なんだか心惹かれてしまったスキー場を描いた作品。
2020年2月26日〜10月11日まで国立近代美術館で開催されていた「ピーター・ドイグ展」。
2020年に入った直後あたりから気にはなっていたのだが、なぜか会期終了ギリギリまで足を運べずにいた。今思うと、ミーハーだと思われたくない欲みたいなものがあったのかもしれないが、それをまた今思い返すと、そんなことを思う意味が分からず、とても恥ずかしい。
私は今、武蔵野美術大学造形学部通信教育課程で学んでいるのだが、スクーリングのときに出会った作家の一人がピーター・ドイグに影響を受けており、自身の作品に投影させていた(しかも、それがめっちゃカッコ良かった)。それで「あ〜、『ピーター・ドイグ展』行かないとなあ…」とぼんやり思っていたら、大学時代の後輩が会期が10月11日までであることを教えてくれた。そこでようやく「見逃したらいけない」と足を運ぶに至ったわけである。
この2人のおかげで足を運べたといっても過言ではない。
ピーター・ドイグ展
ピーター・ドイグ(1959-)は、ロマンティックかつミステリアスな風景を描く画家です。今日、世界で最も重要なアーティストのひとりと言われています。
冒頭で述べた“ミーハーだと思われたくない欲”は多分、私が「ピーター・ドイグ展」を知るまでピーター・ドイグの存在を知らなかったことにある。別にそれまで存在を知らなかったとしても「なんか気になる」なら観に行けばいいのにね。
観に行って面白かったのは、強烈とは違う、でも印象に残らないほどボヤけてもいない、ちょっと気の抜けた感じの絵が可愛くて、ものすごく奇妙に感じられたこと。注意してほしいのは、決して「奇怪」ではないということ。
「奇妙」である。
といったって、描かれているものは決して人をゾワゾワさせるものではない。…いや、いくつかの作品は、ボートの上でこちらを見つめる亡霊のような女性を描いたものや事件性を匂わせるものもあったけれど、怖い絵、というわけではない。
こちらがボートの上でこちらを見つめる亡霊のような女性がいる作品。
こちらがややきな臭い(事件性を匂わせる)作品。制作背景には『13日の金曜日』などがあるのだとか。
とっても説明しにくいのだが「この説明しにくさがピーター・ドイグってことなのかなあ…」と私は思った。
特徴的な直線(横向きの作品は画面が三分割されている印象がある)や鏡像のような作品、人物と人物との間の絶妙な距離感だとか、なんかこう、いちいち人の心に引っかかる「何か」が彼の絵の中にはあったのだ。
あと、純粋に、作品一つ一つが、デカい。
それも記憶に残っている。もちろん、でかけりゃいいってもんでもないけど、でも、やっぱり、圧倒されるものである。
「飛びすぎ、飛びすぎ!」とツッコミを入れたくなる作品。でもなんか清々しいよね。
飛びすぎな子を見つめる彼らの方に目がいってしまった。
「インパクト抜群の作家か」と問われれば、それはなんかちょっと違う気がすると思うのだが、それでも作品とピーター・ドイグの名がすぐに思い出せるほどに心に残る。
この掴みどころのない、でも確実に、人の心を掴んでくる作家に、私は心底…スゲエなって思った(語彙力)。
◆本日のおすすめ◆
図録のフォントと配色が好き。