【イベント出展の売上を考える】グッズの品揃えに要注意。選択肢は少なめが◎!?

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2020年1月22日(水)〜26日(日)まで個展を開催していた。個展を終え、書き仕事に専念していたのだが、それも落ち着いてきたので、そろそろデザフェスと個展の生々しい裏話をしようと思う

「生々しい」とは書くものの、デザフェス出展や公募展、企画展の参加、個展の開催などを続けてきた甲斐もあって、内容は明るいものになりつつある。「生々しい」の響きからゲスゲスにゲスい内容を求める人にとっては少々退屈かもしれない。

とはいえ、経験を積んだからこその「気づき」である。

「画家」や「アーティスト」の肩書きに浮世離れした印象を抱かれやすいが、決して「売る」を諦めている職業ではない。制作活動やおまんまを食うためにはお金が必要だ。

「売る」に関心の高い人にとっては当たり前の内容かもしれないが、わたしはわたしの経験をそのまま書く。失敗談だって晒す。なので、そのような「生々しさ」を楽しんでいただけると幸いだ。

 

 

グッズ販売のコツ

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本記事では「グッズの種類・数」について気づいたことを書く。

その前にまず感謝を伝えたい。

2020年1月に開催した個展は、ありがたいことに「黒字」だった。ここでいう「黒字」は「ギャラリーレンタル分は売上を得た」という意味だが、5日間のギャラリーレンタル代を得ただけでも、わたしにとっては一歩前進である。

お越しくださった皆様、絵やグッズを購入してくださった皆様、本当にありがとうございます

 

デザフェスで気づいたこと

で、「グッズの種類・数」について。

わたしは今回、個展でグッズを販売する際、種類と数を厳選した

わたしの手元には、「売る」戦略を無視して作ったグッズがいくつかある。というのも、デザフェス初出展から3回目までは「やってみよう」精神だけで突き進んできたからだ。要するに、「こんなん作ってみたらどうかな?」で種類と数を作りすぎたのである

そのひとつが「缶バッジ」。

「心臓人間ちゃん」というめちゃくちゃ可愛いキャラクターの缶バッジなのだが(自画自賛)、「心臓人間ちゃん」の姿は全部で3種類。それにそれぞれ3つの異なる背景色を用意したので、全部で9種類。それを20〜30個ずつ発注したため、やけに種類と数が多いのだ。

時々「作りすぎたかな」と思いつつ、めちゃくちゃ可愛い缶バッジなので後悔はない。

ただ、デザフェス出展のたび全種類展開するとやや売れ行きが鈍い。そして、ふと気づく。

 

「・・・もしかして『選ぶ』ってめんどくさいのでは?」

 

品揃えを整理しよう

このブログでも再三自論を展開しているが、アートイベント「デザインフェスタ」は広い会場にさまざまなアーティストさんが集結している「イベント」、「お祭り」だ。

お客さんは、新たな作品との出会いや大好きな作家さんの作品を求めてやってくるわけだが、あまりにも広いイベント会場で各ブースをじっくりと見ていては日が暮れてしまう。デザフェスは2日間開催されるが、多分2日間では足りない。

そのような環境下で、全9種類の缶バッジの中から好みのものを選ぶのは少々めんどくさいはずだ。そのうえ、わたしは決して缶バッジ「だけ」を販売しているわけではないから、「見るものたくさん」なブースというのはまあまあめんどくさいのかもしれない。

2020年1月に行った個展、これは「イベント」ではないから、デザフェスと比べて足を運んでくださる人の数は少なくなるが、お客様1人1人が作品と接する時間は長くなる。だからといって、やたらめったら作品やグッズを持っていったところで全てを見てもらえるとは限らない

そこでわたしは個展のテーマを決めたとき、以下の条件を設定した。

  • 個展のテーマからズレている作品は展示しない
  • 販売したいグッズを厳選する

個展のテーマは「生と死」であり、かつ絵画作品を展示したかったため、わたしのグッズの中にある「写真作品のZINE」は持っていくのを控えた。また過去作品も、モチーフとなる「内臓」から外れるものは持っていかなかった。

「原画」を販売したかったため、デザフェスで売れ行きのよい100円ステッカーは持っていかず、「心臓人間ちゃん原画」がメインとなるように配置した。

 

グッズの種類・数は・・・

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そして問題の(?)「缶バッジ」であるが、今回の個展では3種類の缶バッジしか用意しなかった

