エミリー・オスター著、堀内久美子訳『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』(サンマーク出版・2021年)

米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト

 

この本は経済学者である著者が、子育てに関する膨大な数の「研究」にあたり、親にとっても子どもにとってもベストな形の子育てに役立つ情報を提供してくれる本だ。

 

この本を選んだ理由は以下の通り。

  • 妊娠・出産を経験することになったから
  • 日本の育児書の書き口にピンとこなかったから
  • 「研究」データをもとにした内容は冷静で受け止めやすかったから

妊娠・出産を経験することになった私は、いわゆる「体験談」「経験則」を参考にするのもよいが、科学的なデータをもとにした情報を通じて、自分の体に起こる変化や育児について知りたいと感じていた。

そこで手に取るのが育児書なのだが、どうも日本の育児書の内容は感覚的というか感情的というか、具体的な数値や内容に乏しい印象があった。

もちろん、日本で販売されている日本人著者の育児書全てがそうだというわけではないと思うが……私個人が「ママを選んで生まれてきた」的な文言があると全力で否定したくなるタイプなのだ。

そんな時、手に取ったのが『米国最強経済学者にして2児の母が読み解く子どもの育て方ベスト』だ。

 

日本語タイトルはほんのり胡散臭いし、帯にデカデカと「成田悠輔氏推薦!」とあるのも胡散臭さのもとだが、原題は「Cribsheet」。これは日本語で「カンニングペーパー」を意味する。

これ、熟読すると原題の意味がよく分かる。

決して著者が書いたもの全てが「正しい答え」ではない。だが、各家庭なりの答えを導き出すのに役立つ「カンニングペーパー」であるのは確かだ。カンニングペーパー持ち込み可な試験で、自信がないときにカンニングペーパー見れたら安心しない?


この本は、読んでいて心に響く箇所がいくつもある。

心に響くというのは、感銘を受ける、というよりは「どうすればいい?」と悩んだり焦ったりした時にパニックにならずに済む具体的な数値や研究結果が記載されていて安心できると表現した方がいいか。

たとえば、「『母子同室』はいいこと?」(p.68〜)や「新生児は『体重』が減る」(p.74〜)、「生後2か月までは『雑菌』に注意」(p.105〜)などはこれから待ち受ける不安要素を軽減してくれる内容だ。少なくとも私は、出産後の心づもりが少し楽になった。

本屋を覗く度、「全然情報がねえな……」とがっかりしてしまう、産後の母親の心身の状態についても触れられている(3章 産後のママ 「産む前」とこんなに変わる)。


特に、私が「この本を参考に、赤子を生かすぞ!」と気合いが入ったのは乳幼児突然死症候群SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)に関連する6章、「赤ちゃんを寝かせる どこで、どんな姿勢がいい?」である。SIDSは、赤ちゃんが何の予兆もなく眠っている間に突然死んでしまう原因不明の病気である。

すべて生き物は、生まれてきた時点でいつか死ぬことが決まっているし、死に方も死ぬ瞬間も選べないことは重々承知だ。でも、ただでさえ、妊娠中も不安でいっぱいなのに、生まれてきた子どもが突然死ぬというのは非常に悲しい出来事だ。

だから、できるだけ生かすためにもリスクを減らす方法を知りたかった。そして、私はこの本を通じてリスクを減らす方法を学んだ。

それから、働く両親にとって気になる内容も収録されている。それが9章「『家』にいる?『仕事』に行く? 専業主婦か仕事復帰か」、10章「お世話は誰がする? 『親以外』が保育することのデータ」だ。

この本は徹底して、こういうデータがある、と冷静に提示してくれる本だ。子育てする人々の選択を肯定したり否定したりする内容ではない。だから読みやすかった。


最後に、統計データと科学的エビデンスをもとにした育児書、ではあるものの、堅苦しい本ではないことをお伝えしたい。時々、著者自身の子育て経験談がジョーク混じりで語られる。それがふふっと笑えるような可笑しみがありながら、とってもリアルで(大変そうで)それがまた良かった。

 

子育てや子どもの成長に向き合う人、子育てに関する統計データに関心がある人、理路整然とした書籍が読みやすい方、「スピリチュアル味のない育児書ってのはないのかよ〜!」とお思いの方はぜひ。