2020年〜2022年まで武蔵野美術大学通信教育課程に通っていたのだが、そこではじめて「哲学」を受講した。通信教育なので、基本的には教科書と参考書、課せられるレポートと試験のみでしか「哲学」には触れられないが、その世界があまりにも面白く、それ以来、哲学への関心が高い。
とはいえ、王道ともいえる哲学者たちの名前を知っていても、具体的に何をやったのか、何を提唱したのか、スラスラ暗唱できるわけではない。そのうえ代表的な哲学者たちに関連する書籍を手に取ってみたものの、内容がやや難解に感じられ、読み進めるのに苦労してしまった。
その点、大手受験予備校の公民科講師によって書かれたこの本は、まるでウィットに富んだ塾の講義を聞いているかのようで非常に読み進めやすい。
哲学の分野で「〜主義」とか「〜転回」とか言われても、これまではなんとも専門的な解説に対して「……はあ?」みたいな態度になっちゃったものだが、この本では歴史的背景や宗教観なども関連づけて説明してくれるので、当時の価値観でどういう意図だったのかが理解しやすかった。
加えて、それぞれの哲学者自身の変態っぷりや提唱された内容に違和感を覚える部分へのツッコミなども満載で、読者を飽きさせない工夫が凝らされている。
(ただし、たとえなどに用いられている漫画などに対するリテラシーは多少必要かもしれない。著者との世代が若干ずれているのかもしれないが、「たとえに使われてる漫画自体よく知らない……」となることもあった)
この本は倫理入門にうってつけなのではないかと思う。正直に申し上げると、倫理が何を学ぶ学問なのか、今の私にははっきり答えることができない。けれど倫理の教科書や参考書に触れる前にこの本を読むことで、倫理の世界への理解がより深まるのではないかと感じている。
ちなみに、世界史の基礎的な知識もおさえておくとより読みやすい。
ムサビ通信の教科書もめちゃくちゃ面白いのでおすすめ。文章はややかため。