2020年11月25日〜2021年2月23日まで、東京国立近代美術館で開催されている企画展「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」。
「ピーター・ドイグ展」がきっかけで訪れた東京国立近代美術館。企画展だけでなく所蔵作品展にも心射抜かれたうえ、ムサビ通信に通っているおかげで「国立美術館キャンパスメンバーズ」の恩恵を受けることができると知ってしまった。足繁く通わないほうがもったいない(このご時世、足繁く通いにくいが、マスクして黙って鑑賞しているので自粛警察には見逃してほしい)。
「眠りだけをピックアップした展示なんて面白そう〜」と思い、足を運んだところ、まあ面白かった。さまざまな「眠り」の捉え方がそこにはあった。
眠り展
「眠り展」は序章〜終章までの全7章で構成されていた。私が心惹かれたのを章ごとに羅列すると以下の通りである。
- 序章 目を閉じて
オディロン・ルドン『若き日の仏陀』 - 第1章 夢かうつつか
楢橋朝子「half awake and half asleep in the water」シリーズ
饒加恩(ジャオ・チアエン)『レム睡眠』 - 第2章 生のかなしみ
小林孝亘『Pillows』
塩田千春『落ちる砂』 - 第3章 私はただ眠っているわけではない
森村泰昌『烈火の季節/なにものかへのレクイエム』 - 第4章 目覚めを待つ
河口龍夫『関係―種子、土、水、空気』
見ていてもっともゾワゾワしたのは楢橋朝子氏の「half awake and half asleep in the water」シリーズ。
水面ギリギリで撮影された海、湖、沼、川の写真は、「漂う」を感じさせる穏やかなものもあれば、「沈む」を感じさせる、少し荒々しいものもあった。「第1章 夢かうつつか」に展示されていた作品だが、「第2章 生のかなしみ」にも通ずるような、「死」に片足を突っ込んでしまっているような、怖さも感じた。「写真=一瞬を切り取るもの」と考えていたので、揺れる水面を感じたことも怖さの理由かもしれない。
シンとした感じがして気になったのは小林孝亘氏の「Pillows」。
はっきりと脳裏に残る、というより、時折ふと思いだす、そんな印象の作品だ。ただの枕、と認識すればそれで終わりなのだが、「第2章 生のかなしみ」に並ぶ作品と考えれば、なんの枕か、誰が横たわる枕なのかが想像できるのではないだろうか。解説を読む前は、枕のふんわりとした質感に心惹かれていたが、解説を読んだ後は、枕と「不在」の存在感にものすごく心惹かれた。
このご時世、心がクサクサしがちなので、もう一度、あの静かな眠りの空間に行きたい。
(どうか美術館の開館だけは続けてほしい…)
◆本日のおすすめ◆
たゆたう感覚をもう一度味わいたい。
「half awake and half asleep in the water」 (英語) ハードカバー