今後、よりいっそう「仕事」として美術・芸術に向き合おうと考えている私にとって、非常に励まされる1冊だった。
ただし、美術家の経済面が気になる人、特に子どもが美術家になりたいというのを不安に思う親御さんにとっては、この本に失望してしまうかもしれない。
なぜなら、美術でメシを食うのは難しいと感じさせるような言葉は続くし、作家さんの仕事の向き合い方を取り上げる章では、制作と発表のためお金が出ていく一方、収入は……といった描写がなかなかリアルだからだ。
(なお、美術を仕事にといった趣旨の本の中には、売れるための指南であったり、もっとマーケティング視点な本は他にもある)
この本の「はじめに」ではいきなり、美術家は“職業であって職業ではない”、“美術家になったところでだれが喜ぶわけでもないし、美術家をやめたところでだれに迷惑がかかるわけでもない”、“美術家ほど自由で楽しい反面、不安定できびしい職業はない”といった言葉が続く。
それほど、美術家は魅力的で困難な職業なのである。
それでも、本文に登場する作家陣(合計6人の作家が登場する)は、ひたむきに自らの表現に向き合い、そのほとんどが正直、自転車操業的な生計の立て方になってはいるものの、作品を作り続けている。
このことに、私は痺れた。
言ってしまえば、やるか、やらないか、それだけなのである。
紹介されている作家は画家、彫刻家、メディアアートやインスタレーション作家で、制作場所やお金の出入りなど知りたい部分がいっぱいな人たちばかりでそれも助かった。リアルなおかげで、私は逆に励まされたのだ。
困難であってもやるという気概が感じられて(当人は困難だと思っていないかもしれない)とてもワクワクした。
作家陣が寄せる、これから美術家になる人へのひとこともまた痺れる。誰も難解なことは言っていない。示されていることは簡潔で、比較的誰にでもできることだけど、これまた、やるか、やらないか次第といった言葉ばかり。
それがまた素敵だった。
この先の人生、まだまだ色々ありそうだけれど、お金に苦しむこともあるかもしれないけれど、死ぬまで表現を続けてやろうと奮い立ったのでありました。