白状すると、前作は全然ピンと来なかった。
「ありのーままのー」も、「え、投げやりになったエルサが歌うの?!」と全然受け入れられなかったし、姉妹愛の演出もそこまでハマらなかった(一人っ子だからかもしれないけど)。
でも、本作は割と好きだった。
チラチラ評判を耳にしていたけれど、確かに本作は「ありのーままのー」ほどキャッチーな物語ではない。小さな子供が「ありのー」と思わず歌ってしまうような作品ではないな…とは思った。
でも、でもでも、過ちを繰り返しがちな"大人"には響くものあるかもって思ったんだ。
※ネタバレNGの人は映画鑑賞後に読んでいただけると幸いです。(『アナと雪の女王2』と、なぜかクエンティン・タランティーノ監督作品『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレあり)
アナと雪の女王2
あらすじ
前作から3年後。
アレンデール王国の女王として、平和な日々を過ごしていたエルサ。そんな彼女の耳に「不思議な歌声」が聞こえ始める。
その歌声に導かれるように、エルサは妹のアナ、クリストフ、オラフ、スヴェンとともにアレンデール王国の外へと旅に出る。
日本のキャッチコピーにあるように「なぜ、エルサに力は与えられたのか―」が明かされるストーリー。エルサの魔法には、ちゃんと理由があったのね。
裏テーマにあるのは「民族浄化」
"大人向け"といっても、「なぜ、エルサに力は与えられたのか―」に沿って物語は進むので、子供が楽しめないわけではないよ。
でも、1作目のキャッチーさが全くハマらなかったわたしが「2作目を観てみよう!」と思えたのは、大人が目を背けちゃいけない裏テーマがあったからだ。
それが「民族浄化」。
物語に登場する「ノーサルドラの民」にはモデルがいて、それが北欧先住民族「サーミ」。
北海道を居住地とする先住民族「アイヌ」やネイティヴ・アメリカンなどと同様、サーミも他の民族からの差別や迫害を受けてきた歴史がある。
ちなみにこの記事を読んでくださる皆様と共有したいのが「民族浄化」という単語の忌々しさ。
複数の民族が住む地域で、特定の民族集団が武力を用いて他の民族集団を虐殺・迫害・追放して排除すること。
…なーにが"浄化"だよ、胸糞悪い!!!って思わん?!他の民族を、武力で、虐殺・迫害・追放の、なにが浄化だよ!!!
ネタバレすると、アナとエルサのお父さんから語られていた、アナとエルサのおじいちゃんとノーサルドラの民との平和協定は嘘っぱちで、おじいちゃんがゴリゴリに民族浄化を進めようとしていたっちゅー過去が明かされる。
もちろん大虐殺描写が直球に描かれるわけじゃない。主軸は「なぜ、エルサ(以下略)」だし、子供も見れる仕様だから、そこまであからさまには描かれないよ。
でも、アレンデール王国とノーサルドラの民が暮らす森、この分段された世界に忌々しい歴史を感じとることはできる。
本作では、アレンデール王国の仕打ちに聖霊たちが怒り、その怒りは荒れ狂う自然の力で表される。
でもその怒りが人間同士のものだったとしたら?本作の結末のように、平和的解決にもっていくことができなかったとしたら?
きっと武力が新たな憎しみを生み、血で血を洗うような出来事が連鎖し…アレンデール王国は精霊たちの怒り、すなわち迫害を受けた人々の怒りで滅ぼされていたと思う。
アイヌやネイティヴ・アメリカン、サーミなどにルーツをもつ人が、過去の出来事についてどう感じているのか、わたしは知らない。
でも、わたしには本作のハッピーエンディングが、クエンティン・タランティーノ監督の「社会的不平等」を描いた3部作『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』みたいに
「残酷な現実をフィクションならではの力で覆してやる!」
っちゅう気概で描かれているようにも思えて。ま、これは深読みしすぎなんだけど。
でもさ、今でもあるじゃない。怒りや悲しみが、新たな憎しみを生むような出来事が。
本作ではエルサとアナが"架け橋"となり、過去の誤ちに向き合い、互いの世界に平和を生み出したけど、そのラストが「架け橋をつくらなければ憎しみは終わらない」って訴えているようで、心に響いた。
「民族浄化」に胸を痛める現代人は多いはずだけど、対象が「民族」じゃなくなっただけで、今でも誰かを「浄化」してるかもしれない。「人種」とか「性別」とかね。昔よりはマシかもしれないけど、マシってだけで、多分やってること変わらない。
そんな過ちを、わたしたち人間は繰り返しがちだから、本作の裏テーマが響く。
響くはずなんだよ。
うん、キャッチーな1作目より、意外と攻めてた2作目が好き。
偏見や差別をしっかり描いた『ズートピア』でも思ったけど、今後もこういう重めな裏テーマのあるディズニー作品を観たいな!
では。
参考文献
◆本日のおすすめ◆
「サーミ」を描いた映画といえば外せない。