いつか絶対全部食べる……いのうえさきこ『東京世界メシ紀行』(芸術新聞社・2018年)

東京世界メシ紀行

2016年3月からオンラインに移行した雑誌『クーリエ・ジャポン』に掲載されていたマンガ。まだ雑誌として刊行されていた当時に読者だった私は、このマンガでエチオピア料理の主食であるインジェラを初めて知って「どんな味なんだろう……」と妄想していた。

長い年月を経て、連載されていたマンガを1冊にまとめたこの本と出会い、購入、読み切ったわけだが、やっぱりめちゃくちゃ美味しそうだった!!!

 

たとえばカンボジア料理に登場するプラホックという魚の発酵食品は「くさいけど」「おいしい」が連呼されていて興味をそそる。

エチオピア料理はいわずもがな、インジェラが食べたい。

パレスチナ料理で登場するパセリが主役のタブーリサラダは、私はパセリが苦手だというのに、食欲をそそられる見た目で食べたいと思ってしまう。

マレーシアのフィッシュヘッドカレーは見るだけでよだれが出るし、アフリカ・トーゴの料理で登場するヤムイモのおもち「フフ」はめちゃくちゃ口に含んでみたいビジュアルをしている。

 

なお、このマンガはマンガのイラストだけでなく、写真も掲載されている。マンガ冒頭には実際のお店の写真が、料理のビジュアルはまず写真で登場するので、リアルな情報もまたよだれが出る理由の一つである。

とは言いつつも、マンガとしても純粋に楽しめる。

登場人物2人のテンポのいいかけ合いと、取材をもとに描かれた店主の言葉がますます異国情緒へのワクワクを際立たせる。

マンガならではの魅力をふと考えてみたが、料理特集の雑誌などに記載されている文章表現に比べると、人物の食べる動作が図式化される分、ライブ感というか没入感があるのかもしれない。

まあ、もしかすると料理が美味しそうで魅力的に感じられるのは、実際の料理が当然美味しくって、そんな食体験をした著者の感動がそのまま伝わっているからかもしれない。だとしてもすごいけど!