『人生フルーツ』理想の夫婦像で、理想の生き方で、理想の死に方だった。

こんにちは、齋藤吐夢です。

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出典:人生フルーツ : 作品情報 - 映画.com

 

11月25日(土)に、飯田橋にあるギンレイホールにて『人生フルーツ』という映画を見てきました。感想、この夫婦は理想的であり、理想的な生き方であり、理想的な死に方だなあと思った。

 

※ネタバレあり

 

 

人生フルーツのあらすじ

津端修一さん、英子(ひでこ)さん夫妻の日常を淡々と撮り続けた、優しい気持ちになれる映画でした。90歳と87歳の夫婦の姿を見て、優しい気持ちにならないわけがないけど笑。

 

愛知県春日井市高蔵寺ニュータウンの一隅。雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と50種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。刺繍や編み物から機織りまで、何でもこなす英子さん。ふたりは、たがいの名を「さん付け」で呼び合います。長年連れ添った夫婦の暮らしは、細やかな気遣いと工夫に満ちていました。

引用元:作品解説 | 人生フルーツ

 

とにもかくにも淡々と、長年連れ添った老夫婦が生きる時間を見続ける90分。

 

とても贅沢な時間だったし、穏やかに過ぎていく日常に顔がほころびます。見た映画館の素朴さも相まって、「・・・ふふ」という笑い声が、あちらこちらから聞こえてきて、それもまた心地良かったな。

 

人と時間の大切さを知る

この映画から学べることがあるとすれば、”人”と”時間”がどれほどまでに大切で、愛おしいものかだと思う。

 

ブログでも私生活でも、日々生きるために「お金がお金が」と言っている私とは大違いで、”本当にあるべき未来のために”、この夫婦はお金ではなく”土”を残す

 

その美しさを90分間で学んでほしいな、未見の人には。

 

なかでも心に沁み入ったシーンを紹介。

 

食事シーンに笑う

シュールとも言え、穏やかとも言え、でもやっぱり「・・・ふふ」って笑っても許されそうなシーンは、2人の食事シーンだった。黙々とご飯やお茶を楽しむ2人のシーンは、かなりの回数で挿入される。そのたび「・・・ふふ」と笑える。

 

会話が多くも少なくもなく、ただ黙々と食べ続ける2人の姿は、長年連れ添ったという説得力があるし、単純に「生きる」を感じさせる映像でもあった

 

食事シーンは笑えるだけじゃない、ある種の凄みもある。

 

「夫には良いものを食べさせたい」

 

と話す英子さんは、修一さんのために大好きなじゃがいも料理を振る舞う。自身はじゃがいもがニガテなのに、たっぷり作る。修一さんの分”だけ”。一汁三菜の朝食を摂る修一さんの目の前で、英子さんの朝食はトーストとジャムだけ・・・とか。

 

 

英子さんの夫への愛に、私、たじろぐ。

 

好きなように生きている

食事シーンでは「修一さんのためを想い」が強く感じられたとはいえ、この2人が凄いのは、どちらかがどちらかを立てたり強いたりすることが決してなく、ただただ2人とも好きなように生きているというところだ。

 

英子さんは修一さんにも「何でもやりなさい」と言われ、何でも受け入れてもらえたからこそ、自分から発言したり、挑戦することを経験できたと話す。

 

2人とも、ドがつくほどのマイペースで頑固者。

 

だけど、互いを尊重し合い、特別会話量が多くなくとも分かり合えている姿に驚いた。

 

修一さんの人柄に惹かれる

修一さんの過去が優秀すぎて驚いたのもこの映画の魅力のひとつ。彼は戦時中、海軍に所属し、戦闘機の設計をしていた風立ちぬ」だ笑!!!

 

建築の世界へ入り、数多くの団地設計を手がけながらも、自然との共生を目指した全く新しい団地設計に取り組み、しかし時代は彼を許してはくれず、結局彼は構想から大きく外れたその仕事をきっかけに、一線から退いてしまう。

 

自身で手がけたニュータウンの土地を買い、叶えられなかった自然との共生を自分の土地の中で完成させてしまう修一さん。周りを巻き込み、禿げ山再生に臨み、軌道に乗り始めると先頭から外れ裏方に回る修一さん。

 

彼を慕い、憧れる人はいっぱいいただろうな。 

 

そんな彼だけど、大のヨット好きであり、月収4万円が当たり前の時代に70万円のヨットを買うと言い出したりする笑。好きに貪欲なおもしろい人だと思ったよね。

 

津端修一さんのアップ

最大のネタバレになるが、薄々気づいていたことでもあったし、いつかその時は来るだろうと思っていたけれど、劇中、要するにこの映画の撮影中、修一さんは穏やかにこの世を去る。

 

昼寝をしたまま、起きてこなかった。

 

私は不謹慎にも「出来過ぎな演出だ」と思ってしまった。でも同時に「なんて理想的な死に方なんだろう」と憧れも抱いた。彼は日課の草むしりを行い、日課の昼寝をして、そのまま往った。本当にただ、それだけだ。こんな幸せな死に方ってないと思う

 

この映画の素晴らしいところは、人の死に目を背けず、かつ彼を死んだものではなく、”彼”として撮影したところにある。

 

亡くなった彼のアップは、恐ろしく綺麗だった。

 

ギンレイホールも素敵だった

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見た映画館がギンレイホールというのも、何だか出来すぎな話である。2本立ての、いわゆる「名画座」にあたる「飯田橋ギンレイホール」。

 

映画、しかも最新映画だけでなく”古き良き映画”が大好きな人にはたまらないであろう名画をバンバン上映してくれて、かつ映画パスポートを購入すると1万円で映画が見放題なのだ。10本以上見れば元が取れる

 

ブザーが鳴り、緞帳が開き、予告編が流れる。むしろ私が”古き良き映画”に登場する映画の1シーンに出演させていただいている!そんな感覚で映画が見られるなんて、素敵すぎやしないか?!

 

今後の2本立ての映画ラインナップも気になるものばかりなので、気になる方はぜひ。

▶︎上映スケジュール | 飯田橋ギンレイホール

 

おまけ:ロマンチック夫

出典:東海テレビドキュメンタリー劇場 (@tokaidocmovie) | Twitter

我らが夫婦の話も聞いてくりょ。

 

今回の映画、夫がずっとずっと前から「観たい、絶対に観たい」と話していた映画でした。見終えた後、我が夫様はものすごくロマンチストだなあ・・・と思って。

 

というのも、彼が私に「観せたい」「一緒に観たい」と言ってきた映画が

と良い感じに結ばれる系(ある意味、結ばれないのも1個入っているけど笑)ばかり。これは夫だからなのか、それとも男性はロマンチストなのか・・・。素敵だとは思うけどね。

 

『人生フルーツ』誘ってくれてありがとう、夫よ! 

では。

 

◆本日の一冊+α◆

津端修一・英子さんの本。映画とはまた違う魅力がたっぷり。