欲しい気持ちは、そのままで。買い物前に「保留」という小さな習慣

これはものを買いすぎずに、しかし我慢しすぎないための工夫である。

欲しいものを見つけたとき、すぐに買うべきか、それとも我慢するべきか。迷う。心や体が疲れているときには、この小さな判断さえ負担になることがある。買えばお金が減る。買わなければ、楽しみまで我慢しているように感じる。どちらを選んでも、落ち着かない。

そこで取り入れたいのが、買うか買わないかをすぐに決めないこと。いったん「保留」にする習慣である。

 

買うかどうかを、今すぐ決めない

その場で結論を出さない。

買わないと決めたわけではなく、あとで改めて考えるのである。

もちろん「今すぐ買わなければ売り切れてしまうのでは」「セールが終わってしまうのでは」と焦ることもあるし、実際に売り切れてしまうなどして口惜しい経験をすることもある。一方で、そういう気持ちで焦って決めた買い物が、あとから重荷になる場合だってある。

そこで、買うかどうかを決める前に、少しだけ立ち止まることにする。

 

「心がしんどいとき、買い物をしたくなる」を知る

買い物をしたくなる理由は、物が必要だからとは限らない。気分を変えたいとき、退屈を紛らわせたいとき、嫌なことを忘れたいときにも、何かを買いたくなることがある。欲しいものに気持ちが向くのは、今の苦しさから少し離れようとする自然な反応なんじゃないか。

新しい服や本、雑貨などを眺めている時間は、目の前の悩みを一時的に忘れさせてくれる。商品を選び、届いたあとの生活を想像するだけでも、気持ちが少し明るくなることがある。買い物には、物を手に入れることだけでなく、期待や楽しみを感じさせる面がある(と思う)。

そのため、疲れているときほど通販サイトを開いたり、用事がなくても店を見て回ったりすることがある。

 

ただし、心身が疲れていると、いくつもの条件を比べて考えることが難しくなる。買ったものを本当に使うのか。似たものをすでに持っていないか。置き場所はあるか。今月の支出に無理はないか。普段なら考えられることも、疲れていると面倒に感じられる。

その結果、「考えるのがつらいから、とりあえず買ってしまおう」となりやすい。というか、よくなるのだ、わたしは。

反対に、欲しいものをすべて我慢しようと考え、必要以上に厳しい判断をすることもある。疲れているときは、買う方向にも買わない方向にも、決断が極端になりやすいのである。

 

しかし、まあ、恐ろしいのが、買い物をした直後はうれしかったのに、あとから後悔することだ。「また無駄遣いをしてしまった」「自分は我慢ができない」と、自分を責めてしまう。

とはいえ、買ったことを何度責めたところで、支払ったお金が戻るわけではない。それどころか、買ったものを見るたびに嫌な気持ちになり、せっかく手に入れたものまで使いづらくなる。

そこで必要なのは、自分を厳しく取り締まることではない。買う前の判断に少し余白をつくることである。

 

買い物前の「保留」とは

買い物前の保留とは、欲しいものを見つけたとき、購入せずにいったん記録しておくことである。スマホのメモ帳や通販サイトのお気に入り機能などは保留する場所として使える。

大切なのは、欲しい気持ちを消そうとせず、「欲しいものとして残しておく」ことだ。

 

欲しいものを見つけたら、やや抽象的な表現だが、その気持ちごと保留する場所へ移す。店頭であれば、商品名や価格をメモする。ネット通販であれば、お気に入りや欲しいものリストに入れる。

こうすれば、「今買わなければ、もう二度と見つけられないかもしれない」という不安を減らせる。

購入しなくても、欲しいものは消えていないし、あとから見直せる場所に置いてある。そう考えると、決断を急がずに済む。

 

そして保留は、「買ってはいけない」と自分に言い聞かせるものではない。買う可能性を残したまま、決定だけを先送りする方法である。

我慢しようとすると、欲しいものがかえって頭から離れなくなることがある。一方、「数日後にもう一度考える」と決めておけば、今すぐ結論を出す必要がなくなる。

だから保留したものを、あとで買ってもよいのだ。また、最終的に買わなかったとしても、それは最初から「買わなかった」のではなく、時間を置いた自分が改めて選んだ決断だ。だから、買う・買わないの選択肢について自分を責めてしまうことが減る。

 

