決して“仕事で”忙しいわけではない。むしろここ何ヶ月かはろくに仕事ができていない。理由は育児である。自分1人でできることが少ない我が子を生かす毎日は、時間がゆっくり過ぎゆく割には想像以上に“忙しい”。ただ、「我が子と向き合う時間を削ってまで仕事をやりたいか」と自問自答した時、答えはNOだった(厳密には「絶妙にNO」。時間を削ってでも仕事をやりたいと思う時もある)。そんな折、本屋で見かけ、手に取ったのがこの本だ。過去にカル・ニューポートの『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』(早川書房・2021年)を読んでいたこともあって、興味が湧いた。
この本が示すのは、「量より質の働き方へ、意識の転換をどう実現するか」といった点だ。
先に述べると、新型コロナウイルスのパンデミックを機に、その重要性が再認識されるようになったエッセンシャルワーカーのような、在宅勤務/リモートワークができない職業の人にとってはやや「無茶言うな」な内容ではある。ただ、やはり新型コロナウイルスのパンデミックの影響力は大きいのだと改めて感じさせられる。以下は本書の導入部分と第1章のはじめにで登場する言葉だ。
知的労働の問題は生産性そのものにあるのではなく、生産性の誤った定義にあるのではないか?
僕らが振りまわされている「生産性」という言葉には、一貫した定義すらないのではないか?
「そもそも生産性とは?」から始まることに心が動かされた。この疑問から始めることで、「仕事を減らす」という主題が捉えやすいのではないかと思う。
なお、本の中で特に印象に残ったのは、やはり「パート2 仕事の減らし方」より、「第3章 削減ーやるべきことを減らす」「第4章 余裕ー心地よいペースで働く」で紹介されている、実践的な行動プランである。特に、「行動プラン3:仕事はプル方式で取りにいく」は目から鱗だった。仕事ややるべきことの管理としてTO DOリストはよく活用しているが、タスクが多すぎて頭がパンクしそうになることがたまにある。ここで登場するプル方式の活用は、これまでのように頭がパンパンになるのを防ぐことにつながる。プル方式については、従来のプッシュ方式の説明とともに、以下に引用する。
プッシュ方式では、各工程での作業が終わりしだい、次の工程へと作業を送りだす。仕事が前の工程から押しだされてくるイメージだ。
プル方式では逆に、各工程に空きができたタイミングで新しい仕事を取りにいく。後ろの工程のほうで仕事を引っぱってくるイメージだ。
この方式で仕事を管理する際、TO DOリストよりやや手間のかかるリストをつくる必要は生じる。本文で紹介される「保留ボックス」と「実行リスト」という2種類のリストだ。単純なTO DOリストの方が「次に何をすべきか」を理解しやすい気もする。簡潔だし。でも、「保留ボックス」と「実行リスト」を作り、実行リストに入れるプロジェクトは最大3つに絞り込む、実行リストに空きができてから保留ボックスにあるプロジェクトを移す、などの制限が、次から次へと追い立てられるように行う仕事のやり方から自身を解放してくれる。誰に急かされたわけでもないのに、「やらなきゃ」と焦ってイライラしてしまうような私にはぴったりだと感じた。
この本を読んで、一貫した定義すらない「生産性」に疑問を抱くとともに、そんな「生産性」に振りまわされて生活する必要はないな、と感じた。私が表に現すべき仕事(ライティングだったりペインティングだったり)をするために、そして、それらの仕事のクオリティを高めることにつながるなら、もう少し速度を落とした働き方をしてもいいんだ、そんなことも思った。
