私は先月「ヘアドネーション」をしてきた。
ヘアドネーションとは
小児がんや脱毛症などの病気や事故などで頭髪に悩みを抱える子どもたちに、寄付された髪の毛で作った医療用ウィッグを無償で提供する活動。
出典元:朝日新聞出版 知恵蔵mini
である。
ヘアドネーションをするために長い間髪を伸ばしていたので、それを思いついた瞬間のことを思い出せないのだが、思いついた背景には、がん治療が終了してだいぶ時間が経ち、定期検診に行く回数が徐々に減っていったことが挙げられる。
治療開始当初、5年生存率(ある疾患の予後を測るための医学的な指標。ある疾患は主にがんを指し、診断から5年経過後に生存している患者の比率を示したもの )は50%だった。若いし体力もあるし、ガンガンに抗がん剤を体にぶち込んだ甲斐もあって、当時は本当に精神的にまいっていたものの、今は元気である。
「こっから先、何もなく生きてけそうだな〜」と思った瞬間があったはずで、そのとき何か恩返しがしたい、返せるものはないだろうか、と考えたとき、浮かんだのが「ヘアドネーション」だった。
抗がん剤治療で毛という毛が抜けたとき、ショックより「抗がん剤強ぇ〜!」という興奮が勝っていた私であるが、周りの人の反応を通じて「なるほど、毛がないのは結構ショッキングなのかも…」と思った記憶がある。
ストレートヘアからツルッツルへ、ツルッツルからなぜかモジャ毛へ、そこからゆるやかに元のストレートヘアに戻っていく様は「生きてる」って感じがしたんだけど、まゆげやまつげが抜けたことで病人感100%になったのは確かに衝撃的だった。
で、治療を終えてから数年。
何事もなかったかのように生えている健康な髪の毛を提供することにした。
ヘアドネーションを行う際、必要になる長さは31cm。私は七五三以降、ロングヘアにしたことがなかったので、きちんと31cmまで伸ばせるか自信がなかったが、それでも3年伸ばし続けて無事に31cm以上提供することができた。
もちろんそれは、提供した後の髪型がものすごくショートだったからってのもあるけど。
(↑)顔が調子乗っててムカついたので隠した。
「うなじをガンガンに出すぜ!」というヘアスタイルであれば、3年伸ばすことで31cm以上余裕で提供できる…ということを学んだ。
私は自分で髪を切るのではなく、ヘアドネーションに賛同しているサロンにて髪を切ってもらったのだが、髪を切るのが美容師さんの仕事でも、髪をヘアドネーション団体に送るのは私の仕事だ。美容師さんから渡されたドナーシート(髪の毛のコンディションを確認するため)に記入し、自分で封筒に入れて郵送することになった。
髪の束をトートバッグに入れて持ち帰り、郵送するまで家に置いておくという体験ができたのも貴重だった。髪の毛は死んだ細胞でできているのに、生きている感じがする。怖い話などで登場する大量の髪の毛が気味悪く感じる理由が分かった気がした。
Japan Hair Donation & Charity(以下JHD&C)のホームページを参考に、JHD&Cに髪の毛を送った。私はクソ真面目なので(?)「『受領証』を受け取らないと、ブログで体験談を書いても証明ができないな」と考え、返信用封筒を用意し、受領証を受け取ることにした。
で、これが受領証である。
受領証は可愛いステッカーであった。なんかちょっと、ハッピーな気持ちになるよね。
ヘアドネーション後、巷を騒がす感染症の影響で、1年ぶりになってしまった定期検診へ行った。血液をとり、CTスキャンをとり、ぼけ〜っと病院で待っていると呼び出しがあった。先生はこう言った。
「来年何もなければ、病院卒業だね」
私の頭は大半がネガティブでできているので、内診後「やったあ」と思いつつ、「でもこの後急に事故に巻き込まれて死ぬ可能性はなきにしもあらず…」なんて思いながら帰宅したのだけれども、これはとても嬉しい出来事であった。
大きな病気もせずに生きてきて、あんなことが起こるとは思ってなかった。
胸腺が腫れ、肋骨は溶けてて、胃と肝臓もやられ、抗癌剤による吐き気と口内炎、白血球減少アタックに耐え、毎日通わなければならない放射線治療をクリアし、めちゃくちゃ心を病んで人を傷つけ、自暴自棄を体現した5年間。
そこからは、人に迷惑をかけまくりながらも立ち直り、心身をぶっ壊すから無理はしないと心に誓いながら、自分の好きな仕事で生計を立ててきた。
ここまで読んだ人はもう分かりきっていると思うけれど、私がやったヘアドネーションなどただの自己満足である。私が私のためにやったのだ。区切りとして。
それでも、私のこれまでが誰かのためになるのなら、役立てたい。
来年卒業前にお医者様に聞いておく必要があるけれど、もし可能なら、臓器提供意思表示カードにも丸をつけたい。何もかも自己満足、自分がやりたいからやるだけなんだけど、活かせるなら提供していきたい。
ロングヘアの生活がそこそこ大変だったので、ちょっと数年はショートヘアを維持していきたいのだけれど、考えたのが、今後は10年区切りで提供していこうと思っている。例えば、35歳の時点で「40歳まで生きられそう」と思ったら、37歳から髪を伸ばし始め、40歳でヘアドネーションをする。それを45歳、55歳、65歳…と続けてみる。
自分が死ぬギリギリまで、役立てられることがあるなら提供し続けたい、そんなことを思った。
では。
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