片野秀樹『休養学: あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社・2024年)

休養学―あなたを疲れから救う

この本は日々の疲れに悩む人に向けて、睡眠だけでなく、睡眠「以外」の休み方について教えてくれる本だ。

 

この本を選んだきっかけは、夫が妙な疲れ方をしていたから。休日になると一気に活力がなくなり、「仕事をすれば元気になる」と言いながらも休日になかなか起きれないうえ仕事にも集中できない様を見ていて少し不安になったので、半ば強制的に「読みなさい」とこの本を買って渡した(エゴです)。

とはいえ、夫は視覚情報より聴覚情報優位なため、結局本を読破したのは私なのだが。

 

この本では、疲労の正体(「疲労の『もと』」)としてストレスをあげている。

そのうえで、読んでいて心に響いたのは、144ページに登場する「ストレスコーピング」という方法だ。

ストレスコーピングは「ストレスがたまったときに備えて、気分を切り替えられることのリストをつくっておく」というもの。

本文中では「娯楽とまではいえなくても、『こういうことをするとなんとなく気分がよくなる』という趣味嗜好」として、以下のことがあげられていた。

  • 鼻歌をうたう
  • 爪を切る
  • 炭酸飲料を飲む
  • 窓を開けて空気を入れかえる
  • 歯磨きをする

引用元:片野秀樹『休養学: あなたを疲れから救う』p.143〜144(東洋経済新報社・2024年)

下記の説明(↓)が非常にわかりやすい。

「この曲を聴くと自分はストレスが減少した気がするなあ」
というものがあれば、忘れないうちにリストに加えておきます。
こうしておけば、
「ああ、いまストレスを感じたな。好きな曲を聴いてちょっとリラックスしよう」
「気持ちが焦っていたけれど、自分の好きないつものリズムでちょっと落ち着こう」
というように、適切な行動がすぐとれるようになります。

引用元:片野秀樹『休養学: あなたを疲れから救う』p.144(東洋経済新報社・2024年)

私は心理的ストレッサー(不安や緊張や失望、悲しみなどの感情を自分に与える出来事。一般的にはプラスとされる出来事もストレスとなる場合がある)や社会的ストレッサー(家族関係や友人関係など人間関係や、お金など経済的な問題がもたらすストレス)でどっと疲れることが多いうえ、感情的になりやすいので、ストレスコーピングは実践すべきだろう。

 

が、ここまで書いてみて思ったが、一部の内容は「休養」というより「メンタルヘルス」に役立つものであり、人によっては「この本、思ってたんと違う」となるのではないか。

1冊読み切った時にも思ったが、疲労や休養に対してものすごーく深掘りした本ではない。

たとえば、もしこの本を読もうかなと思っている人が、なんとなくでも「疲れたときに甘いものは間違ってるんだろうな」「エナジードリンクやお酒に頼るのはよくないんだろうな」と察しているのであれば、この本曰く、全くもってその通りだから、わざわざこの本を読む必要はない、といった感じ。

また、「どんな休み方をすれば最も効果的に疲れがとれるの?」という疑問を持って、この本に興味を抱いた人、すなわち、この疑問の解決策をいち早く知りたいと願う人にとっては、第1章は「読まなくていいかな〜」と感じてしまう内容かもしれない。「序文が長い」と感じてしまうやも。

 

とはいえ、114ページから登場する「休養の7タイプ」の定義は知っておいて損はないと思う。

なぜなら、この本を読んでみた私の気づきだが、夫と私では「疲れがとれて、活力が得られる」方法が全く違うことに気づかされたから。

夫はこの本で登場する「心理的休養その1 親交タイプ」、社会や人と交流したり、自然や動物と触れ合ったりすることで疲れがとれ、活力が得られるという。これを知って、彼が休日になると元気がなくなるのもなんとなく合点がいった(仕事してないとつまらないみたい)。

私は割と、疲れたり心がモヤモヤしたりすると、部屋や不用品の片付けを始めることが多いのだが、これはどうやら「社会的休養 転換タイプ」らしい。まわりの環境を変えることで気分をリセットする、とあってものすごく納得した。

 

この本は、疲労について考え始めたばかりの人にはおすすめできる。

だが、すでに自身の疲労と向き合っており、解決策としての休養を深掘りしたい人には少し物足りない本といえそうだ。

それから、もし本を読むのが苦手な(視覚情報優位ではない)場合には、著者の片野秀樹氏が「休養」について語っているYouTube動画(後述する2本)があるので、そちらを視聴した方が腑に落ちるかもしれない。

 

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