創作活動の道を示す励みになる。坂口恭平・道草晴子(絵)『生きのびるための事務』(マガジンハウス・2024年)

生きのびるための事務 (SHURO)

 

双極性障害と診断されたとき、坂口恭平『坂口恭平 躁鬱日記 』(医学書院・2013年)を読んで、同じ双極性障害の他者の心のアップダウンを知り、この苦しみを知っている人が他にもいるのだと励まされたことを覚えている。

そんな彼の新作が、『生きのびるための事務』である。

 

彼自身が冒頭で語っているように、坂口恭平さんは色々な創作活動をしていて、それで生計を立てている。

そのため、創作活動を続けていきたいと考えているものの、その道が漠然としすぎていてどうすればいいか分からないという人や、他者(家族や知人など)からの強い反対を受けていて自信を失いかけているという人には励みになる本といえよう。

ただ、物語後半に登場する著者の飛び抜けた行動力を目にして、自信を失う人もいるかもしれない。

本文中では、《自信》なんか全く不要、《好き》だけが重要、とあるのだが、彼の訴えることすべてに反発してしまう人もいるだろうな、と思った。言っていることは分かるが、それができなくて困っているのだが?!となってしまう感じがして。

そういう点ではなかなか難しい本でもある。

それこそ私は以前読んだ鎌田浩毅『新版 一生モノの勉強法』(ちくま文庫・2020年)で登場した“「好きなこと」だけでうまくいくのは難しい”や“「人よりできること」という「武器」を磨く必要性”のほうが腑に落ちているし。

もしかすると、坂口恭平さんも鎌田浩毅さんも言っていることは結局同じなのかも……と思いつつ、『生きのびるための事務』の登場人物「ジム」のように何事にも動じないで自分の人生を生きることはやっぱりそう簡単ではないと思ってしまうのだった。

 

とはいえ、今の自分の24時間の過ごし方を円グラフに書き、それと、10年後の自分が同じ時間をどのように過ごすかを考えて書いた円グラフを見比べて、今という現実が10年後の現実につながるように過ごすという《やり方》は、具体的に未来を創造する方法の一つだと思って実践している。

 

先述したように、

  • 創作活動を続けていきたい人
  • その意気込みはあるけど、具体的にどうすればいいか分からない人
  • 創作活動について、他者(家族や知人など)からの強い反対を受けていて自信を失いかけている人

には励みになる本だと思うので、気になる人はぜひ読んでみてくださいませ。