こんにちは、齋藤吐夢です。
今まで東海林さだお先生を知らなかった私を叱りたい。
なんて面白いエッセイストなんだ!食事をユニークに語りつつ、美味しさを損なわない!
メンチカツの丸かじり
丸かじりシリーズと称されたこの食エッセイ本は、もうそれはそれは長いこと掲載が続いている週刊朝日の連載とのこと。ああ、悔しい。もっと早くから愛読者でありたかった、なんて。
でもそう思えるほどユニークな語り口に心動かされる1冊である。純粋に面白いんだもん。他の食エッセイもめちゃくちゃ読んできた。食エッセイ大好きっ子な私だ。思い出すだけでよだれが出る。
表紙にはメンチカツの絵が描かれていて、先生の人柄が伺えるような細い字で「メンチカツです」「見映えはよくないけど」「オイシーヨー!」と書かれている。
可愛い!
そして絶対にこのメンチカツは美味しい!
あと、何だか分からないけれど、東海林さだおさんのことは「さん」ではなく「先生」と呼びたいね。
全然関係ないけれど”よびたい”の予測変換が”予備隊”で笑った。
落語家のような語り
この文章がスイスイ読める理由の一つに、噺家のような語り口がある。気の良いおっちゃんが軽く語るのだ。軽くといっても決して悪い意味ではない。
むしろ重厚な食事も軽く話してくれるのであれば、気持ちが楽になり食事も楽しみやすいよね〜。
ばかばかしい話をするよ、と前置きしたり、予想以上に話が発展して、後半一瞬「食」というテーマを忘れかけてしまったり、面白いのだ。
読者への投げかけも秀逸。「ねえねえ、どう思う?僕はこう思う」だなんて話が進めば、枯れ専(枯れているだなんて失礼な!)にはたまらないと思う。意見を求めるおじさん、嫌いじゃないです。
おじさまの風格
枯れ専だとか、嫌いじゃないとか、ああだこうだ失礼極まりないことを言いましたが、おじさまとしての風格もしっかり表れている。
だって食べているもののジャンルが、価格帯が幅広いのだもの。親しみやすい食のジャンルの合間にたまに少し高級品。嗜好品としては贅沢なものがひっそりと。
おじさまの年期が全てを物語る。経験値が違う。私みたいなひよっこな若造とは食べてきたものが全然違う。そう感じさせてくれる。
気づいたら食エッセイではなく、おじさま萌えについて語っている・・・!
おすすめページ
おすすめページは以下の5つ。もっと色々あるけれど、厳選するならばこの5つ。この5つは読んでほしいなあ、面白いのだもの。
- すき焼き、廃墟となる
- 几帳面な人とは
- 「まいう」の表現力
- ビーフジャーキー立ちはだかる
- ワサビ、この階級社会
もうタイトルから感じませんか・・・このユニークさ。すき焼き、廃墟となる、なんかは最早立派な文芸作品とも言いたい。滅びの美学・・・いかにも日本人的で情緒あふれるね。
「まいう」の表現力、は笑う。ビーフジャーキー立ちはだかる、は読んだ後、ビーフジャーキーを噛み噛みしたくなった。お腹空いてきた。
食エッセイに飢えている
私の好きな食エッセイの著者は女性が多い。
女性らしい感性とユニークな視点が好きだ。例えば生まれた時からアルデンテだったり、ちびちびごくごくお酒のはなし、味なメニューとか読み倒している。
が、男性の描く食エッセイには食に対する本能的なものを感じる。「うめえ!」「やばい!」みたいな感情をびしばし感じさせてくれる。
男女の性差をはっきり感じるのも、時にはいいのかもしらん。
とりあえず食エッセイを漁りに、
また本屋へ駆け込まなければ。
では。
◆本日の一冊◆