時間を置くことで気持ちの変化を待つのがポイントだ。欲しい気持ちは、ずっと同じ強さで続くとは限らない。その場では強く欲しいと思っても、翌日にはそれほど気にならなくなることがある。反対に、何日たっても欲しい気持ちが残るものもある。

時間を置くと、商品そのものが欲しいのか、買い物によって気分を変えたかったのかが見えやすくなる。

ただし、気持ちを正確に分析する必要はない。「数日たっても欲しかった」「いつの間にか忘れていた」と気づくだけでも十分である。

 

「保留」を取り入れる具体的な方法

なお、保留のやり方に、厳密な決まりはない。細かいルールを増やしすぎると、それを守ること自体が負担になる。今の自分が続けやすい形を選ぶことが大切である。よって、以下はあくまでも「わたしの」事例である。

 

欲しいものをメモやリストに残す

まずは、欲しいものを記録する。

紙のノートでもいい。スマホのメモでもいい。商品名だけでなく、価格や見つけた店、日付などを書いておくと、あとで見直しやすい。もちろん、しんどかったり、めんどくさかったりするなら、商品名だけでいい。

余裕があれば、「なぜ欲しいと思ったか」を短く添えてもよい。

なお、理由を書いておくと、あとから必要性だけではなく、そのとき自分が何を求めていたのかも振り返れる。

 

保留する期間をゆるく決める

保留期間は、商品によって変えてもよい。

日用品や比較的安価なものは一日、服や本は三日、高価なものは一週間など、自分なりの目安を決める方法がある。

ただし、必ず決めた日数を守る必要はない。

しんどいときは、「今日は買わない」「明日もう一度見る」だけでも十分である。長く待つことよりも、その場で決断しなくてよい状態をつくることのほうが大切である。

 

ネット通販ではカートやお気に入りを活用する

ネット通販では、気軽に購入できるため、考える前に注文を終えてしまうことがある。

そこで、欲しいものを見つけても、すぐには購入画面へ進まず、お気に入りや欲しいものリストへ入れておく。

カートを保留場所にしてもよいが、店によっては商品が自動的に削除されたり、購入を促す通知が届いたりする。情報量や通知などが気になる場合は、スマホのメモなど、通販サイトから離れた場所に記録するほうが向いている。

セールや残りわずかという表示を見ると焦ることもあるが、安く買うことより、納得して買うことを優先すべきだと思う。

 

保留したものを見直すときの考え方

保留したものを見直す目的は、買わない理由を探すことではない。

だから、まだ欲しいなら、買ってもいい。時間を置いたあとも欲しい気持ちが残っているなら、買うという選択をしてよい。買うと決めたときは、「我慢できなかった」と考えるのではなく、「考えたうえで選んだ」と受け止めたい。

 

必要性だけでなく、今の自分に合うかを考える

買い物を考えるとき、「必要か、必要でないか」だけで判断しようとすると苦しくなることがある。生活には、必需品ではなくても、気持ちを支えてくれるものがある。本や花、好きな色の小物などは、なくても生活できるが、あることで少しうれしくなる。

そのため、必要性だけでなく、「今の自分に合っているか」という視点も加えてみるとよい。

 

心がしんどい日に保留しやすくなる工夫

心がしんどいときには、普段できていることができない日もある。その日の状態に合わせて、保留の使い方を変えてよい。

 

すべての買い物を保留しなくていい

買い物をするたびに記録し、何日も待つ必要はない。少額のものや、いつも買っているものまで保留すると、判断の回数が増えて疲れてしまう。迷ったものだけ保留する、高価なものだけ一晩置く、ネット通販だけに使うなど、範囲を限定してよい。

保留は自分を管理する制度ではなく、判断の負担を軽くするための仕組みである。

 

生活必需品や急ぎのものは例外にする

食料品や薬、壊れた生活用品の買い替えなど、すぐに必要なものまで保留する必要はない。必要なものを買うことに罪悪感を持たなくてよい。日々の生活を保つためにお金を使うことは、無駄遣いではないはずだ。

「迷ったものだけ保留する」という程度でも、この習慣は十分に役立つ。

 

守れない日があっても、自分を責めない

保留せずに買ってしまう日もあるだろう。そのときに、「また失敗した」「自分にはできない」と考える必要はない。保留は、自分を採点するためのものではないからである。

買ったあとに気づいたなら、「今日はすぐに決めたかったのだな」と受け止めればよい。次に迷う買い物があったとき、また保留を試してみればよい。

 

欲しい気持ちは、そのままでよい。ただ、今すぐ答えを出さなくてもよいのである。