こんにちは、齋藤吐夢です。
なかなかマニアックな本だと思う。
北海道という土地で、あらゆる食べ物をつくる農業従事者に焦点を当てたこの本。
北海道には3回ほど訪れたことがあるが、あの圧倒的な大地感で育った食べ物には、絶対に「美味しい」 と言わせる何かがあると信じて止まない。
食べることは好きですか?
まず「食べることは好きですか?」と問います。
答えが「YES」なら「絶対読んで!お腹空くから!」って言う。
「NO」であっても「一度読んでみて。食べるっていいな、って思えるから」って言う笑。
どちらにせよ読んでほしい1冊なことに違いないのだけれど、とにもかくにも食に興味がある人には外せない本だと言いたい。
肉食・菜食主義者問わず
ちなみにこの本に関しては、食に対する意識の違いは関係ないと思ってます。ベジタリアンの人も、畜産や漁業の話を読んでほしいし、その逆も然り。
食べ物は全て”生き物”であり、私個人の意見ですが、食べるためには不殺生なんて不可能だと思っています。
それぐらい何もかも命。
そしてその”何もかも命”を育む、生産者20人のお話なのです。
大地と生きる生産者
”生産者”に焦点を当てた本のため、漁業(海部門)に関しては養殖がメインになるのも面白いところ。
しかし何においても、手間ひまかけて育てる苦労はつきものです。
そして苦労した分だけ、説得力のある味わいになることが、この本を読むだけで十分分かります。
まだ口に入れずとも、食の味わい深さを知ることになる本は他にありません!
新規就農者も多数
この本の素晴らしいところには、代々農業を続けてきた人ばかりではなく、新規就農者や全く新しい形の農業に挑戦する人々の姿も描かれているところです。
しかしどの方においても、食べ物という名の”生き物”を背負い、食の責任をしっかりと認識して丁寧に育て上げる姿勢が、ひしひしと読み取れます。
おすすめの章
私が読んでいて特に気に入った章は、「ホワイトアスパラガス」と「ユリ根」です。
どちらも見た目が美しい食物。
食するうえでは、美味しさに変わりはないのだろうけれど、生産者さんは”生産者としてのプライド”から、それらの美しさを維持するための工夫を惜しみません。
販売に有利か否かではなく、あくまで”生産者としてのプライド”で努力を惜しまない姿勢にプロ根性を見せつけられた!と思いました。
生き物を育て、食す責任を持てるか
私は、自分は”農”に携わることはできないと考えています。
理由は、生き物を育てる責任を持つことができないから。
大学時代、授業の一環で日本酒をつくりましたが、”生き物を育て、食すための責任”を負えない自分に直面しました。
日本酒だけでなく、お酒は微生物という生き物の力を借りてつくる発酵食品です。彼らの面倒を見ることが、美味しいお酒づくりに直結します。
毎日学校へ来て、15分も満たない時間ではありますが、微生物とお酒のモトが入った液体を温め、かき混ぜる日々。
毎日様子を見て、変化に気づかなければならない。変化に応じなければならない。それを怠れば怠った分だけ、味わいは劣化していきます。
”農と食”に向き合うということも、これとまた同じなのでしょう。
この本に出会って、「食べ物という生き物にもっと向き合わなければ」と、再度思い知らされたのでありました。
では。
◆本日の一冊◆