冒頭で記されている言葉を借りると、“主に西洋の哲学について教養として学ぶための本”である。哲学を、その概念からわかりやすく解説したものであるが、もっともっと捉えやすく説明するならば、「おわりに」に書かれた言葉が最適だと感じた。
本書を「哲学入門書に対する入門」と考えることができます。
この本を選んだ理由は、哲学に興味があるからだ。
とはいえ、小・中・高と学校で習うべき歴史(日本史・世界史)の授業に不真面目だった私は、「哲学」という学問に限らず、何かを学ぶ上で大切になる「歴史の流れ」というものについての教養が全くない。
だから、いわゆる「哲学史」を読んでも、自分には理解できず、読み進められないと踏んだ。だからこそ、“マンガ版”と銘打ち、“教養として学んでおきたい”と書かれたこの本を選んだのである。
この本を読んで心に響いた箇所は複数個ある。
まず、第3章と第4章、哲学の歴史と概念を知っておこう①と②は非常に役立った。
序章〜第2章にもある通り、哲学は問いそのものを問うような学問であるから、哲学の歴史は、過去の哲学を疑い批判する、それをまた疑い、批判する……の繰り返しであることが理解できた。
次に、第6章 現代社会で哲学は役に立つのか?が難しい問いで面白かった。以下の1文を読んで、「哲学」という学問のブレなさに痺れた。
まったく役に立たなければ、そもそも学問として成立するはずがありません。“役に立つ”という言葉をどのように理解するかが問題になるわけです。
実用性ばかりを求めてしまう人にとっては、哲学は役に立たないうえ、問い直し(本文中の例えではちゃぶ台返し)をしてくるから、鬱陶しいことこの上ない学問なのかもしれない。
だが、哲学が特定の分野に限定されず、学問領域を横断し、広い視野を持って取り組めるというのは、魅力的だと私は思う。
最後に、コラムの内容にも学びがあった。
私は人と話す時、議論に慣れていないので、つい感情的になったり、話し合うのに疲れてしまって会話を中断したくなったりすることがある。
そのような態度について言及する箇所があり、「人と話す時はこのことに注意しなきゃ」と意識を向けやすくなった。
その主な内容というのが「ほらふき男爵(ミュンヒハウゼン)のトリレンマ」(p.169)というもの(↓)。
“ある議論を根拠付けるためにその理由を問い続けていくと、次に示す3つのうちどれかに必ず陥る”
- 無限背進:相手の答えに対して、その理由を延々と問い続けていく
問題点→最終的な根拠を出せない、いつまでも議論が終わらない - 循環論:理由を問い続けると、いつの間にか最初の根拠に戻ってしまう
問題点→議論がぐるぐる回ってしまう - 独断的な中断:理由を問われ続けている途中で、「これが最終的な理由だ」と議論を無理やり打ち切ってしまう
問題点→議論が途切れてしまう
著者はこの3つについて、“議論を行う際、誤った根拠に導かないための注意点という意味で、予備知識として知っておいたほうがよいし、こういった結果に陥ることをあらかじめ想定した上で議論を行うことが大切になってくると思います。(p.171〜p.172)”と記している。
そのほか、p.200〜の「コラム③誤解だらけの『弁証法』」もタメになった。
まず、ソクラテス的というか、プラトン的な議論のやり方(問答法)は、相手に反論するのではなく、相手の主張をすべて確認した上で、その中に出てくる矛盾を指摘することなのだが、このやり方は相手をいかに潰すかの技術であり、自分の意見を出す方法ではない(なるほど)。
加えて、この問答法をベースに、日本人の議論があまりうまくいかない理由については、お互いの論点が異なっているのに自分の主張のみをぶつけ続けるからで、それゆえに、相手を的確に批判できない、と記されている(なるほど!)。
そもそも、お互いが議論の同じスタート地点に立てていないからうまくいかないのだと思い知らされる。
暗黙の了解というか、ハイコンテクストな文化圏ゆえの弊害というか、本当だったらお互いが認識しているもの、見ている世界は全く別物であるという自覚を持って、話し合いを進めなければいけないところを、なんとなーく「同じもの見てるよね、ね!(圧力)」から始めるから変な方向に進んでしまうし、うまくいかないんだなー……と思った。
私の場合、私との会話に付き合ってくれる夫は、議論慣れしているうえ、前提のすり合わせを望めば待ってくれるし、導いてくれるのだが、身内との対話(特に父)とは、このようなやりとりで話した経験が少ないので、話がこじれることが多く、心が消耗しがちであった。
しかし、その理由がひとつ、この「哲学入門書に対する入門」であるこの本のコラムによって解明されて、非常にスッキリした。あとは実践あるのみ!
なお、この本を読んで、やはり、歴史の流れ、過去の出来事を理解していないと、哲学や哲学史の根本を理解できないと感じたので、「入門書の入門」であるこの本に触れておいて本当に良かったと感じた。
本書の「はじめに」や「おわりに」で触れられているように、「哲学入門書に対する入門」と位置付けられる本なので、
- 教養としての哲学を学びたい人
- 哲学の概念や歴史の流れを大まかに知りたい人
- 興味があるからこそ、挫折しないように、わかりやすい本からステップアップしていきたい人
におすすめの本である。
