まず、自分の新生活を振り返ってみた時、それほどフレッシュさを感じられないことが面白かった。
ひとり暮らしを始めたきっかけが皮肉にも「外来治療」だったことや、監視されていたわけではないけれど、心配性の親がまあまあ干渉してくるひとり暮らしだったことから、「新生活」の響きから想像されるものはあまり感じてこなかった。
そのうえ、私のひとり暮らしは長くは続かない。ひとり暮らしから半年後、今の夫と出会い、交際と同時に同棲を始めたため、そこからはずっとふたり暮らしである。私にとって「新生活」とは、そのほとんどが、夫の事情による引っ越しで生じた「ライフスタイルの変化」を指す。
で、だ。
家事を楽にしてくれる便利家電や、ひとり暮らしの寂しさを埋めてくれたぬいぐるみ、ライフスタイルの変化に対応する際に役に立った本など、あなたの新生活のスタートダッシュを支えた逸品をブログで紹介してみませんか?
というはてなブログのお題を目にし、「私に何が書けるだろう」と悩んだ。
私はあまり家電に興味がないし、ひとり暮らしの寂しさは、多分私以上に寂しさを感じていたであろう両親のおかげで(せいで)感じることがなかった。
ただ、大体2年おきくらいに行われる引っ越しを思い返してみた時、ライフスタイルが変化しても変わらずそこにあるものを見つけた。
それが本棚だ。
本棚に納められている本のラインナップは常に変化しているが、そういえば、本棚だけは、どんなに家の間取りが変わろうとも(それはもう信じられないくらい広くなったり、狭くなったりと目まぐるしく変わってきた)絶対にそこにあった。
私たち夫婦は「広い家に住みたい」とか「どこそこに住みたい」といった願望が薄く、その代わりといってはなんだが、交通の便がいい代わりに狭い家を借りることが多く、よって各々の部屋を持つことはほとんどない。
だが、本棚は、どんな間取りであろうとも、私が主に活動する範囲に必ずある。
そしてそれは、部屋の代わりになっているように思える。「この本棚は私のプライベートですよ」といった具合に。
別に、夫に隠していることが本棚の中にある……というわけではないが、「自分だけの場所」を大事にしたい気持ちはある。夫にはどうやら、そういうこだわりは、「必ず自分だけの部屋がほしい」みたいなこだわりはないようだが、私は、部屋である必要は決してないが、多少はほしい。
だから、私だけの本棚がある。
かつて本棚を共有していた時期もあったが、その時は、本棚の中でしっかり「夫の本」と「私の本」が分かれていた。だから本の背の高さやカテゴリごとに並べ分けられている部分と、高さがバラバラだったり横向きで置かれていたりする部分がはっきり分かれていた。
先でも述べたように、本のラインナップは変化し続けているので、夫と出会った時と同じ本は並んでいない。でも並べ方やカテゴリ分けの癖はほとんど変わっておらず、いつ見ても「う〜ん、私だなあ」と思わせてくれるので、どんなにライフスタイルが変化しても、私の心が保たれる。
今の家も近いうちに引っ越すことになりそうだ。でも、やっぱり、本棚は絶対についてくる。新しい家に。また次の家にも、その次の家にも。中に収まるラインナップは変われど、本棚がない家になることはない。
だから本棚が、私にとっての新生活が捗る逸品である。