのことを素直に受け取れるようになった。苦手な人には苦手、というのもよく分かる。
それでも映画との一番の違いである”生”感を味わってもらいたくて、こんな記事を書いた。
空気の共有の面白さを味わってほしい。
それが好きな人にも。
苦手かもしれない人にも。
劇団あんちょび第2回公演『ボクサァ』は1月20日の14時の回で終わりなので、この記事を読んでくださった人に彼らの芝居を観てもらうことはできない。が、劇団あんちょびは今後も定期的に公演を行うという。
是非に。
では。
◆本日のおすすめ◆
『ボクサァ』収録。
あんちょび。