わたしの手元には売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学するという本があるのだが、そこには心理学者シーナ・アイエンガーが行った「選択肢」の実験が掲載されている。今回の話に大きく関わるので引用する。

 スーパーマーケットの品揃えが売上に結びついているか、疑問に思った。そこで、スーパー店内にジャム試食コーナーを作り実験をした。
 一つの試食コーナーには24種類のジャムを、もう一つには6種類のジャムを置いた。
 結果、24種類のほうは6割の客が立ち寄り、そのうち3%が買った。つまり、来店した客全体の2%弱しか買わなかったことになる。
 6種類のほうは4割の客が立ち寄り、そのうち3割が買った。全体の12%が買ったということだ。
 数が少ない6種類のほうが、6倍も多く売れたのである。
 本やCDのように違いが明確な商品は、数が多いほうが顧客にとって価値がある。
 しかし、ジャムのように微妙な違いだと、人は7つ以上の選択肢の違いを認識できず、逆に選べない。

引用元:永井考尚, 『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』126ページ, 2019年10月29日, 株式会社PHP研究所 

“ジャムのように微妙な違いだと、人は7つ以上の選択肢の違いを認識できず”である。わたしの用意している缶バッジは、キャラクターの違いは3つだが、どれも「心臓人間ちゃん」であり、“ジャムのように微妙な違い”でしかない。そのうえ種類は全部で9つだ。

たくさんの種類から選べる機会を提供していたはずが、逆に選べなくさせていたのだ

今後も3種類ずつ販売していこうと考えている。

次に数。

今回の個展で試みたのは、3種類の缶バッジを10個ずつ並べたあと、1個、また1個と売れても、あえて追加しないこと

これは・・・探せば心理学者の実験例がある気もするが、わたし個人の心理を参考にしたものだ。

わたしは整理整頓が好きなので、商品に限らず、あらゆるものをズラーッと完璧に並べたいタイプである。だがデザフェスに参加するうち「数のある商品は、ある程度不規則に置いたほうが、お客様が手に取りやすいっぽい」と感じとった

わたし自身、完璧に並んだものが大好きだが、完璧すぎると、それが仮に「TAKE FREE」だったとしても手にとれなくなる。その空間を崩すのがしのびない。それからたくさん置かれていたりすると失礼ながら「売れてないのかな」と勘繰ってしまうことがある。

そんなことを思ってしまうわたしなので、手にとりやすいように完璧な陳列に穴を残した。またその穴が残りの商品数を示してくれるので「人気です」アピールもできる・・・という作戦を実施した。

その結果、販売したパステルカラーの缶バッジだけで見ると

  • 2019年5月 5個/2日間(2.5個/1日)
  • 2019年11月 3個/2日間(1.5個/1日)
  • 個展 19個/5日間(3.8個/1日)

となった。

もちろん、正確なデザフェス来場者数やブースや個展に足を運んでくださった人の数等々データが揃っているわけではないので、完璧な検証とは言えないが、パステルカラーは全9種類の中で動きがやや鈍かったため、個人的にはこの結果に「ああ、種類が多すぎたんだ」と納得できる。

 

グッズ販売こそ戦略的に取り組みたい

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恐らく、わたしと何回か会話を交わしたことのある人は知っていると思うが、わたしが一番お客様に購入していただきたいのは「原画」である

わたしは、体や心を壊しがちな人に「健康」を意識してほしいし、「死にたい」人の気持ちを受け入れつつ、その人が「もう少し生きてみようかな」と思えるような絵を届けたい。

だから絵を描く。作品をつくる。それを売る。得たお金で新たな作品をつくるし、わたし自身も生きる。

ただ「原画」はどうしても値が張るし、イベントや個展を楽しむ人はそれぞれ予算があるはずだ。わたしだってそうだ。

となると、グッズはわたしの作品を「覚えてもらう」ために必要不可欠なものである

だからこそ、グッズ販売は戦略的に取り組みたい。

 

た・だ・し、今回参考文献として紹介した本にも

まず「顧客がどうしても欲しい」という商品をつくること

引用元: 永井考尚, 『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』61ページ, 2019年10月29日, 株式会社PHP研究所 

とあった通り、作品やグッズを販売するための戦略にこだわる前に、技術や作品の質をあげることが第一優先である。

ということで、今日はいったん作品制作に戻ります。

では。

 

◆本日のおすすめ◆

アートの話は載っていないけれど、「売る」に大事な話が盛りだくさんなのでおすすめです。