こんにちは、齋藤吐夢です。
この作品(↑)を知っている人、きっと多いはず。
実写化された時、『ピンポン』の実写化と同じくらい「好き!」と言える作品だった。それだけ映画監督が原作を読み込んだんじゃないかと思う。2人とも適役だったな。
私の青春時代、ドロッドロの女学生時代を支えてくれた小説について書いていこうと思ったのだけれど、記念すべき第一回は嶽本野ばら作品にする。
嶽本野ばらとは
特徴的なペンネーム。
野ばらという愛らしい名前、それに似つかわしいのか分からない嶽本というがっしりした名字がたまりません。
京都府宇治市出身。誕生年は1745年(ロココ朝全盛期)であると自称しており、実年齢は非公開。幼少時代は読書に否定的な両親のもとで、横溝正史などを隠れて読み育った。
関西のフリーペーパー『花形文化通信』にエッセイ「それいぬ――正しい乙女になるために」を連載し熱狂的支持を受けたことがきっかけとなり、『花形文化通信』での連載をまとめたエッセイ集『それいぬ―正しい乙女になるために』(国書刊行会)が単行本化され、以降雑誌などにエッセイを発表して少女たちの支持を集める。
下妻物語の映画化後、大麻所持で捕まるという何ともパンクな人ですが、その後「タイマ」という作品を書いて出版しちゃうんだから、バイタリティがすごいと思う。
乙女のカリスマ
ロリィタ趣味を織り込んだ作品が特徴的な方なので、乙女のカリスマという異名もとてもしっくり来ます。
ロリィタ趣味だけでなく、怪奇趣味も盛り込まれるため、少々その作風が苦手・・・という方も少なくないでしょうが、たまらない人には本当にたまりません笑。
嶽本野ばら作品で、脳内ロリィタに変身したことだって何度もある。”極端すぎる少女趣味”への憧れは、嶽本野ばら作品のおかげです。
実際に、ロリィタファッションに身を包んだ経験はありませんが、あの文化が大好きになりました。
だって頭から足の先まで”甘さ”で包み込むなんて・・・かっこよすぎる!
嶽本野ばら作品の魅力
かつての私、青春を謳歌した私がなぜ嶽本野ばら作品にはまったのか、それを思い返してみると以下のような点を挙げることができました。
未だ嶽本野ばら砲に当てられたことのない方は、ぜひご覧遊ばせ。
そしてまんまとその砲弾で内臓をぶちまけられてください、ってな具合で。
ギャグなのか本気なのか
結構えげつない性描写や陰惨描写はあります。結末も一筋縄ではいかないものが多い。”下妻”は嶽本野ばら作品の中でも軽快で割とハッピーな部類、これは珍しいと思う。
ただその性描写や陰惨描写が、ギャグなのか本気なのかが分からない文章表現で描かれているのがたまらないのです。
知る人ぞ知る”くるくるしいたけ”なんかはその代表格だと思う。
初めて読んだ時は正直笑ってしまった。でも読み進めれば読み進めるほど”くるくるしいたけ”は人によっては激しい嫌悪感を抱くだろうし、全然ポップじゃない。
でも文章では”くるくるしいたけ”って超ポップな訳。
この超極端とも言えるギャップが飛び交うのが、嶽本野ばら作品の特徴なんじゃないかと思ってます。
▲くるくるしいたけ登場の表題作『エミリー』以外もすてきな作品ばかりですよ。
性の描き方
性の描き方がとっても好きです。単純なエロさとかじゃなくて、崇高な感じがするのです。
官能小説のように直球な書き口はないのだけれど、その場の様子がすんなりと頭に浮かぶというか。
だけど、心情描写を丁寧に描いているから、登場人物達の感情面がものすごく際立って目の前に現れるというか。
性の描き方というの単なる性描写だけじゃなくて、セックスとかジェンダーとか、そういう全部をひっくるめた性。その描写がたまらないのが嶽本野ばらだと思います。
唐突な痛快口調が好き
”下妻”なんかは顕著に登場しますが、基本的にはロココな感じのクラシカルな文体が特徴の野ばら先生ですが、突如痛快口調が飛び出すのがたまりません。
これまた”エミリー”ではありますが、
私はいいます、神様、あなたに…。
やっていいことと、やっちゃいけないことがあるんだよ。やり過ぎなんだよ。クソ野郎――。
こんなに柔らかい導入で開始される”クソ野郎”が今までこの世に存在していたでしょうか笑。
”下妻”で有名なのはコレかな。
われいちびっとったらホンマいてまうぞこら!
この台詞を超フリフリなお洋服に身を包んだ愛らしい女の子(ただし性格がまあまあブス)が言うと思うとときめきません笑?
したたかさを学ぶ
野ばら先生の描く登場人物は、みんなどこか痛ましいものを隠すように生きていて、結末があまり心地よくない作品もあるけれど、どこかしたたかに生きている。
可愛らしい世界感が広がっているけれど、決してゲロ甘な世界ではない。
「可愛いものが好き!」大好きなものを隠すことなく、するりと人生を生きる。
そんな”したたかさ”を学ぶにはもってこいの教科書だと思ってる。
図書館や本棚にあった本のジャケットが「なんか好みだわ」と思って手にとったら連続して嶽本野ばら作品だったので、こりゃなんか運命だわと思って書きました。
では。
◆本日の一冊◆
「実話かフィクションか?!」みたいな本も結構好き。